馬車郎の私邸

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「ひよ恋」第2巻、雪丸もえ、集英社

雑誌というのは、連載陣に多様性があるから面白い。かつて全盛期の「ガンガン」を読んでいたころ、800ページを読むのが毎月実に楽しみだった。その連載陣は男女半々で、内容も多岐にわたっていた。圧倒的な量の中に、質の違うバラエティーに富んだ作品が群生していた。
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そんなわけで、「週刊プロレス」を読んだ後は「りぼん」を読みたくなるし、「りぼん」も種村有菜先生のダイナミックさ、豪快さを楽しんだ後は、昔ながらの王道少女漫画の繊細さやせつなさに触れたくなるのである。

最近の「りぼん」ではファンタジーやアクの強い漫画が多くなりがちで、学校を舞台とする中高生の恋愛を描いた漫画というのはほとんどなくなった。(別に悪いことではないが、懐古趣味の私にはあまり好ましくない)そうした中で、春田なな先生が連載陣のバランスを整えるのに、一役買っていた。だが、ここにきて、編集部は増刊で活躍する若手の中から適切な作家を見出した。雪丸もえ先生である。編集部のプッシュは露骨ではあっても、私は賛成だ。今「りぼん」で読みたい漫画は「ひよ恋」である。(HIGH SCOREと桜姫華伝の次に)

今時の「りぼん」の漫画で、主人公の内気に設定するのは非常に珍しい。そもそも90年代に入ってから、「りぼん」の人気漫画の主人公のほとんどは明るく活発なパーソナリティだった。内気な主人公像は、80年代の作品を思い出させる。身長差が50センチという大げさな設定もシンプルでよい。主人公のひよりは140センチであり「とらドラ!」の逢坂大河よりも低く、想い人の広瀬結心は190センチであり”帝王”高山善廣と6センチしか変わらない。わかりやすく、適度に極端な設定は、作品性としてほどよい味付けである。

可愛らしい絵柄も、眺めるだけで心を和ませるこの作品の長所だ。小さくて可愛い→名前がひより→ひよこを連想という安直さも、「可愛い」というあまりにも便利すぎる形容詞を印象として抱ければ、気にならない。なぜなら、可愛いは正義だからだ。そして、ひよこ=卵から孵る=未成熟→ひよこのような生まれたての恋という、これまた明快な比喩のタイトルも好感が持てる。

cover先日、178cmの杉浦貴が、196cmの高山善廣に見事勝利しベルトを防衛した。小さいほうを応援したくなるのは人の常で、「ひよ恋」でも同じである。読者も、主人公の想い人や友達と一緒になって、主人公を見守る。それはちょうど、ひよこのような可愛らしい生き物を愛でるのと同じだ。懊悩、苦悩、煩悩は、人間が人間である限り逃れられない。だからこそ普遍の共感がある。こんな時代の一服の清涼剤として「ひよ恋」は読んでほしい漫画である。

「ひよ恋」2巻 ためし読み
「ひよ恋」1巻 感想 
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