馬車郎の私邸

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「ザ・スニーカー」6月号「涼宮ハルヒの驚愕」先行掲載70枚 感想

9巻「涼宮ハルヒの分裂」の最後は、危機に瀕した(と思われる)長門のもとへ、SOS団が向かうところであった。先行掲載はその続きから始まる。長門を看病しようとするハルヒの料理の腕についてふと思いをめぐらすキョンには、微笑を禁じ得ない。そして席をはずしたキョンは、長門がかつてない状況にあることを知る。これまでにない事態のようだ。

佐々木の取り巻きは、未来人の藤原、機関の構成員の橘、そして「天蓋領域」の宇宙人(ヒューマノイド・インターフェイス)である周防九曜だったが、中でも最も得体のしれない周防九曜と、再びキョンは遭遇する。果てしなく意味不明な言動をとる周防九曜と、困惑するキョンの間に介入したのは、なんと蘇った朝倉涼子だった。さらには、喜緑江美里までもが現れ、宇宙人3人が入り乱れる混沌とした局面を迎えた。ひとまずの収拾をみたあと、この状況に際して、キョンは佐々木と連絡を取る。

「キョン、君はずいぶんご立腹のようだが、今日明日中で頭を冷静にしておいたほうがいい。まさに今のキミの反応が彼らの計画の一環かもしれないからさ。いや、僕は知らないよ。でも僕が首謀者なら、そうするだろうと考えた結果さ。うん、では明日。おやすみ、親友。」

かつての親友である佐々木の意味ありげなメールの返信。
「ザ・スニーカー」6月号「涼宮ハルヒの驚愕」先行掲載はこうして、ひとまず幕を下ろした。原稿用紙70枚というのは、3段組みで18ページ程度。読んでみればたいした長さではないけれども、このわずかなページでの展開で、主人公のキョンとしては、なんとも奇妙な状況に陥ったものだ。

3年前の4月にシリーズ9巻目の「分裂」が発売し、10巻の「驚愕」は発売が延々と延期になっていた。9巻目は、新たな登場人物とともに話がより一層の難解さを帯びてきた巻だ。しかも表題の「分裂」の通り、途中から時系列が分裂し二通りの物語が並列に進む。きわめて複雑さを増した展開をどのように形にしていくかは、作者にとってもたいへんな難事であろう。ハルヒシリーズはSFものであるため、設定やプロットに整合性をもたせなければ作品世界が崩壊する。遅筆のためというよりも、話の展開をめぐる悩ましさが10巻刊行の大きな壁になるのも致し方ないかのように思える。

コメントに曰く、原稿用紙370枚は書き終えているが完成度は80%だという。結末を書き終えながらも、やはりそこへ持っていく話の展開に苦労しているようだ。不甲斐ないと平謝りしつつも、年内完成に意欲的な決意を語る谷川先生のコメントに、10巻への期待の念が蘇ってきた。
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