馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

「エジプト神イシスとオシリスの伝説について」プルタルコス (著), 柳沼 重剛 (訳) ,岩波文庫

岩波文庫2010年夏の一括重版で平積みになっていたので購入。英雄伝以外の岩波文庫でのプルタルコスの著作はこれだけ持ってなかったのでちょうど良かった。膨大なプルタルコスのエッセイから、「エジプト神オシリスとイシスの伝説について」だけが単品で文庫になっているのは、意外だがこれはこれで興味深い。プルタルコスが語る対象の広さには驚かされる。

後のデルフォイの最高神官が、エジプトの神話についてこれほどまでに熱心に語っているのは、多神教の時代のおおらかさだろうか。唯一神ではなく、多種多様な神々が混在しえた地中海世界の豊穣さ、アレクサンドロス大王の東征以来のヘレニズム文化の結実ともとらえられる。プルタルコスはギリシアの神々に擬して、エジプトの神々を語っている。こんな語り方が出来てしまうのも不思議なところだが、人が神々に託す属性や象徴といったものは案外共通しているのかもしれない。オリンポス十二神もローマの神話に取り入れられ、あるいは同一視された。

プルタルコスは他のエッセイと同様、さすがの博引傍証で嬉々として古代エジプトの神話を語る。神話を読み解き哲学的解釈を施し、ギリシア人お得意の愉快な言葉遊びも交えて、象徴や比喩としての神々を分析する。ピタゴラス学派流の、数学的解釈まで持ってくるのだから、驚きだ。よくもまあ、これだけ話を膨らますことが出来るものだなあと毎度関心する。古代という読むにも書くにも現代とは比較にならないほど不便な時代にあって、広範な知識を見につけ、大量の作品を残すとは並大抵のことではない。プルタルコスがもし現代に生きていたら、間違いなくブログやツイッターにハマッていただろうな、この人は…

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村