名曲紹介14：ラブソングの帝王が送る極上のラブコメ主題歌！：鈴木雅之「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」　『かぐや様は告らせたい～天才たちの恋愛頭脳戦～』OP

鈴木雅之といえば、サングラスがトレードマークの往年のラブソングの帝王としておなじみだ。「別れの街」や「恋人」などは有名で、私も好きな曲だ。

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最近ではシャネルズ（ラッツ&スター）時代の「め組のひと」が倖田來未のカバーでTiKToKで人気が沸騰。そんななか本年2月、投入されたシングルはまさかのアニメタイアップ曲だった。39作目のシングル曲「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」は、ヤングジャンプで好評連載中の「かぐや様は告らせたい～天才たちの恋愛頭脳戦～」アニメOP主題歌となった。アニメロサマーライブ2019にもこの曲を引っさげて参戦する模様である。

ソニー・ミュージックはここで、作詞・作曲はいきものがかりの水野良樹を起用。意外なことに昭和～平成の歌謡曲感を残しつつも現代的なナンバーに仕上がった。作品性にもフィットしており、恋を巡る男女の駆け引きを象徴する歌詞をムーディーに歌い上げている。

「かぐや様は告らせたい」の筋書きはこうだ。お互いに惹かれ合っているものの、高すぎるプライドが邪魔をして半年が経っても告白することが出来ない素直になれない二人が、いつしか自分から告白することを「負け」と捉え、「いかにして相手に告白させるか」ばかりを考えるようになり、権謀術数の限りを尽くした“恋愛頭脳戦”を繰り広げる、というものだ。その通りの滑稽な応酬が実に楽しいラブコメである。

したがって、Bメロの「触れた指の先が運命を待ちわびている　あなたに言わせたい　心の壁を破る愛の告白」だとか、大サビ前のCメロ「あなたはいつまで答え言わないの　愛の秘密今すぐ明かして」といった部分は往年の歌謡曲の風味を彷彿とさせつつも、作品に寄り添い、アニメOPにふさわしい内容になっている。

愛の告白は手段として重要だが、一方で告白は惚れた弱みにつながるとの面を警戒して、結局私は告白をしないという戦略に行き着いたので、歌詞に親しみを覚える。思いの丈を打ち明ける・打ち明けさせたいという攻防戦は、当事者にとっては歌詞が度々繰り返すようにスリリングな"危ないGAME"であり、"Love is war"なのだ。

しかし、当事者ではなく、そうした他人の様子を眺めている分には面白いものだ。だから、作中の二人のやり取りは傍から見ている分には、愉快で微笑ましく、楽しいアニメだったというほかない。実写映画化には多分に不安が残るが、それにしても、この曲における鈴木雅之のライブパフォーマンスは全く衰えを感じさせず、パワフルなヴォーカルで聴き応えがある。

歌番組の抜粋がニコニコ動画でミリオン再生となったが、（アニソン界の）超大型新人と見做して「ずいぶん鈴木雅之に似た新人だな」「新人にしてはずいぶん余裕のある歌いぶりだな」「ずいぶん貫禄あるな」などとすっとぼけつつ、「まさか、そんなことがあるわけ…鈴木雅之じゃねぇか！」と手のひら返しをするのが恒例行事だ。

深みのある美声は聞き惚れるし、カメラワークも振り付けもばっちりで、さすがの円熟ぶりを示したと言えよう。まさしく、大御所・重鎮級のアーティストのアニメとのタイアップの成功事例として、心に留めておくべき曲だ。