馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

【観戦記】プロレスリング・ノア NOAH the BEST 2019~美学のある闘い19/11/2両国国技館

かつてNOAHといえば、シリーズ最終戦といえば日本武道館。2009年から生観戦を始めた自分にとってはそれは当初当たり前だった。その後の夏や冬のビッグマッチは有明コロシアムが定番になったが、その有明コロシアムも2015年には撤退。その空いたスケジュールにプチミレディ(著名声優の竹達彩奈・悠木碧のユニット) の2ndLIVEが入ったことに衝撃を受けつつもライブを見に行った時の若干やけっぱちな気分を今も覚えている(誤解なきように言うと、悠木碧さんというと次見るアニメの指針にしているくらいだ。だが、それでも複雑な気分だったのだ)。EIWdqSsXsAADo-I

しかし、NOAHは後楽園ホールを平日興行は超満員でないにせよ着実に採算ライン以上に埋めてきているように見える。そうしたなかで、拳王選手が言った「日本武道館に連れて行ってやる」宣言は、方舟の航海の進路を決定づけた大きな言葉としてレスラー、スタッフ、ファンを勇気づけたに違いない。

去年の丸藤選手20周年興行以来の両国国技館大会。これは単発のお祭りだったが、今年は年間総決算としての両国国技館大会だった。 観衆:5523人(満員)と上場の客入りになった。一つの大きな成果と言えよう。この熱を次に繋げる事が重要だ。

ビッグマッチといえども、普段後楽園に見に行く人たちが、パートナーや友人を誘って見に行けば、実のところそれだけでも数千人クラスの大きなハコも埋まるのでは?という気もする。そこに新規・ご無沙汰な方々が加われば尚更で、1万人以上を収容できる会場を埋めるのもそうおかしなことでもない。とはいえ、2020年は五輪開催もあり、会場確保が難しいため、コア層の着実な地固めを引き続き続けるべきだろう。

【第1試合】ヨネ、ストーム、×熊野vsKAZMA SAKAMOTO、○イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr. 、岡田
6分08秒 ムーンサルトプレス → 片エビ固め

第1試合として丁度いい塩梅の試合。イホ・デ・ドクトル・ワグナーJrはみちのくドライバーから、かつての潮崎を思わせるような大会場に映えるムーンサルト・プレスを披露してくれた。

【第2試合】
齋藤彰俊、×井上雅央vs本田多聞、○百田光雄
10分10秒 サムソンクラッチ

久々の多聞さんは、膝の具合は良くはなさそうだが、それでも肩固めや回転地獄五輪など往年の関節技が冴え、マサオは動くだけで面白いのはズルいし、彰俊さんもいつもどおりだ。驚くべきは百田さんで、誤爆の間を捉えてちゃっかり丸め込み。いやはや恐れ入った。NOAHは若手がすくすく育ってきているので、佐野さんや志賀さんなど、第1試合や第2試合でまた見てみたい。

【第3試合】
○桜庭和志、大原はじめ、NOASAWA論外vs西村修、×Hi69、宮脇純太
8分20秒 足4の字固め

カード発表のとき、やや食い合わせが心配だったが、桜庭はIQレスラー、西村修も職人、杞憂だった。ジュニアのスピード・連携にグラウンドが融合した不思議な試合で、桜庭と西村が違和感なく溶け込んでいた。Hi69、宮脇、大原、NOSAWAも上手い。桜庭は、西村のダイビングニー、Hi69のストゥーカ重爆を立て続けに食らうも、Hi69の不用意なスキを捉えて、ヒールホードに捕獲。脱出しようとした動きを上手く利用し、足4の字固めに組み替えて鮮やかな勝利。

【第4試合】
田中稔、望月成晃 、×スペル・クレイジーvs小峠篤司、クリス・リッジウェイ、○エディ・エドワーズ
11分30秒 ボストン・ニー・パーティ → 片エビ固め

贅沢な6人タッグ。多種多様な蹴りなど打撃、投げ技、飛び技が乱れ飛ぶ濃密な一戦で、見応え充分。エドワーズが豪快なタイガードライバーから、ランニング・ニーでスペル・クレイジーを下した。この6人のなかで、どの組み合わせがこれから実現しても面白くなりそうだ。さしあたり、小峠が原田から奪取したIPWのベルトの挑戦者が誰になるか気になるところ。

【第5試合】
×谷口周平vs○藤田和之
7分57秒 レフェリーストップ ※スリーパーホールド

荘厳なアレンジバージョンの「イノキボンバイエ」が響くなか、試合静かな睨み合いで緊張感ある立ち上がり。ロックアップから攻防が始まり、谷口が先にテイクダウンを奪い、張り手、サッカーボールキック、更には追撃でエプロンサイドでのバックドロップ!谷口が鉄柱、ストンピング、鉄柱、と場外戦でも畳み掛ける。

防戦一方だった藤田が、頭突き、ニーリフト!スリーパー。しかし、大流血の谷口は返し、ラリアットやエルボーの打ち合い制して、ワイバーンのごとくコーナーポストから飛翔し、ボディープレス2連発!藤田も意地で返して、ランドスライドっぽい大技、豪快なパワーボム、張り手の連発から、頭部へのキックを徹底的に連発!スリーパーホールドでレフェリーストップ!一気呵成の攻めが決まった。

しっかり互いにスウィングして、ゴツい一戦だった。谷口は間合いのある試合よりも、一直線にぶつかり合う試合のほうが生き生きと動ける印象がある。藤田は真壁選手の自伝のなかでしか人となりを知らないが、この試合は非常に噛み合っていたように思える。

【第6試合】
小川良成、×鈴木鼓太郎vs原田大輔、○タダスケ
10分58秒 アウトキャスト → 片エビ固め
※原田大輔&タダスケ組が第37代王者となる

円熟した一戦。この日は小川さんが特に元気だった印象。ジュニアの最前線の戦いにいつもいてくれるのは嬉しい限り。小川、鼓太郎組に隙はないが、この日は原田とタダスケのタッグワークが勝った。鼓太郎の大技構成が来る前に、ラッシュを勝負どころで仕掛け、豪快なアウトキャストをがっちり決めて、タダスケが悲願の戴冠!難敵・鼓太郎、小川さんに勝利!鮮やかでした。

【第7試合】
○HAYATA vs ×YO-HEY
14分11秒 ヘデック→片エビ固め
※HAYATA選手が2度目の防衛に成功

リマッチでのタイトル2連戦というハードルの高い道を歩んだ二人。しかし、攻防は更に洗練されたものとなり、HAYATAはロープ挟んでのへデック、YO-HEYはエプロンから断崖のヘッドシザースホイップなど仰天の序盤から、ヨーヘイがへデックを返し、ハヤタの大技を返し続けるも2度目のへデックを食らっては万事休す。驚異の粘りでした。

【第8試合】
○中嶋勝彦、潮崎豪vs×マサ北宮、稲村愛輝

早々のヴァーティカル・スパイクで北宮がKOされ、稲村が長期のローンバトル。しかし、北宮が復帰してからはパワー連携で圧倒。稲村はキャリア2年に満たないとは思えないほどの奮闘ぶりだ。ダブルインパクトを狙うも、北宮が気負いすぎたか、ドラゴン・リングイン状態に。マサ斉藤に加え、期せずして藤波辰爾の要素まで加わったが、気を取り直して追撃を浴びせ、ダブルインパクト再び。技は正確・的確であることに越したことはないが、失敗や不発があるのもリアリティだ。疲労困憊のなかで戦っているのだから。

北宮が豪快な攻めで中嶋を追い込むも、サイトースープレックスは潮崎がカット、2発目は体を返されて、戦慄のハイキックからヴァーティカル・スパイクで北宮轟沈。実に良い、肉弾ぶつかりあうヘビーのタッグタイトルマッチになった。

【第9試合】
丸藤正道vsグレート・ムタ
12分05秒 閃光妖術→体固め

ムタ随一のファンでもある丸藤が魔界に踏み込んだ一戦。美しいボディペイントで入場した。対するムタは忍者を思わせるようなオリエンタルな風体。ムタは毒霧を空打ちした後、基本的な攻防戦から、椅子を丸藤が持った状態などで、計2発の毒霧を丸藤に命中させる。レンチのような凶器の攻撃に加え、カメラマンのビデオカメラを奪い丸藤を攻撃するも、避けられて鉄柱にぶつけてしまい、しょんぼりしてしまうムタの図など貴重なシーンも。

次第に丸藤がペースを奪い虎王連発、消化器を噴射の混沌絵図?。2発目不知火を食らってしまったムタの毒霧を丸藤が阻止と思いきや、往年のザ・シークを思わせる突然の火炎攻撃!続くシャイニングウィザード3連弾でムタが勝利!令和の御世に現出した驚愕の一戦だった…!

丸藤選手は最近の戦績こそ振るわないが、ノアの外交官と広告塔として役割を全うしているように見える。今後もレスラーとしての欲を夢のマッチメイクに昇華していってもらいたい。

【第10試合】
○杉浦貴vs×マイケル・エルガン
21分35秒 オリンピック予選スラム→体固め
※杉浦貴が初代王者となる

インタビューを読むと、"ノア史上最強のファン"と目されるマイケル・エルガン。新設のナショナル王座のベルトは長州力から手渡されるということで、パワーホールが国技館に響く。解説には小橋建太、さらに経営陣入りした田村潔司がリングサイドで見つめるなか、NOAHの闘志の化身と、最高のノアファンによる極上のタイトルマッチが、ベルトに実態、中身を付与した。

序盤から激しい力比べと打撃・肉弾戦が展開。この日のハイライトは、杉浦がよくやるコーナーに追い詰めてのエルボー。なんとここでエルガンはたち上がりやり返す!しかし、杉浦も同様に立ち上がるという驚愕の攻防。さらには、ターンバックルジャーマンの応酬まで飛び出す。

エルガンは随所で延髄斬りまで繰り出すという一面も。凄まじいエルボーとジャーマンの連発応酬、乱れ飛ぶパワーボムなど筆舌に尽くしがたい激闘となった。最終盤ではあわやバーニングハンマーを2度切り返してみせ、フロントネックロックやアンクルホールドの攻防、互いに打撃の雨のなか、杉浦が高速ジャーマンから、五輪予選スラム2連弾でエルガンから勝利!驚愕の上を行く驚愕だった。絵右岸、また見たいね!

【第11試合】
○清宮海斗vs×拳王
31分10秒 タイガースープレックスホールド
※清宮海斗が6度目の防衛に成功

最後の前哨戦でタイガースープレックス中の清宮にプロフェッショナル・フットスタンプを投下、担架送りというヒヤリとした、物議を醸した一幕はあったものの、互いにプロのレスラーとして国技館で激突。拳王の再出発と清宮の躍進の兆しは杉浦選手のもとに集った時にあったが、それそれが大舞台で杉浦選手を乗り越えてぶつかり合うこの上ない晴れ舞台になった。

拳王対清宮は静かな立ち上がりから一転して、開始5分で拳王が断崖式DDTから、場内ではなんと後頭部へのダイビングフットスタンプ!さらに拳王はネックロックからリバースの羽折り固め。場外では、SUWAさんのツイッターブロックをリバース型にして、鉄柵に清宮の頭を打ち付ける!さらにフェースロックで追い打ちし、プロとして非常な攻めに徹する。

若き王者は、様々な角度からのエルボーで猛然と反撃。スマッシュ式のみならず、打ち方がとても幅広くなった。拳王の動きを利用して、ターンバックルに顔面を打ちつけ、さらにひねりを加えたノータッチのトペコンヒーロ。華やかさを併せ持った威力抜群の攻撃だ。しかし、拳王もドラゴンスリーパー、ラーメン屋の親父のステップキック!張り手連発!しかし、清宮はカウンターのドロップキックからジャーマンを繰り出し、ストレッチプラム式フェースロックに繋いだ。

しかし、拳王の蹴りがあらゆる角度から清宮を襲い、ムーンサルトダブルニードロップ、コーナーからの大技は清宮が迎撃のドロップキックで撃墜、ブレーンバスタースラム!しかし、拳王は戦慄のハイキックから、エプロンサイドで高速のドラゴンスープレックス!厳しい攻めだ。

後頭部と正調でプロのダイビングフットスタンプが2連発で飛来!もはやこれまでと思われたが、しかし清宮はこれをキックアウト!コーナーの攻防で頭突き連発から、雪崩式リバースDDT(かけるのに手間取るのでたくさん攻撃をしておく必要がある)!その後はエルボーと蹴りの応酬。ローリング式のバックエルボーからストレッチプラム式フェースロックに捉えるが、拳王はコールに応えて粘り、決め手にならず。

拳王はさらにドラゴンスープレックスを繰り出すも、対する清宮は得意のタイガースープレックス。張り手の打ち合いから、拳王は再びハイキック。清宮はドロップキック連発から、それぞれが竜虎のスープレックスを狙い合うも、小峠風にリバースキルスイッチの形で清宮が拳王をマットに突き刺すと、続くタイガースープレックスも拳王は執念で返す!更なる3発目のタイガースープレックスで清宮が勝利!これまた見事に練り上げられた一戦だった!

今大会の総評は「ナイス爆裂!120点」だ。課題はないわけではないが、リング上の試合は期待を上回るものだった。この熱を次に繋げる仕掛けに注目したい。両国大会が包含するもの…それは全日本プロレス以来の純プロレス、猪木イズム、長州-健介のライン、ルチャリブレ、アメリカンスタイル、無我、PRIDE、U、大阪、みちのく、K-DOJO、etc…こりゃ、お腹いっぱいになるわけだ。90年代、00年代の懐かしいフレーバーもありつつも、今と未来の戦いが芳醇に詰め込まれていた。ノアの方舟といえば、ノアが家族とあらゆる動物のつがいを方舟に載せたという話だったかと思うが、プロレスにおいてもそうだったようだ。
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