馬車郎の私邸

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タリフマン・トランプ大統領の迷言・暴言で振り返る2018年

今年も当ブログをお読みくださり、ありがとうございました。相場も荒れ模様でしたが、やはりこの人・ドナルド・トランプ大統領に振り回される1年だったかと思うので、愉快な迷言・暴言で2018年を振り返っていきましょう。
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まずは、ちょっとおさらいから。昨年書いたとおり、2017年の大統領初年度は北朝鮮とのやりとりが毎日お騒がせする展開。8/8の「北朝鮮が米国をこれ以上脅かせば、世界がこれまで目にしたことのないような炎と怒りに直面することになる」といういわゆる"炎と怒り"発言の印象は鮮烈だった。

これに対して、「グアム沖にICBM4発」「日本列島ごときは一瞬で焦土化」と北朝鮮・金正恩委員長は反応。9月には、トランプ大統領が国連演説で"ロケットマン"、"完全破壊"発言でこれまた騒然。「北朝鮮は邪悪な国家だ。このような犯罪者集団が、核兵器とミサイルで武装する国家は地球上に存続し得ない。ロケットマン(金正恩委員長)は自殺的行為と国会体制の崩壊に突き進んでいる。米国が祖国や同盟諸国を防衛するしかない状況になれば、我々は北朝鮮を完全に破壊する」

さすがに金正恩委員長も"強い"言葉で応戦。「我が国の絶滅を喚いた米国を必ず火で制御する」「史上最高の超強硬対応措置の断行を"慎重に"検討する」と発言し、この発言の真意について、記者団に李容浩(リ・ヨンホ)外相は太平洋上での水爆実験を、かつてない規模で実施する可能性を示唆した。

余波は続き、2018年に入るとさっそくトランプ発言からスタート。「北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)はたった今、『核のボタンはいつでも私の机の上にある』と言った」とトランプ氏は2日にツイート。「あの疲れ果てた食糧難の政権にいる誰かが彼に伝えてくれないか。私も核のボタンを持っていると。彼のよりずっと大きく、ずっと強力であり、しかも私のボタンは機能している!」。この段階でまさか米朝首脳会談が実現するとは、世界の誰が予想しただろうか。

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17年12月の好況下での大規模減税成立(レパトリ減税も)に相場が酔うなか、1月に世界各国のPMI、米ISM製造業・非製造業景況感指数が同時に強含み、2月6日の発表の1月米雇用統計で賃金上昇が加速すると、米長期金利上昇に弾みがついた。さらに、VIX(S&P500種指数の予想変動率、別名:恐怖指数)の急騰でリスク回避の売り買いを巻き込み、株式市場は下落が加速した。

ここでなんと、トランプ大統領は株売りは間違いと呟いた。「『昔』なら、良いニュースが報じられれば株式相場は上昇した。現在は、良いニュースが報じられると、株式相場が下落する」とツイート。「大きな間違いだ、それに経済に関して良い(素晴らしい)ニュースが山ほどある!」と指摘した。たしかに、下記のNYダウのチャートを見ると夏~秋にかけてS&P500やナスダックとともに最高値を示現したので、売り抜けられた人にとっては良いアドバイス(?)だったかもしれない。
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1/23に大型家庭用洗濯機と太陽光発電製品の輸入に対して緊急輸入制限措置(セーフガード措置)を発動した後、焦点は鉄鋼・アルミへの関税措置発動へ。3月には、「貿易戦争はいいことだ。そして勝つのは簡単だ」とツイートして物議。

中国とは関税合戦がエスカレート、欧州、日本も当然ながら影響を受けた。3月23日に中国を含む多くの国を対象に、通商拡大法232条に基づき鉄鋼およびアルミニウム製品に追加関税措置を発動し、これに対する報復として中国商務部は、中国へ輸出される米国製品128品目に約30億ドルの追加関税をかける計画を発表した。

7月6日には米国が中国の知的財産権侵害への対抗措置という名目で818品目の輸入品に340億ドル規模の制裁関税を発動し、中国も同規模の報復関税を発動。さらに8月23日には第2弾160億ドル、9月24日には第3弾の相互関税引き上げ(米国2000億ドル、中国600億ドルへとエスカレート。だが、中国の米国からの輸入額は過年度で約1300億ドル、米国は逆に5000億ドル以上というわけで、中国はこのチキンレースについていけなくなってしまった。

また、GDP発表前に良い内容を示唆するなどで市場を困惑させる一方、意に沿わない個別企業への口撃も実施。6月には「よりによってハーレーダビッドソンが最初に白旗を揚げたのには驚いた。彼らのために懸命に戦ったし、最終的にはEU内での販売に関税は払わなくて良くなった。EUは貿易で我々に大きな損害を与えている。1510億ドルもだ。税はハーレーの単なる言い訳だ。辛抱しろ!」、さらに7月には「ファイザーなどは理由もなく、医薬品を値上げした。恥を知るべきだ」と述べ、ファイザーを屈服させた。

原油先物市場にもツイートの矛先は向けられた。10/10には記者団に「私はより多くのエネルギーがほしい。74ドルは好きでないからだ」など、度々ツイッターで原油価格に言及。OPEC総会を控え、11/21に「原油価格はだんだん下がってきている。素晴らしい!米国国民と世界の人のための大きな減税のようだ。54ドルまで下がり好ましい! 以前は82ドルだった。サウジアラビアに感謝する。しかし、もっと低くしよう!」。その後、原油価格は12月に40ドル台前半まで下落した

再び10月初頭に米長期金利急伸がトリガーとなり、相場の牽引役だったハイテク・IT株がいよいよ総崩れになった。世界の株式市場に加えて、債券やコモディティも含め世界のリスクアセットの売り圧力が強まった。FRBが金融政策の正常化に向けて、最盛期に4.5兆ドルまで拡大したバランスシートの縮小と利上げに粛々と動くなか、秋から冬にかけてはトランプ大統領は相場の下落をFRBのパウエル議長になすりつけようとする動きが目立ち始めた。

11月の中間選挙の前にアピールもあってか、10月にはパウエル議長について「利上げを楽しんでいるようだ」と述べるなどして牽制した。WSJのインタビューでは「私にとってFRBは最大のリスクだ。金利はあまりに速く引き上げられていると思う」など度々不満を露わにした。なお、トランプ氏はこう言うと机の上の赤いボタンを押し、冷えたコーラを持ってくるよう求めた。

株式相場では、第3四半期(7-9月)の業績は堅調ながらも、第4四半期(10-12月)の業績予想が市場の期待に届かない、あるいは弱気な予想すら目立ち始めた。すでに発動された関税措置はコスト増として企業収益を蝕み始め、不透明感は企業の設備投資計画の延伸や休止へと結びついている。日中欧の景況感減速に加え、トランプ大統領の目論見通り一強になった米国経済でさえ鈍化の兆しを見せ、減税効果の減衰の見通しも含め、先行きの懸念が市場を覆っている。

12月初頭の米中首脳会談で一服・先送りとはなったものの、トランプ大統領のツイートが再び炸裂し、逆イールド接近という、経済に不穏な兆候に神経質になっていた市場に冷水を浴びせた。いわゆる"タリフマン(関税の男)"発言である。

「中国は米農産物をより迅速に購入し始めることになっている。習主席と私はディールの成立を望んでおり、おそらくそうなるだろう。だがもし忘れているようなことがあれば......私はタリフマン(関税の男)だ

一連の米中貿易摩擦は知的財産や国防上の問題と絡んでいて後戻りができない問題だと、ファーウェイ排除の動き最高財務責任者逮捕といった事案も通じて、市場は再認識した。その意味で10/4のペンス米副大統領の演説は、象徴的なものだったかもしれない。

相場の投げ売り・換金売りは結果的にクリスマスまでとどまることを知らなかった。2019年の利上げ見通しをめぐり、17-18日のFOMCが注目されるなか、トランプ大統領は公然とパウエル議長への口撃を強めた。「ドルは非常に強く、物価上昇率は実質的に横ばいで、外の世界は爆発している。パリは燃え、中国ははるか下方にある。FRBが再度の利上げを検討すること自体が信じられない」と、相変わらずのトランプ節。

著名投資家ドラッケンミラー氏と元FRB理事ケビン・ウォーシュ氏が利上げと流動性縮小に二正面作戦はやめるべきだとWSJ紙に寄稿すると、WSJ紙も呼応し社説で経済・金融面のシグナルに従い利上げを停止すべきと論を展開した。これに乗じて、トランプ大統領はパウエル議長に社説を読めという異例の指令。「FRBの人々がまた失策を犯す前に、きょうのウォール・ストリート・ジャーナルの社説を読むよう期待したい」とまたも公然とFRBを牽制。「既に流動的でなくなっている市場を、これ以上非流動的にするな」とした上で「市場を感じ、無意味な数字を見て判断することをやめよ。幸運を祈る!」と述べた。一理はあるのだが、かえってFRBの態度を限定的にさせてしまったかもしれない。

FRBは結局、12月はここ数年で通算9度目の利上げを既定路線通りに決め2019年の利上げ予想は前回の3回から2回に引き下げた。これは経済指標にのっとり判断した妥当なものと思えるが、狼狽するマーケットにとっては安心感を醸成するものとは映らなかったようだ。クリスマス休暇前や年度末を控えた持ち高整理、年末恒例のタックスロス・セリングに加え、取引全体の85%が、機械やコンピューターモデルもしくは定型的なパッシブ投資にコントロールされている今、そうしたトレードも下落を加速した。
シリアとアフガニスタンでの駐留米軍の大幅削減とジム・マティス米国防長官の辞任という突然のニュース政府機関の閉鎖もまた動揺を誘った。トランプ大統領は再びFRBをこきおろした。「FRBは、力は強いがタッチ(アプローチやパターの感覚)がないためスコアが上がらないゴルファーのようだ。こういう人間はパットなどできない!」とゴルフになぞらえた半ドンの24日歴史上最悪のクリスマス・イヴの取引になり、米国の主要3株式指数は2018年高値からそれぞれ2割前後の下落となった。

ここでトランプ大統領は株式市場に直接的に言及した。「米企業は記録的とも言える数字をたたき出している。従って私は今がとてつもない買いの好機だと思う。まさに素晴らしい買いの好機だ」。機敏な投資家は、確かにここで主要3指数の先物を買って、デッド・キャット・バウンスをすかさず取りに行くのは妥当だったかもしれない。すぐさま手仕舞うのならば、の話だが。クリスマス明けは急反騰、NYダウは1000ドルを超える史上最大の上昇幅(上昇"率"ではない)になった。

ここまで、トランプ大統領の様々な発言を振り返ってきたが、少なくとも2019年・2020年もこの大統領にしてエンターテイナーと付き合わなければならない。場合によっては、その先の4年間もだ。以前書いたようにこれは"見もの"だし、上院:共和党、下院・民主党と議会がねじれるなか、次の大統領選挙に向け、トランプ大統領の発言、ツイートはその交渉術の一端としてますますキレを増してくるかもしれないのだから。

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