「星空のパワー」菊池志穂（as館林見晴）：グランドフィナーレは、星空の煌めき【名曲紹介71】

今日ご紹介するのは、「星空のパワー（作詞：秋山奈津　作曲：桐岡麻季　編曲：岩崎元是）」。「ときめきメモリアル」の隠しキャラにすぎなかった館林見晴（c.v.菊池志穂）が、メインヒロインの藤崎詩織と肩を並べたドラマシリーズ「旅立ちの詩」のエンディングテーマである。ラストシーンからこの曲への入りは絶妙で、締めくくりに相応しいカタルシスと余韻がある。

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「星空のパワー」の魅力は大きく3つある。

第1に、曲調が素晴らしい。すなわち、フィナーレに相応しいシンプルで堂々とした華やかさがある。まず、冒頭、サビ直前の流れ星を思わせる電子音がキャッチーだ。しかも「星空のパワー」という、曲のモチーフを示唆しており、効果的である。Aメロは単調だが、むしろこれは心の声や独り言のつぶやきに合っている。Bメロは言葉と言葉に挟まるメロディーが高鳴る胸の高鳴りを示すかのようだ。サビはイントロ、アウトロのメロディーにも転用されており、シンプルだが味わい深い。あまり音階を上げ下げしないのがかえって言葉を伝えるのに適しているし、堂々としている印象を受ける。

第2に、等身大の恋愛ソングとして完成度が高い点である。館林見晴はコアラの髪型と一目惚れを信じる執念、成績（主人公の目を引くための努力か？）以外は、普通の女の子なのだ。何らかの個性を持つ子がメインヒロインたちなら、隠れキャラの館林見晴は一般人代表である。等身大の女の子の気持ちを歌った部分は、1番と2番の歌詞（全文は一番下に掲載）に現れている。たとえば、「星が落っこちても言えない」「勇気を出して声にできたら」は館林見晴のキャラクターの特質を示しているし、言いたくても怖くて言えない気持ちを代弁している。私たちの恋の多くは、言えなかったり声にできなかったりして、大方消えゆくものなのだから。

第3に、大逆転のカタルシスが曲に織り込まれている点だ。間奏後サビ前、ラストの2つのサビは繰り返しではなく、1番・2番と全く異なる歌詞になっている。館林見晴は、本編では隠しキャラとして最後の最後でどんでん返しをする。「星空のパワー」では、1・2番で思いを伝えられないという現在のもどかしい思いを示す。しかし、そのうえで、最後はハッピーな結末へと前向きに踏み出す勢いをもって、カタルシスを生み出すのだ。

「勇気を出して声に出したらあなたが微笑んだ星空のパワー」
「宇宙のきらめきの中勇気を持って歩き出したい」
のフレーズは、ドラマシリーズのエンディングに相応しい。

しかも、何気なく織り込まれている「切ない夜たちも心に抱えて」が渋い味を出している。星空のパワーの裏には、苦悩・苦悶のもと、星空に願いを込めていた日々があるのだ。以前告白はキレと書いたが、やはり勇気と意思が肝心。歌詞の表面では告白奏功の要因を星空のパワーにしているが、実際のところ真の要因は勇気と決断の意思である。

とはいえ、宇宙・星空といったモチーフ選定は、極めて的確でセンスが光る。最初のキャラソンが「フィフネルの宇宙服」で始まり、最後のエンディングテーマを「星空のパワー」で締めくくるのだから、粋なものだ。

・フィフネルの宇宙服
・ラビリンス～あなたに届くまで
・雨
・青になれ！
・My Sweet Days