馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

FF7リメイクへの期待と不安・ゲームを取り巻く環境について

11~13日にかけて、毎年恒例のゲームショウE3(Electronic Entertainment Expo)が開催された。通例、この時期はゲーム銘柄は期待先行で買われ、終わると出尽くし売りになるのが恒例行事だ。特に今年は、スクウェア・エニックスHDにおいて、その傾向が強く現れた。
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スクエニの株価は、11日は2.7%安、12日は5.7%安と大きく売り込まれた。ソフトメーカーではバンナムやコナミは底堅く、ゲーム機も展開するソニー、任天堂も下げたが、スクエニの下げほどではなかった。スクエニは、3日にスマートフォン向けの「ドラゴンクエストウォーク」をコロプラと共同開発、2019年に配信すると発表し、4日に値を飛ばして高値をつけていた。このことも、結果的に反動の下げ足を早めていたようだ。

米中貿易戦争激化・トランプ劇場炸裂のなか、直近でレジャー関連、中でもゲーム銘柄は年初来高値をつける銘柄は少なくなかった。ただし、スクエニの場合、もともと今期の業績見通し自体はすこぶる評価されていたわけでもない。

決算説明会資料によると、2019年3月期第4四半期に発売した「KINGDOM HEARTS III」が好調だったほか、「NieR:Automata」が当期に100万本以上のリピート販売と好調であり累計販売本数400万本を突破するなど、まずまずの状況だった。

しかしながら、2020年3月期におけるリピート販売は「JUST CAUSE 4」や「SHADOW OF THE TOMB RAIDER」等の前期販売実績を考慮して 、想定は保守的に見ざるを得ず、 2020年3月期の業績予想は売上高2,700億円、営業利益240億円と、2019年3月期並みの水準を同社は見込んでいる。

今期のソフトラインナップはやや心もとなく、収益貢献が期待できる新作は「ロマンシングサガ リ・ユニバース」の1タイトルのみと厳しい状況である点などにも言及していた。ずいぶんと弱気なようだ。

それだけに、E3ショウで発表された内容はむしろゲームファンの耳目を引くものだったようにも見える。というのは、有力なタイトルをいくつもリリースを発表したからだ。「FINAL FANTASY VII REMAKE」を2020年3月3日、「FINAL FANTASY VIII Remastered」を2019年中、「Marvel’s Avengers」を2020年5月15日に発売する見通しだ。

これらは往年のファンにとっては、結構なインパクトと言えよう。FF7のリメイクといえば、以前からいかにもありそうだと言われていたが、具体的な発売日までもが開示されるのは今回は初めてだからだ。2021年3月期については、業績貢献が期待できそうな話ではある。

だが、一方で不安がつきまとう面もある。発売当時とはずいぶんと状況が異なるために、リメイク版で妙な改変の類が頻発する可能性がある点だ。これは元々の作品の味を損ないうるかもしれない。たしかに、97年当時は(もう22年も前だ!)FF7といえば、バイオハザードと並んで本格的な3DのゲームとしてPSの躍進に大いに貢献した。しかし、当時許されたようなシナリオ展開や表現の一部には、昨今の風潮からすると睨まれる可能性がある。ご承知のとおり、FF7の冒頭のあらすじは以下の通りだ。

世界を牛耳る巨大企業「神羅カンパニー」が支配する、科学文明の栄えた街「ミッドガル」。星の生命エネルギーでもある魔晄を搾取して動力エネルギーとする神羅カンパニーの政策に反抗する組織「アバランチ」。彼らの抗争は長期にわたり続き、神羅によるアバランチリーダー暗殺が起きるなど激化の一方であった。

ある日、アバランチは壱番魔晄炉爆破作戦を決行する。それはあまりにも強大な敵の前に組織崩壊寸前のアバランチにとって、失敗の許されない壮大な作戦だった。そこでアバランチは、元・神羅カンパニー直属部隊ソルジャーの一員であり、現在は傭兵稼業をしているクラウドを助っ人として雇うことにする。

過去の記憶の大部分を失っているクラウドにとっては、ただの儲け話の一つに過ぎなかったこの仕事が、後に自身の悲壮で過酷なる過去を明らかにすると共に、この星の未来を左右する争いに身を投じる序章になるとは、この時のクラウドは知る由も無かった。


お分かりのとおり、アバランチはまさにエコテロリズム集団とみなされうる。そして、何より魔晄炉の爆破というイベントは、今日の日本人にとっては97年当時と違った受け止めをされる可能性もあろう。東日本大震災の大津波を受けた福島第一原発事故を経験しているからである。ティザーPVによると、冒頭の展開はそう変更はなさそうだが、妙な手合に絡まれないことを祈るのみだ。

もちろん、ゲームと現実は分けて受け止めて、ゲームはゲームとして楽しむべきである。しかし、世の中には、ゲームが暴力を掻き立て犯罪を起こすなどと主張する「ゲームと現実の区別がつかない」人達がいる。特にメディアにおいては、わかりやすい説明法として重宝される。本質的な事件の要因分析よりも、表面的にゲームと関連付けたほうがてっとり早いのだから。

なにせ、川崎殺傷・容疑者宅に「テレビとゲーム機」とわざわざ速報されるほどだ。元農水事務次官が息子を刺殺した事件では、傍からは惻隠と傍観が穏当という冷静な意見もある一方、息子がドラクエ10の異様なヘビーユーザーであった点も耳目を集めている。こうした痛ましい事件については、情報を見る限り、実際のところ無理にゲームと関連付ける必要は乏しい。ゲームそれ自体よりも重要そうな問題はいくつもある。

最近ではWHOによるゲーム依存症騒動など、風当たりは強い。これについては、"ゲームの"依存症というより、依存症それ自体が問題だと私は考える。しかし、わかりやすい敵(の印象)としての悪玉的なゲームの概念的な役割・立ち位置は大きく変わっておらず、多くの陰謀論と同様に便利に使われている現状に変わりはないようだ。

性描写制限などについても、昨今ではその目線は厳しくなる一方だ(誤解をしないように言うと、そうした潮流が好ましくないというつもりはまったくない。そして、こうした先回りのエクスキューズをこんな文章でさえしていることが、現在の情勢や雰囲気を示唆している)。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、批判や法的措置のターゲットになることを懸念したためか、最近ソニーはPS4で性描写制限に乗り出している。記事によると、その背景には2つの要因がある。

ひとつ目は米国での「#MeToo」運動の高まりだ。女性への屈辱と思われかねないコンテンツと関連付けられることの危険性が示唆された。ふたつ目はユーチューブやアマゾン傘下の「Twitch」といったサイトでのゲーム中継チャンネルの台頭だ。それは、日本の緩い基準で流通しているゲームが簡単に世界にさらされることを意味する。

制限と言っても、具体的な書面のガイドラインがないことに反感を持つソフトメーカー幹部もおり、日本のある小規模ゲームメーカーの社長は「なにがどうNGなのかは提出して見てもらうまでわからない」、「何がセーフで何がアウトなのかの基準ははっきりせず、しかしNGが出たらやり直さないといけない。手間ひまがかかる」と述べた。

ディズニー作品が女性観の変容、多様性への対応を迫られており、非常な大きな圧力にさらされていることを考えれば、ティファがインナーをしっかり身につけていることなど、特段驚くにはあたらない。



物語の序盤の舞台、ミッドガルでは歌舞伎町を思わせる猥雑な町並みもある。六番街のドン・コルネオが仕切るスラム街の市場では、主人公・クラウドが女装するシーンがあり、その際に色好みのスラム街の重鎮、ドン・コルネオが女装を見抜くことができずにてんやわんやする愉快なシーンがあるが、この辺の描写も気になるところだ。

また、マッド・サイエンティスト宝条の言動や人体実験、人の精神などに関わる描写は本編中に多くあることも、機微な表現について気を使う要因となろう。

さらに、「ミッドガルのストーリーを広大かつ緻密に描きます」「Blu-ray2枚組相当のボリュームで、1本の独立したソフトとして十分に期待に応えるものになっています」と銘打っている点も気になる点だ。ということは全体の分量を考えると、3部作になるのだろうか。様々な派生作品の内容も盛り込む必要があるのはわかるが、名作だけにしっかりしたリメイク作品として楽しませてほしい。心配は期待の裏返しだ。「シェンムー」のようにならないことをひとまず祈るのみである。

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