馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

コナミがただちに「ときめきメモリアル5」を開発・販売すべき5つの理由

コナミがただちに「ときめきメモリアル5」を開発・販売すべき5つの理由を今日は述べたい。名曲紹介9:要考察な歌詞を宇宙規模で伸びやかに歌い上げる!「フィフネルの宇宙服」(菊池志穂as館林見晴)の記事で予告したとおりだが、やや時間がかかってしまった。

先月、コナミは「ときめきメモリアル」シリーズのスマートフォン専用ゲーム「ときめきアイドル」のサービス停止とオフライン版への移行を発表した。1年たたずして撤退とは経営判断として迅速ではあるが、自社のIP(知的財産)をやや過小評価しているようにも思える。たしかに、大切な自社の有力IPを活用して収益化できなかった点については経営陣はあらためて考える必要がある。しかし、大切なのはこれからのことだ。

この点について最良の策の一つは、ナンバリングタイトルとしての「ときめきメモリアル5」の開発・販売だ。その詳しい理由はのちに述べるが、さしあたりコナミにはあらためて自社の有力タイトル制作に向きあってほしいのである。顕著に業績が良化・悪化したときに、慢心した状態や慌てた状態で、作って欲しくはない。今のコナミは、「ウイニングイレブン 2018、2019」(海外名「PROEVOLUTION SOCCER 2018、2019」)、「実況パワフルプロ野球」や「プロ野球スピリッツA(エース)」、カードゲームでは遊戯王シリーズなどの各タイトルが堅調に推移しており、19/3期は10.7%の営業増益を見込む好業績だ。過度に良すぎず、悪すぎず、腰を据えて新作の開発・販売に取り組むにはちょうど良い塩梅といえそうだ。

図表<コナミ 09/3期~19/3期(会社計画)の営業利益の推移、
14/3期からIFRS(国際会計基準)、単位は億円>

無題


「ときめきアイドル」はTwitterを見る限りファンにとても惜しまれるゲームだった。また、コナミの得意な音楽という点にもフォーカスした点においても、充分に愛される価値のあったゲームではあったように思える。しかし、雨後の筍のごとく多数乱立するアイドルを題材にしたゲームである必然性があったのかは、やや疑問な面もあったかもしれない。

 
落ち着いて考えてみると、「ときめきメモリアル」というコンテンツを本当に活かせる形は正統派の続編そのもの、という可能性もあろう。狙うべきはホームランではなく、センター返しのクリーンヒットだ。別に奇をてらう必要はない。そこで、「ときめきメモリアル5」を開発・販売すべき5つの理由を述べてみたい。

第1の理由は、2019年はときメモの重要な節目であるためだ。これだけでも、やる価値はあろう。会社沿革を見ると、1995年発売のPCエンジンの初代ときメモは25周年。四半世紀前にあたる。1999年発売のときメモ2は15周年、2009年発売のときメモ4は10周年だ。新作ナンバリングタイトルを発売する大義名分としては十分である。ましてや、それが実績のあるタイトルならばなおさらだ。

第2の理由は、潜在的な顧客は多いためコンテンツ再活性がしやすいためだ。ときメモはいわゆる"古典"ともいうべき歴史的なゲームだ。そのジャンルに於いてパイオニアにして、金字塔である。知名度があるため、アピールできる層は幅広い。クリエイター側にも影響を受けた人は多く、「ゼロの使い魔」ヤマグチノボル氏、「神のみぞ知るセカイ」若木民喜氏など、枚挙にいとまがない。また、初代ときメモのリアルタイムのプレイヤー達は30~50代であり、若年層よりも購買力が高い。旧作プレイヤーをメインターゲットとしつつ、サブカルチャーやハイテク機器に親しむ現代の若年層に訴求する作品作りが、次世代のときメモに求められるであろう。

第3の理由は、現代はプラットフォームが充実しメディアミックス展開がしやすいためである。もちろん、携帯・据置ゲームで発売するのが悪いわけではないし、スマートフォンの隆盛でパッケージソフトの開発に割かれるリソースは、国内メーカーにおいてはかつてよりは手薄だろう。この領域を狙うのは妥当ではある。

だが、基本線として「ときめきメモリアル5」はスマートフォンアプリでリリースするのが良いと考える。スマートフォンは皆持っているため、iOSないしandroidのプラットフォームを使って配信してしまえば、ハードウェアに悩む必要がない。パッケージソフトと異なり、流通コストはアップルやグーグルにショバ代を払うだけでよいし、中古ソフトの流通による売上の機会損失も防げる点も大きい。iTunes、ネットラジオ、ニコニコ生放送、Twitterなどへの誘客も容易だ。このため、同一プラットフォームですべてのプロモーションが連携し合うかたちでの展開が可能である。

育成シミュレーションゲームでもある、ときメモのゲーム形式からいって、ゲームデータがかつてのPSやPSPの時よりも甚大に膨らむようには思えない。あえていえば音声データがネックではあるだろう。ときメモ2は、当初のPS版はあのFF8の4枚をもしのぐCD-ROM5枚組で容量は4GB近く、PSPゲームアーカイブス版の容量は2206MBである。しかし、スマートフォンのNANDフラッシュメモリの搭載容量の拡大、音声データの圧縮技術の進歩を考慮するならば、順当なデータ容量に収めて販売が可能であろう。

第4の理由は、現在、競合他社が成功しているビジネスモデルはかつてコナミが展開していたビジネスを取り入れたものであり、しかもコナミには時代を先取りした取り組みをしてきた実績があるためである。ヒントになるのはソニーとバンダイナムコの今のビジネスの姿だ。その考え方や手法の一部をコナミは取り入れる余地はある。

ソニーは吉田社長の新体制において「人(ユーザー、クリエイター)に近づく」という経営方針を掲げている。クリエイターが創り出すゲーム、音楽、映画のコンテンツを「撮る」、「録る」、「再生する」、「観る」、「聴く」機能を持つブランデッドハードウェアで、ユーザーに届けている。「撮る」ハードウェアに使われている、画像センサ(CMOSイメージセンサ)は世界首位である。いかに絶好調であるかは、以前に19/3期第1四半期19/3期第2四半期決算にaiboやアストルフォ、コト消費を絡めて述べたとおりだ。

ソニーは顧客と直接つながるリカーリング(循環型)のビジネスモデルを、DTC(Direct to Consumer)と呼んでいる。このユーザーに近いDTCサービスとクリエイターに近いコンテンツIPを強化し、テレビや静止画・動画カメラ、オーディオ機器で結びつけ、共通の感動体験や関心を共有する人々のコミュニティ、「Community of Interest」を創造するというのだ。そしてそれは、かつて「ときめきメモリアル」にもあったはずで、新作の投入により再び形成することが可能である。もちろん、直近「ときドル」が形成したクラスタもあろう。

とはいえ、コナミは基本的には主力がゲーム事業なので、総合企業のソニーの経営方針は考え方としては参考になろうが、より直接的な模範になりうるのは同業のバンダイナムコかもしれない。バンダイナムコは、ガンダム、仮面ライダー、ドラゴンボール、戦隊ヒーロー、プリキュアといった定番のご長寿IPのビジネスを堅持している。コナミに欠けているのはこの継続性である。ときメモ2でさえ、初代の制作スタッフはプロデューサーのメタルユーキ氏(本来の職務は音楽なのだが…)くらいしか残っていなかったというのだから驚きだ。コンテンツIPの継続展開は見習うべきだろう。

バンダイナムコは、今やモバイルゲームが牽引役だ。私自身はあまり気乗りしないが、「ときメモ」も何らかの課金ガチャについて儲け方を考慮するべきではある。しかし、この点においてはあえて同じ土俵に乗らないことで、差別化を図る道もあろう。その一方で、むしろコナミの強みである音楽にフォーカスしたほうが、良い結果が生まれるかもしれない。

バンダイナムコは、音楽分野、特に最近ではライブイベント(アイドルマスター、ラブライブ、アイドリッシュセブン)にも注力しており成功を収めている。ゲーム中のキャラクターソングの販売に加えて、出演声優によるライブ実施だ。だが、待ってほしい。それはまさにコナミが昔やっていたことではないか。ときメモの隆盛の一因はその豊富なキャラクターソングにある。かつて、1996年には全国キャラバンも実施していたと聞く。矩形波倶楽部というサウンドチーム、バンドを擁していたコナミは、音楽の力に今一度目を向ける必要がある。

グッズ販売についても、かつてコナミが得意としていた商法だろう。限定版商法やグッズ商法は当時としては悪名高かった部分もあったかもしれない。しかし、アニメやゲームのコンテンツ展開のやり方としては極めて一般的になってしまった。時代を先取りしていたのかもしれない。グッズはフィギュア、テレカ、キーホルダーなどから、果てはシーツやPHSまでとラインナップは幅広かったそうだが、ロイヤリティの高い顧客層にどれだけクロスセリングできるかは、リカーリングビジネスモデルにとって重要だ。

他にも、ときメモが時代を先取りしていた点はいくつもある。たとえば、現在では当たり前のコラボカフェだ。2005、2006年頃だったか、原宿の竹下通り口を出て眼の前のビルに、ときメモカフェエコルというのがあった。私も何度か足を運んだことがある。今は、インターネット上、特にSNSなどの手段も充実しているが、一方でこうした場所は、物販およびイベントの実施場所として重要だ。先に述べた共通の感動体験や関心を共有する人々のコミュニティ、「Community of Interest」を創造するためのリアルな場として、コラボカフェは役に立つ。(村井かずささんお誕生日会 ポンペイの輝き展 2006,5/20「ナポレオンとヴェルサイユ展」と「高野直子さん誕生日会」 2006,6/17

さらにときメモ2のEVSときメモ3のトゥーンレンダリングといったシステムは当時としては実を結んだとは言い難いが、意欲的な挑戦としては評価できるだろう。他に言及すべき点もあろうが、うまく歯車が噛み合えば、チャレンジングな試みは大化けに繋がる可能性を秘めている。

第5の理由は、今のコナミが財務的な余力を持っているためだ。19/3上期決算説明会資料によると、18年9月末の自己資本比率は約73%。流動負債664億円に対して流動資産は2004億と約3倍にも達する。しかも、流動資産のうち棚卸資産(在庫)は105億円に過ぎず、現金及び現金同等物は1516億円にも及ぶ。収益がヒットに左右される業界特性のため、手元流動性を厚めにする必要性を考慮しても、保守的に溜め込みすぎているようにも見える。余剰資金を増配や自社株買いに充てるつもりがないならば、本業で有力な新作ソフトの開発に一部を振り向けて収益を生み出し、ROA、ROEを高めるべきだ。絶大なヒットでなくとも、一定の成果を収めるくらいで十分だ。それは着実に業績を押し上げる要因になる。

手元資金に手をつけたくないならば、日銀が長期金利を抑え込んでいるこの低金利の環境を利用して、銀行借り入れや社債発行による調達も一手だろう。日本格付研究所によるとコナミの格付けは「A」と優良だ。ときメモ3とGirl's sideの開発資金のようにファンド(投資信託)で資金調達する必要はない。「メタルギアソリッド債」「幻想水滸伝債」と銘打った社債投資の募集を行ったときのように「ときめきメモリアル5債」で良い。資金使途を新ゲーム開発であると明確にすることで社債投資家にわかりやすくするともに、話題性によって株式市場にアピールすることもできる。ネットニュースにも取り上げれられれば、広告宣伝費を節約できる。

以上、5点の理由により、コナミはただちに「ときめきメモリアル5」を開発・販売に着手すべきである。それを声高に主張するのは、単に私が一曲でも多くの美しい楽曲を聞き、楽しみたいからだ。「5」を心待ちにする人たちには十人十色の事情と理由があろう。だが、そうした人たちの数はコナミが見込んでいるよりも実は意外に多くいるかもしれないのである。

ときめきメモリアル4 ベストセレクション - PSP
コナミデジタルエンタテインメント (2010-07-15)
売り上げランキング: 12,768
ときめきメモリアル3~約束のあの場所で~ (コナミ ザ ベスト)
コナミ (2003-01-23)
売り上げランキング: 17,933
ときめきメモリアル2 (限定版)
コナミ (1999-11-25)
売り上げランキング: 28,807
ときめきメモリアル - PSP
コナミ (2006-03-09)
売り上げランキング: 12,592