馬車郎の私邸

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「老後2000万円」騒動で考える各人の反省と取るべき行動:②メディアと個人編

「老後2000万円」騒動で考える各人の反省と取るべき行動:①安倍首相・麻生財務大臣、与野党、金融庁編の続きは、メディアと個人編だ。メディアはテレビ、新聞、ネット、個人は高齢者世代、現役世代に分けてそれぞれ書きたく思う。
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メディアと言っても多種多様だがまずテレビから。テレビというともちろん幅広い視聴者層にリーチを持っているが、人口のボリュームゾーンであり、年金の受け取り手である高齢者層が主たる視聴者である。老後「2000万円不足」問題で平均値が独り歩き させてしまった責任の一端を担ってしまった。金融庁が老後の金融資産に2000万円必要との試算を示した報告書は、国民の不安をあおったとして事実上の撤回に追い込まれた…というのがこの度の事の経緯だ。家計調査にある無職の高齢者夫婦世帯の平均月間収支差である5.5万円を30年間かけるという単純計算であることや、所得や貯蓄は個人間の差が大きく、収支の平均値だけでは実態をとらえられないということをしっかり示すべきであった。だが、結果的に乱暴な試算が独り歩きすることに加担してしまったようだ。

ここでテレビが留意すべきは、重要な論点は丁寧に扱うことだ。しかもそれは、直接的にメインの視聴者層の懐に関わる話だ。何を前提にしており、どういう場合のケースで、それはどの程度妥当なものなのか、懇切丁寧に説明すべきだった。だが、100年安心は嘘だったなどという、あまりにも稚拙な年金への理解ないし意図的な誤解に基づく野党の論点すり替えの政局に加担してしまったように見える。払い損やもらい得といった浅薄な認識を喧伝しすぎない必要もあっただろう。世代間の対立を煽るのではなく、世代間の融和を図る必要がある問題だ。

現状の年金はいわば仕送り方式であり、存続性が重要なのである。したがって、世代間の対立を煽るのではなく、世代間の融和と相互理解を促す必要があろう。現役世代は未来の高齢者世代であり、高齢者世代はかわいい孫の世代の年金制度の継続性に目を向けて貰うのが肝要だ。この点を配慮した報道が望まれる。

新聞は、活字と図解のメディアとして、包括的で幅広い議論の下地になるような総力特集記事を組むべきだったろう。この点では、日経新聞は一般紙よりは丁寧だったかもしれないが、魅力的で視野の広い論考を述べた記事はあまりなかったように思われる。現役世代のビジネスパーソンが購読していることから、将来に向けた関心の高まりを捉えて、議論を深めるための素材を提供する良い機会だったはずだ。しかし、実際には個別記事自体のクオリティの良さや冷静な分析は見られたものの、複数の制度や時間軸にまたがるような意欲的な視角を持った論説記事については、見受けられなかった。したがって、この点について、編集部は現役世代や政治家に向けた論説を総力特集すべきであろう。

ネットメディアは、アゴラやブロゴス、東洋経済やダイヤモンドなどのオンライン版といったプラットフォームで、様々な論者が比較的冷静な意見な提示をする記事が多数投稿されていた。この点は非常にポジティブだった。しかし、Twitterにおいてはやや脊髄反射的な短いツイートが多い印象を受けた。また、スマートニュースやGunosyといったニュースまとめのアプリケーションは、底の浅い論評やさっぱりしたニュース記事ばかりキュレーションしており、簡単・手軽なニュースメディアの限界性がやや示されたようにも見えた。

結局のところ、どの程度の濃さの情報を求めるかは、ユーザー次第であり、関心と切実さによりけりといったところか。とはいえ、ポータルサイト上のニュースだけでなく、ニュースアプリケーションの配信側は、問題の軽重をもう少し考えても良かったかもしれない。そのうえで、人の目で記事の巧拙や妥当性を含めて検証した上で情報提供に努めるべきだろう。もちろん、何が重要で何が重要でないかを恣意的に判断することについては議論の余地があるだろうし、これらの配信元のポジションにおいてどういったスタンスをとっているかは異なるのも分かる。だが、見られるニュースがどこまで重要で、見られるべきニュースがどの程度重要なのか、その配信アルゴリズム、あるいは有人の検証のスタイルについて見直す良い機会だろう。

個人は高齢者世代、現役世代に分けて述べる。一般的に言って、団塊以上の高齢者世代は公的年金については(下の世代よりも)相対的に恵まれているはずだろう。したがって、あまりに無思慮でがめつい態度をこの問題に対して取るべきではない。ましてや、学生運動に参加したときの血が騒いで、年金返せデモのような狂気じみた運動に参加してみようかなどと思ってはいけない。まずやるべきは、人生を60年以上生きてきた分別ある大人として、自身の資産や収支状況の把握、将来費用の試算だろう。遺言が気になる人は公証人役場などを活用することだ。不測の事態に備えて、腹を割って息子・娘とも話し合ってみよう。そのうえで必要な助言を専門家に仰ぐべきだろう。大切なのは、ボケる前にしっかり落ち着いて見直すことだ。

現役世代は、今回の騒動を受けて最も考え、行動すべき当事者だ。発端になった金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書か、あるいはこの公的年金の概略についての簡単なパンフレットに目を通してみよう。将来に向けた貯蓄の大切さに対する意識が芽生えるだろう。そのうえで、3つの段階を踏んで今後の行動を考える必要がある。

まずは公的年金について、基礎的な知識を身に着けよう。「ねんきんネット」は、これまでの年金記録や、これから受け取る年金の見込額など、ご自身の年金に関する情報をパソコンやスマートフォンから、いつでもどこでも確認できるサービスだ。ここを足がかりにして、まずは自分自身の公的年金について、把握しておこう。
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次に、第2段階として、貯蓄の準備だ。公的年金はいわば補助的なセーフティネットである。したがって、本来的には自助努力、貯蓄が基本線となる。当座は、毎月の支出について今一度精査してみよう。節約については今一度整理して書いてみたいが、今回の騒動をきっかけに、どのくらい使っているか見直す良い機会となろう。家計簿アプリは多種多様だが、使ったお金を書く・入力することを通じて余計な支出を抑制することが肝要だ。特に最近は、デジタル・オンラインを通じた定額制課金サービス、あるいは電子マネーを利用した日々の買い物などについてもあらためて意識を向ける必要がありそうだ。

具体的な貯蓄のやり方としては、この画像のとおり、ミッフィーの貯金箱にお金を入れるのも良い。しかし、ソニー銀行などにメインの銀行口座以外に貯蓄用の専用銀行口座を作り、定額でメインの銀行口座から引き落として貯めるサービスを利用するのが堅実だろう。自動的な仕組みにより強制力を持たせたほうが実効性が高いからだ。

第3に、公的年金と貯蓄に次ぐ補助的な手段を検討することだ。ビットコイン宝くじは論ずるまでもないが、個人年金保険については検討する余地がある。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)積み立てNISAといった個人の資産形成に役立つ制度の活用も重要だ(こうした制度についても、あらためて別途解説を丁寧にまとめたいと考えている)。

しかし、こうした制度の裏側にある長期の資産運用の基本的な考え方についてまず、基礎的な理解を深めておく必要はあろう。手前味噌ではあるが、10/4 証券投資の日に考えてみたい真っ当な資産形成の手法"積み立て投資"という記事で、ドルコスト平均法やインデックス運用についての入口となる考え方を簡単にまとめたのでご参考にしていただけたら幸いだ。
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