馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

ソニーは映像や音楽にまつわる旺盛な"コト”消費需要に応え、創造する!

米中貿易戦争の影響が顕在化している"モノ"作りの世界では企業の慎重な見通しが相次ぐなか、ソニーは"コト”消費の世界で多彩なコンテンツビジネスを展開し、19/3期業績見通しは強含みの様相だ。すなわち、映像や音楽にまつわる旺盛な"コト”消費需要に応え、あるいは創造することにより、トランプ大統領が何をつぶやこうと揺るがない収益を上げ続けている。
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"コト”は一度作ってしまえば(もちろん、魅力的なゲームや音楽コンテンツや映画作品の創造・配信や販売・プロモーション・継続メンテナンスは大変だが)、いくら売れたとしても追加的な費用はそう大きくはかからない。固定費に比べて、売上の増減で変動する費用、すなわち変動費があまりたくさんはかからないため、限界利益率が高いのである。

一方で、"モノ"をたくさん作って売るには、材料費、人件費や外注費、電気代、販促費、輸送費などがかかるし、売れ残れば在庫が溜まってしまう。しかし、ゲームも音楽もパッケージソフトやCD、DVDのかたちで買うのではなく、ダウンロード販売やストリーミング配信サービスを通じて購入する時代に、売れ残りのリスクはかつてよりも心配する必要はなくなっている。
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ソニーは本日の上期決算で、上期の実績を考慮して19/3通期の営業利益見通しを大幅に上方修正したaiboが我が家に来たことに絡めて第1四半期の状況について述べたように、第1四半期では、ゲームや音楽などの上振れをリスクバッファで相殺してトータルの営業利益見通しは据え置いていた。通期は従来予想の6700億円(前期比▲9%)から一転して、8700億円(同+18%)へ営業増益に転じる見込み。もっとも、上方修正分の2000億円のうち、5月の経営戦略説明会で計上の予定が示されていたEMI musicの完全子会社化に伴う再評価益が1100億円を占めているため、見た目ほど派手な上振れではない。
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とはいえ、他の事業も順調な様子を示す内容ではある。ゲーム&ネットワークサービスが第1四半期と同じく+600億円と上振れの見通しを示した。自社ソフト「ゴッド・オブ・ウォー」「Marvel's Spider-Man」のヒット(パッケージ・ダウンロード販売)に加え、他社ソフトではエピックゲームスの「フォートナイト」など複数タイトルのゲームおよびゲーム内追加コンテンツが増勢した。PS4自体も意外な健闘を見せている。また、任天堂の「ミニ」に対抗したのか、「プレイステーション クラシック」を12月に発売する。往年の懐かしゲームの内蔵ソフトウェア全20作を搭載しており、本体は縦横で約45%、体積で約80%コンパクトになっているとのことだ。
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音楽部門はモバイルゲーム「Fate/Grand Order」が好調で+50億円。18/3期ではFGOのみで400億円の営業利益を叩き出しているが、今期もその勢いは健在のようだ。7-9月というと第2部第2章「無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング」やら、ハワイで同人誌制作に勤しんでいたような気がするが、我々FGOプレイヤーがマスターとして、英霊たるサーヴァントを召喚しようという行いもまた"コト"消費なのである。なお、私は星5確定ガチャに初の課金を行なった(2900円相当)結果、レオナルド・ダ・ヴィンチ(c.v.坂本真綾)を引き当てた。前に茶化して書いたが主題歌の「逆光」は良い曲だ。

ムバダラとマイケル・ジャクソン遺産管理財団から持ち分をGETしたことで、EMI musicの完全子会社により、1100億円も営業利益が嵩上げされる点は、見かけ上20/3期のハードルが高くなるので若干気になるところ(もちろん、18/3期にも半導体部門に地震の受け取り保険金と製造設備売却益436億円、音楽部門はビルの売却益105億円という一過性要素があったが…)。しかし、これによりソニーは音楽制作配信部門において400万を超える音楽楽曲の版権を持つことになる。ビートルズもクイーンもバックストリート・ボーイズも、米津玄師も平井堅も小田和正も宇多田ヒカルも、音楽はストリーミング配信やダウンロード、CD、DVD、どれでいくら聞いても、その芳醇なメロディーや歌声は減ることはない。もちろんその際には、ソニー製のハイレゾ音源対応ミュージックプレイヤーやヘッドフォン・イヤフォンで楽しめる。また、スヌーピーの版権を有する「Peanuts」に出資し、コンテンツIPを強化している。
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映画は+60億円。前年の「スパイダーマン・ホームカミング」のヒットによるハードルは高いものの「モンスターホテル」、「イコライザー」の続編や、スパイダーマンの宿敵たる「ヴェノム」のヒットを考慮して見通しを引き上げた。また、前期にヒットした「ジュマンジ  ウェルカム・トゥ・ジャングル」や「実写版ピーター・ラビット」のテレビ放映ライセンス収入も寄与しているようだ。

カメラは+30億円。ミラーレス一眼カメラの高級機種や交換レンズの存在感が高まり、製品構成の良化が進む。グッドデザインベスト100のうち6製品を受賞し、うち2つはクリエイター向けハイエンドカメラであった(その他はaiboとイヤフォン、ミュージックプレイヤー、画面を振動させて音を出す"アコースティック・サーフェス"技術搭載の4K有機ELテレビ「ブラビア」)。プロの番組制作に加え、インスタ映えやユーチューバーによる動画配信の需要も取り込んでいる模様で、まさしくこれも"コト"消費の領域である。

半導体(画像センサ)は第1四半期と同様にさらに+200億円といった状況だ。スマートフォン市場は世界的に成熟しており台数の伸びは期待しにくいが、スマートフォン向けカメラレンズは複眼化・高画素化が進んでいる。iPhoneは2年前の7からデュアルカメラになり、シャオミ、OPPO、VIVOなど中国スマホもデュアルカメラ化しつつある。ファーウェイの売れ筋「P20」に至ってはトリプルカメラである。もちろん、この他に自撮りのインカメラでもう1個追加だ。SNSの隆盛はスマートフォンカメラ、デジタルカメラ双方でより美しく体験を思い出に残す需要を喚起している。

画像センサは、熊本・長崎・大分・山形工場を増強し、ウエハ投入枚数ベースで月産10万枚の生産能力を20年度までに13万枚へ増強する見通し。なお、この増強は20年度までのスマートフォンカメラレンズ向けの需要に応えるためであり、車載向けは含まれないとのことだ。

ただし、相変わらず不振が続くXPERIA含むソニー自体のスマートフォン関連事業は、減損損失及び販売台数の下方修正(900→700万台)で▲650億円の営業損失を計上する見込み。裏返しとしてこのリスクを織り込んでいた「その他」を+610億円引き上げた(積層セラミックコンデンサの調達リスクは概ね解消したようだが、新興国の為替などについては引き続き警戒されており、リスクバッファは200億円、その他の部門にもそれぞれリスクは見通しに織り込んでいる模様だ)。

金融(生損保・銀行)も収益貢献が続いており、ブランデッド・ハードウェア(テレビ・AV機器、カメラ関連←品種構成良化、スマートフォン←これは稼げてない)の安定収益に加え、キャッシュ・コンバージョン・サイクルがとても早いゲームとネットワークサービス、音楽とモバイルゲームからの潤沢なキャッシュフローを、コンテンツビジネスの強化、成長が見込める半導体(画像センサ)への設備投資に振り向ける構図になっている。20期ぶり営業最高益となった18/3期を19/3期はさらに超える確度は高まり、今のところ歯車はうまい具合に回っていると言えそうだ。
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