少女漫画の新展開として、新たな登場人物が介入するというのは常套手段だ。第1巻において、竜児と大河、北村と実乃梨の関係はひとまずの区切り。竜児と実乃梨は竜児の片思いが続き、親しくなりつつも、想いは口に出せないままだ。大河は北村に告白するも、大河にかつて告白したことがある北村に、俺たちはいい友達になれると、大河は婉曲的にフラれる。だが、この4人の関係も、物語も、まだ始まったばかりだ。
こうした状態の中で、北村の幼馴染、川嶋亜美が登場。容姿はモデルを務めるほどだが、人格は猫かぶりで性悪という、なかなかの曲者である。さっそく大河と衝突し、その後も何かにつけて陰険に嫌みを言いあう仲に。しかし、大河も亜美も自分が持っていない性質を相手の中に見出し、互いにうらやましく思っていたのだ。この巻での竜児の役回りは傍観者だ。大河と亜美の心の動きが、竜児の目線を通じて描かれる。
竜児とのかかわりの中で、亜美はその微妙な悩める心のうちを吐露する。自分が他人にどう見られているかというのは、誰であれ多少とも抱える問題だから、前半で際立っていた亜美の性格の悪さの表出が、中盤から後半の描写で同情と共感を誘うものへと移り変わっていく。性格は悪くとも、内面まで悪いわけではない。自身の性格について悩み苦しむのは誰しも同じだ。
本当は何を考えているのか今一つ分からないのが主人公二人の想い人である、北村裕作と櫛枝実乃梨である。北村に関しては、亜美の発言から伏線が張られていることがうかがい知れるけれども、櫛枝実乃梨は本当にわからない(笑)1巻のバケツプリンの時点でいやな予感はしていたが、明るくてマイペース…だけど、相当に変な奴である。相手の真意がわからない、もどかしいというのは、実際の恋愛でも同じこと。だから、主人公二人の片思いの相手が何を考えているのかどうにも分らないように描かれているのは、竜司と大河に感情移入しやすくするための、この小説の工夫なのかもしれない。
それにしても、授業中に紙を回して遠くの席の友達と筆談なんて、なんとも懐かしい。中学生のころを思い出すね。
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