2巻の最後では、ちょっとした修羅場があり、大河と竜児の仲は微妙なものに。大河と竜児の間には信頼が芽生えていても、それを素直に出せるはずもなく、ことあるごとに衝突と逡巡を繰り返す。互いに気持ちを言葉でうまく伝えられず対立しても、二人は行動で相手への想いを示している。
喧嘩ムードでも、竜司は大河にコンプレックスがあると知るや尽力するし、弁当だって作る。大河と亜美の対決の賭けでも、どんと大河に賭けて協力を惜しまない。大河はこっぴどい喧嘩のあとでも、竜児を裏切らず堂々と戦いの場に登場し、自分なりの闘い方で竜児に報いる。
二人の心の根底に相手を思う気持ちがあることが、筆者の明快な説明描写や叙述ではなく、作中の人物の行動によって示唆的に描かれた巻だった。そのうえで、最後のとどめとして「竜児は私のだぁぁぁ―――っ!」という熱い咆哮で決定的に締めくくるのだから、これはもうたまらない。ニヤニヤが止まらない。
しかし、そうはいっても竜児は実乃梨が好きで、大河は北村をあきらめてはいない。言葉には言い表せないもどかしい心の変化は竜児と大河の心のうちに芽生えつつも、互いの目的達成のための共闘は続くのだ。
「竜児は私のだぁ」事件によって、クラスメイトのみならず、実乃梨と北村にまで致命的な誤解をされた大河と竜児は、はたしてそれぞれの思いを遂げることはできるのか?それとも…?だが、彼らは誤解を逆用し「ママレード・ボーイ」の銀太と亜梨実のごとく、互いの想い人を手に入れるための偽装カップル作戦からくっついてしまう…なんてことはない。かといって、実乃梨と北村、亜美にどう思われようと二人が離れることもない。
母の泰子と二人暮らしで父親がいない竜児と、父親に半ば捨てられある意味捨て扶持の生活費をもらって暮らす大河。両親がそろった家族を経験したことのない竜児が、家族が崩壊してしまった大河と疑似的に家族を形成する様は、それはそれでいいことなのだろう。また、読者にとっては二人のやり取りも微笑ましい。だが、二人の周囲を取り巻く人たちにはどう受け取られるのだろう。このことが後々の人間関係の問題へとつながっていく。
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