「名曲紹介9:要考察な歌詞を宇宙規模で伸びやかに歌い上げる!」で「フィフネルの宇宙服」を紹介した。館林見晴のキャラクターソングはこれだけでなく、名曲が多いので紹介してみよう。今日は「ラビリンス~あなたに届くまで」だ。
「ラビリンス~あなたに届くまで」は、1998年11月6日にKONAMIからリリースした、館林見晴名義の2枚目のアルバム『My Sweet Days』に収録。「イヴの夜 ~a graduation's eve~」とともに、このアルバムにしか収録されていないオリジナル曲だ。他にも様々なドラマCDやボーカルコレクションに収録された楽曲、 「ハートのスタートライン」のソロバージョン、「フィフネルの宇宙服」のリテイクバージョンが収録されている。ファン垂涎のベストアルバムと言えよう。今ほどネット通販が発達してない時代、私は新宿のTSUTAYAで見つけて感動に打ち震えたものだ。
「ラビリンス~あなたに届くまで」は、作詞:菊池志穂、作曲:M Rie、編曲:米光亮、といった陣容だ。歌詞はなんと菊池志穂さん自らが手掛けている。全体の印象はさっぱりして、すっと染み込んでくる味わいだ。上品な飲み口の白ワインのようである。メロディーとボーカルの後味も爽やかだが、その内容はまさに「愛の迷路」であり、中々に重いテーマなのが面白い。
そうした歌詞の世界にいざなうイントロは約40秒と長めだが、これだけでも聴きごたえがある。ピアノの叙情的な旋律で静かに立ち上がりつつ、ギターや弦楽器、ドラムスが加わり、雄大な盛り上がりから、再びAメロでは静かな感じに戻る…静と動が交錯する立体的な楽曲だ。サビではバックコーラスが実に良い仕事をしていて、間奏のギターソロもかっこよい
ピアノの伴奏がこの曲の主役だ。あたかも白い霧のかかった森に迷い込んだような雰囲気を醸し出している。鳥のさえずりのように聞こえる笛の音が差し込まれているのも実に心憎い。 茫漠とした雰囲気が、恋の相手の心が見えない様を示している。
特に2番A・Bメロの歌詞は切なげで、菊池志穂さんの清涼感ある歌声に実にマッチしている。
「深い森の中で 夜明けを待っていた 涙色の星を ずっと数えてた
白い雲のような すれちがう心に 手をのばしたけど まだ届かない
あなたの瞳の奥に 広がっている ラビリンス」
タイトルの「ラビリンス」という言葉は、サビ前のBメロにびしっと配置している。1番Bメロ「あなたに出逢った日から 迷いこんでる ラビリンス」は、まさにこの曲のキーコンセプトである。画像は鳥人戦隊ジェットマン 第13話「愛の迷路」の次回予告だが、「俺たちは戦士である前に人間だ!男と女だ!」との結城凱のセリフは語り草と言えよう。
一般的な恋愛の歌としても成立している本曲だが、館林見晴というキャラクターのイメージソングとしても重要な点を抑えている。「想いを届けられない」から見つめる(見張る)キャラクターだからだ。その点はサビに後半にしっかりと織り込まれている。
1番サビ後半「砂の時計のような 一秒ごとの想いを あなたに届けたい」
2番サビ後半「波に揺られるように迷い続ける 想いがあなたに届くまで」
「砂の時計」「波に揺られる」の比喩は絶妙で、菊池志穂さんの言語センスが窺える。繊細さと揺れ動く様を手早く脳裏に思い浮かべるには最適な言葉選びだ。こうした言葉を歌詞に織り上げて、ボーカルとして巧みに歌い上げており、ポテンシャルがいかんなく発揮されている。
隠しキャラでありながら、キャラクターソングではメインキャラクター並みの存在感を見せる館林見晴。そんな彼女は、このCDアルバムの中で生きている。「ラビリンス~あなたに届くまで」は、館林見晴の息遣いそのものなのだ。
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