馬車郎の私邸

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消費増税の裏で行われてきた見えざる増税のことも考えよう

本日から消費税率は8%から10%へと上がる。だが、我々の可処分所得を圧迫している、より大きな要因が裏で見落とされているように思われる。それは医療・介護・年金を合わせた社会保険料だ。特にこれは現役世代にとっては厳しい負担なのだ。社会保険料率の上昇のために、額面の給料は同じだったとしても、10・20・30年前と比べると、手取りは全く違うのだから。

健康保険組合連合会(健保連)は9月9日、大企業の会社員などが入る健康保険組合で2022年度にも医療・介護・年金を合わせた社会保険料率が初めて30%(労使合計)を超えるとの推計を発表した。すなわち、無題33
22年度に全国約1400の健康保険組合の健康保険料率は平均で9.8%と19年度比で0.6ポイント上昇へ。介護保険料率は2.0%で同0.4ポイントの上昇となる見込み。この2つ加え、段階的な引き上げが17年9月に終了した厚生年金の保険料率18.3%を足すと、料率は30.1%になるという見通しだ。

会社員が払う健康保険料には、65歳以上の高齢者にかかる医療費を賄うための拠出金が含まれる。18年度の拠出金は3兆4537億円になり、健康保険組合に加入している会社員や家族への給付費約4兆円にも比肩しうる規模感だ。10年度はこの拠出金が約2兆6千億円に対し、給付費は約3兆4千億円だった。健保連は22年度に拠出金と給付がほぼ同水準となり、25年度までに拠出金が給付費を超えると予測する。天引きであるがゆえに意識されにくいが、実はこうしたことが行われているのだ。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始めるのを見据え、後期高齢者の患者負担を原則1割から2割に引き上げることが検討されている。2割負担を導入すれば1年あたり、健保連の拠出金で約200億円、公費で約800億円の抑制効果があるとの試算だ。しかし、これは生ぬるいと感じる。むしろ、すべて3割負担で統一したほうがわかりやすくて利用者にとってもいいのではないか?現行の制度は、一般・低所得者と現役並所得者に分かれるが、こうした点もややこしい。

消費税においても、一律10%ならば無用な混乱も防げて計算も楽と割り切ることもできようが、ややこしい軽減税率の仕組みなども付随してしまい、かえって理解しにくい面もある。どちらにしてもシンプルな設計を模索したほうがいいのかもしれない。下手な配慮してますアピールよりは、負担はかけるがこれでよろしく頼んますとケツをまくるほうが潔い。
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安倍首相は、医療・介護や年金改革、子育て支援策を検討する全世代型社会保障検討会議の初会合を9月に開いていたのだが、様々なニュース報道であまり取り上げられていた印象はない。むしろ新人環境相の尺のほうが長かっただろう。 社会保障改革は全世代型会議として19年中に中間報告を目指す形で進むわけだが、マスメディアもネットメディアももっと注目すべき論点だ。

日経新聞は社説で「高齢者への行きすぎた配慮は見直しを」と言うが、まさに今がそのタイミングだ。団塊世代が全員75歳以上になる前にやるべきで、そうなってからでは遅い。とはいえ、かつて老人主権と揶揄したが、現役世代もまた未来の老人である。既に人口の28%が65歳以上になっている以上、現在の最大多数の最大幸福ではなく、未来の最大多数の最大幸福を目指して、制度を再設計するべきだ。医療・介護・年金の社会保険料に関する話題は過小評価されているように見える。
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