馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

実体験で語る声優養成所に通う7つのメリット

先日、妻が本棚の「パントマイムのすべて」という本に関心を示しねほりんぱほりんしはじめたので、本を読みながら気のない返事で誤魔化そうとするもかえって興味をひいてしまった。10年も昔のことで名状しがたいもやもやする部分もあったりするが、その本を実践しようとしていた頃の若気の至りについて書いてみようと思う。

5年目の証券マンとして働き盛りの私の源流は、実は大学2年生の時に声優養成所に通っていたことにある。塾講師のバイトで稼いだお金で、親に内緒で入所試験を受け、アーツビジョン付属の日本ナレーション演技研究所に通っていたのだ。冬に慢性気管支炎になり結局はドロップアウトしてしまったが、それでも年間授業料30万円の投資は明らかにリーズナブルだった。私の体験から7点ほど、声優養成所に通って良かったことを以下に示す。近年では、職業としての声優の人気は高く、「13歳のハローワーク」によると人気職業ランキングの25位だとか。実体験の話は、声優を志す若者には少しは役に立つかもしれない。

1:声優以上の年収を手に入れる可能性があること
いきなり身も蓋もない事を言って申し訳ない。だが、声は一生モノの投資だ。たとえ声優になれずとも、身につけた発声法は人生で公私共にかならず役に立つ。その意味で人生の中で役者を目指すために頑張った期間は人生において無駄になることない。人間は声を発することで相手を動かすのだから。自分の場合は幸いにして電話越しに「大阪に来いよ。」の一言で事足りてしまったが、もしたとえばプロポーズのときに気持ちが伝わらなかったらあまりにも悲しい。

声は証券会社の営業マンにとって何者にも代えがたい武器にほかならない。見えないものを売る仕事であり、対面営業に加えて、電話一本で大きなお金を動かしていただくこともある商売なのだから、セールストークの中身や相場観だけではなく、喋り方と喋る声、間のとり方と話の進め方とでお客様を心を動かす必要がある。リテール営業の現場においては、少なくとも株の売買は論理ではなく情理が占める割合が多い。株という生き物を語るのだから、臨場感は大切なのだ。

それなりに大変な仕事ではあるが、世のサラリーマンの平均年収よりは若いうちから稼げているはずだ。世のサラリーマンよりもはるかに過酷な競争を勝ち抜き戦い続ける声優といえども、トップクラスの方ですら決して年収は高いとはいえず、多くの声優はアルバイトなど副業もしていると言われる。そうしたことを考えると声優になれなくとも悪い人生ではないし、営業マンは声でお金を稼ぐ商売なのだから、どう考えてもプラスの経験になったと言えよう。

2:滑舌が良くなること
早口言葉(ex.猪汁猪鍋猪丼猪シチュー 以上猪食試食審査員試食済み 新案猪食七種中の四種)をはじめ、みっちり滑舌練習を特訓する。歌舞伎十八番の「外郎売り」の暗唱もマストだ。綺麗な日本語の発声が身につき、自信を持って話すことができるようになるだろう。営業、特に株式営業は主に電話だけで人の気持ちを動かす必要がある。どんな会社の株でどんな展望があるのか、なぜ今買うのかをしっかりはっきりまず言葉それ自体を伝えなくてはならない。そのうえで、時には夢膨らませるような話しぶりが必要だ。

3:大きな声を出せるようになり、カラオケも楽しくなること
日ナレストレッチや腹式呼吸法の鍛錬により、声も大きく通るようになる。体も柔らかくなり美容にも良い。プライベートのカラオケは楽しくなるし、仕事上の付き合いで行くカラオケも怖くなくなる!最初の支店では、支店長がカラオケが大好きで、打ち上げや送別会の二次会が必ずカラオケだったので、当時の鍛錬の効果でたいへん助かった。これからは日本株式の業界担当のリサーチャーとして、リテール営業のお客様向けやセールス向けセミナーや、朝の銘柄・市況放送もすることになるので、きっとこれからもかつての経験は活かせるだろう。

4:仕事をするうえで必要な社交性の下地を準備できること
演じることはサラリーマンにとって良くも悪くも必要なスキルだ。役員は役員、支店長や課長はそのマネジメントの枠割を、営業マンは営業マンの役を演じる。社内での日常の受け答え、お客様との交渉の駆け引きにおいて、思ったことをただ口に出すのではこの世の中を生き抜けない。出した言葉の伝わり方は自分の意図に反してしまうこともあることも、前もって先に考えて話す必要がある。だから、演じることを学ぶことで自身と相手の感情についての考えに深く思いを巡らせる習慣がつく。

5:度胸がつくこと
リーマンショックのあおりで就職に苦労し、新卒でやむなくMBA(ビジネススクール)に行った私は、授業とたくさんの課題、グループワークについていくのに精一杯だった。その中で自分は何が貢献できるだろうと考えたところ、グループワーク発表の最後のプレゼンテーションを買って出ることにした。すると、たまたま優秀班に選ばれてしまった。そうなるとはずみが付くもので、次の別のグループワークでは最後の発表は君がやってくれということになり、プレゼンと言えば自分という流れができてしまった。

おかげで自信がつき、人前で注目を浴びながら喋るという行為が怖くなくなった。養成所に通っていなかったら、内気な私は飛び込み営業すらできなかっただろう。「今をときめく声優・茅野愛衣さんに学ぶプロフェッショナルの心構え」で引用したように「スベることを恐れてはやっていけません(笑)」ということを身をもって学べるわけだ。

6:青春の時間を過ごせること
同じクラスの同志たちは様々な年代の方がいて、同好の士も当然いる。仲の良いクラスで、レッスン後はいつも連れ立って代々木のサイゼリヤに行ったものだ。特に私が親しくなったのはみぃちゃんと呼んでいた、2才年下の健気で華奢な女の子だった。(黒帯 KURO-OBIという映画にエキストラで出ている)。この記事に出てくる女の子というのがそうだ。最初のレッスンでグループ分けで誕生日順になることがあった。私が3月20日生まれで、彼女が3月16日生まれということで、気も合い自然と親しくなった。周りからは(物理的に)距離が近いと指摘を受け、付き合っているのかと揶揄されることもあったが、決して付き合っていたわけではなかった。

2才年下で、高校を中退し派遣で働きながら役者を目指す彼女は田端で一人暮らしをしていた。自主練仲間ということで、レッスン以外の日にも会うことが多くなり、レッスン後に泊まることも多くなった。カーテンレールには通っていた高校の制服のブレザーがかけたままになっており、古びた狭いアパートの壁はほぼ本棚で、たくさんの文庫小説や少女漫画があった。部屋にはりぼんもあり、当時購読を止めていた私には再読するきっかけになった。当時流行り始めていたニコニコ動画や、桜蘭高校ホスト部のアニメのDVDを徹夜で見たりした。坂本真綾の歌がとても得意で、カラオケにもサシでよく行った。ある時はレッスン前に声出しと称して行った後に、台風で私が家に帰れなくなったため、徹夜カラオケなんてこともあった。そんな2人で過ごす楽しい日々が、当時失恋したての自分を癒やしてくれたのだろう。

7:声優の偉大さを知りアニメをより楽しめるようになること

身をもって体験すれば、いかに演技は難しいことかわかろうというものだ。若手の役者がしょっぱい演技をしたとしても寛大な心で見守ることもできようし、素晴らしい演技をした役者には惜しみなく賞賛できるようになる。アニメに限らず、あらゆる作品がより生き生きと色鮮やかに見えてくる。プロの声優の下には幾千万もの死屍累々。しかしながら、その死体一人ひとりはいずれ生ける屍となって蘇り、身についたスキルによって開花することもあるのだ。人生で頑張った時間というのは、見える世界と生きる世界とを、きっとより美しいものにしてくれる。

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