2021年のサイバーエージェントの株価は、ウマ娘プリティーダービーの好調な出足が伝わった3月から鋭角的な切り返しと上昇を見せた。一時は時価総額1兆円を突破した。皆さん、もう慣れてきたと思うので、本日発表の21/9期第2四半期決算についてポイントをかいつまんで、わかりやすく解説していこう（過去記事：サイバーエージェントってどんな会社？講座、20/9期第1四半期及び買収記者会見、第2四半期、第3四半期、第４四半期、21/9期第1四半期）。なお、株価は21/4/1付で1：4分割されている。
21/9期上期営業利益は前年同期比63%増の329億円。21/9期営業利益予想レンジを期初の300-350億円から、575-625億円にレンジを上方修正した。ほぼ倍増であり、アナリストコンセンサスの379億円をはるかに凌駕するポジティブサプライズ決算である。これまで紹介してきたように、ABEMAの先行投資継続が継続しているため利益面に対する期待は決して高いとは言えなかった。しかし、「ウマ娘プリティーダービー」が何もかもを変えてしまった。
ゲーム事業の営業利益は1Qの11億円から一転して、2Qは232億円（前年同期比2.22倍）と凄まじい急拡大となった。2/18の「 NieR Re[in]carnation」、2/24の「ウマ娘 プリティーダービー」の大型作の出足が極めて快調であり、主力のタイトルに代わる収益柱として存在感を示している。しかも、2Qは1-3月なので、この2作は1ヶ月少々しか寄与していないはずなのが恐ろしい。2作品とも海外展開も予定されており、ヒットのロングラン化がどこまでいくのか見ものだ。2022年には「FF7」シリーズ最新作のスマートフォン向けRPG「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」を全世界配信とあって、翌年度業績の算盤勘定をはじく楽しみもある。
祖業にして主力のインターネット広告の復調も見逃せないポイントだ。2Qの営業利益は過去最高となった。企業の広告出稿の回復に加え、AI活用やデジタルトランスフォーメーション支援など広告効果最大化のためのソリューションも寄与している模様である。
メディア事業は「ABEMA」の先行投資により、営業損失は1Qが39億円、2Qが34億円と相変わらずだ。WAU（ウィークリー・アクティブ・ユーザー）は均すと1,200万規模で推移している。広告・課金収入だけでなく、周辺ビジネスの収入も拡大基調だ。PPV（ペイパービュー）、ABEMA公式通販「ABEMA Shopping」に加え、公営ギャンブルのネット投票「WINTICKET」の取扱高も拡大している。「ABEMA」との連携や独自予想データが奏功しているようだが、会社側は明言していないものの、「ウマ娘 プリティーダービー」の波及効果もあるかもしれない。そもそも論では、コロナ禍におけるデジタルなギャンブル・課金は人々の鬱憤の向け先になっているのではないか。東京都競馬も20年12月期に続いて21年12月期も過去最高の営業利益を更新する見通しだ。大井競馬場のみならず、SPAT4（競馬のインターネット投票システム）も収益源である。
「ウマ娘プリティーダービー」はゲームは未プレイで、アニメの1期は視聴済み、2期はこの原稿を書きながらまさに今鑑賞している。我が家ではウマ娘より、むしろ馬自体に関心が向き、ゴールドシップなどの様々な動画をYoutubeで検索して見ている。私がリスペクトする声優・松岡禎丞氏と同様だ。ゲーム事業が莫大な収益を稼いでいる時間がどれほど続くはわからないが、サイバーエージェントはABEMAのシェア拡大やオリジナルコンテンツの充実、新規事業への投資など、将来への種蒔きを強化する必要がある。
親会社の懐事情が潤沢になっていることは、プロレスリング・ノアにとっても喜ばしい。このほど2年契約を結んだ武藤敬司のギャラなど可愛いものだろう。将棋はというと、第4回ABEMAトーナメントが始まっており、チーム結成に際し居合斬りやバンジージャンプで結束力を高める将棋棋士たちの様子を眺めるのは愉快だ。
さて、往年の名競走馬たちを題材にしたキャラクターであるウマ娘は、それぞれに元となる現実という物語における活躍や悲哀などがあるため、誰でも主人公にすることができる。ゲームの荒稼ぎを見れば、アニメは2期以降、3期、4期、5期と作れるかもしれない。地上波でなくとも、ABEMAプレミアムで独占配信してもいい。ABEMAプレミアムは月々980円にすぎず、ウマ娘への課金や競馬に興じるひとにとってははした金だろう。サイバーエージェントはあらゆるゲーム会社、ネットフリックスなど動画配信サービス企業と戦い続けなくてはならない。ウマ娘をどの程度ロングランのヒットにできるかが、サイバーエージェントの将来を左右する。
（ABEMAプレミアムは2週間無料、解約も好きな時に可能）
