馬車郎の私邸

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声優・茅野愛衣さんに学ぶプロフェッショナルの心構え

『人生の多くの時間を費やす「仕事」において、自分の「好き」を見つけ、その「好き」を行動に起こしていくことで、人生をより豊かなものにできるのだと思います。』

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上記は今をときめく声優・茅野愛衣さんの言葉だが、まさに至言である。バートランド・ラッセルは「幸福論」で以下のように述べている。
「幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ。」
そうすると、「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。」というわけだ。

最前線でバリバリ働いている一流の方が語る言葉は、一見単純に見えても実が詰まっていて実感が湧く。以下インタビュー記事から引用しながら見ていこう。

━━最近の声優の働き方は多岐に渡っていますよね。
茅野:そうですね。今のお仕事をする前の私は、声優というものは「裏方仕事」だと思っていたんです。声優さん自体、あまり顔を見たことがなかったですし、どういう風にお仕事されているかも全くわからなかったので、業界に入ってみたら想像以上に人前に立つことで、注目を浴びることが多い仕事ということに驚きました。またマルチにできることを求められるため、イベント1つをとっても、ゲームや大喜利などに対してチャレンジしながら、スベることを恐れてはやっていけません(笑)。さらにファンブックになると、「直筆でコメントイラストを描いて載せます」みたいなことをしたりするので、何か絵が描けたりすると良かったりなど……。
━━声優という肩書きはありつつも、完全にマルチタレントなのですね。
茅野:いろんなことに興味があるという方にとって、声優という仕事は幅広い可能性があるのですごくおもしろいと思います。「ラジオDJもやりたい、でも歌手もやってみたいし、モデルもやりたい」みたいな感じの人にはすごく楽しいと思います。

「スベることを恐れてはやっていけません」とはまさにそうだ。会社の飲み会であれ、飛び込み営業であれ何か相手からリアクションを引き出さなければならない。体裁を気にして目立たず生きていても、誰からも反応を得られないというのははたして生きていることになるのだろうか。相手を慮るあまりに何もしないよりも、行動を起こしなんでも思い切ることが前に進むこと、生きることだ。

━━デビューされてから5年ほど経っていると思うのですが、今もなお不安は抱えているのですか?
茅野:そうですね。声優という仕事柄、明日仕事があるのか、来年仕事があるのかも全くわからないので、そういう面では誰しも不安は持っていると思います。しかも風邪をひいて声が出なくなったら全く仕事にならないので、常に健康面で気を使う必要もあります。「日々、不安は全くないよ」という方はいらっしゃらないのではないかなと思います。
━━その不安をなるべく避けるためにやっている事はありますか?
茅野:人それぞれだとは思うのですけれども、考えすぎないことですね。

生き馬の目を抜く競争の業界の中で、当代随一の活躍をしたとしても、一流はおごることはない。プロとしてコンディションを整え、絶えず刃を研ぐのである。考えすぎるなというアドバイスは考えすぎている人へのものなので、むしろ考えていることの裏返しであろう。

━━その当時は、何か「表現」に関わるような活動はされていましたか?
茅野:私が表現の仕事をすると決めたのは、20歳を過ぎてからなんです。10代の頃は、エステやリラクゼーションといった美容系の仕事に興味がありました。さきほど少しお話したのですが、母が美容関係のお仕事をしていて、その母の姿が格好良く見えて、自分もああいう風になりたいという思いで取り組んでいました。高校生のときに、夜間に受講できるメイクやマッサージの講習に行ったりして、並行して勉強していましたね。


茅野さんは憧れや興味を抱いたら、既に高校生の段階で実践に移しているのだ。現実を見ろと親も言う。人も言う。そんな雑音に立ち向かい、憧れる夢を現実にしていけるかどうかは、自身の心の持ちようと努力に関わっている。思い描ける夢は、思い描け続ける限り実現できる可能性がある。齧る程度に声優を目指した私が証券会社の営業マンになったのも、ブライアン・トレーシーの本を読んで営業マンというものに漠然とした憧れがあったからだ。多かれ少なから内なる憧れは現実の人生に影響を与える。

━━最近、自分のお仕事の幅を広げるために参考にしている人はいますか?
茅野:最近は俳優の浅野忠信さんの絵にハマっていて、シュールな感じがすごく好きです(笑)。あと画家の方だと、ミヒャエル・ソーヴァさんですね。『アメリ』というフランス映画で注目されていて、いろんな絵を書いている人です。そういった方々の絵を見ながらも、普通に美術館に行ったりもします。誰かわからないけれども、ぼーっとしながら「いいなぁ」と思い、見ていますね。
━━それがお仕事に活かされたりするのでしょうか。
茅野:声優という仕事は最終的には自分の妄想で、想像でお芝居をするのであり、ある意味絶対に起こらないようなことが起こったりする世界で、それをいかにリアルに表現するかということで役立っていると思います。

それにしても、「声優という仕事は最終的には自分の妄想で、想像でお芝居をするのであり、ある意味絶対に起こらないようなことが起こったりする世界で、それをいかにリアルに表現するか」。これは難題だ。声優は声で何にだってなれる一方で、何にだってならければならないのである。

茅野愛衣さんが演じた役をざっと思い出すだけでもこのとおりだ。槍で戦うかいがいしくお絞りを持ってくる少女、ジュゲムジュゲムのような長々しい名前の公務員、女友達を思うあまりに主人公に理不尽な暴力と制裁ドS学級委員長、どMな女騎士、口下手世渡りベタで高校生をやり直す29歳、包容力のハンパない3姉妹の長女、情愛の沼でもがく小説家、DEATHを語尾にし大鎌で戦うだみ声少女……

得意の形を持って演技する人も個性ということでそれはそれで良いことだが、私が好きなのは技巧派の役者だ。表現の幅の広さはそれだけで単純に尊敬の念を抱かざるをえないし、いつだって演じるということは、やったこともない・言ったこともない・なったこともないことをすることだ。一度やって上手くいったことを再現するだけでも難しいのに、演じるということは常に前に踏み出すことなのだから、ただ驚嘆する他ないのである。

━━確かにいろんな経験をしないと自ら生み出すことは難しいですからね。
茅野:それはバイト1つにしても全てにつながってきますね。なので、好きなことを仕事の中で見つけて行けたら楽しいなと思っています。楽しいことを自分の仕事の中で見つけていければ苦にならないので、私はそれを大切にしています
喫茶店やカラオケ店など、バイト漬けだった経験が今の演技の糧に
━━先ほど高校ではダブルスクールをしていたという話があったと思うのですが、そういった勉強の学費とかはどうされていたんですか?
茅野:すごく素敵な天然石のアクセサリーを売っているお店が都内にあり、そこでアクセサリーをつくっていた方に「うちで働かない?」と言われて、バイトさせてもらうことになりました。実際に石のデザインとかも学ばせてもらったりもして、そのバイトがすごく楽しくて。
━━それが初めてのバイトですか?
茅野:それが初めてのバイトだったと思います。それとカラオケ店でもアルバイトをしていました。カラオケ店だったら先生は来ないだろうと思ってやっていましたね。あと喫茶店や和食料理屋さんでも働いたことがあります。
━━幅が広すぎて、どこから突っ込めばいいのかわからないですね(笑)。
茅野:アルバイトをする際に結構誘っていただくことが多かったんです。「うちでやらない?」みたいな話があったりすると、すぐに「是非!」となり、1週間に1回は顔を出すという形でやらせてもらっていたバイトが多かったです。日本酒を扱うお店では、私の好きな日本酒について学べましたし、喫茶店ではコーヒーの淹れ方も教えていただきました。あとはカラオケ店での経験は、大きい声を出すことに対してあまり抵抗がなくなりましたね。また働く場所によって、そこで働く方もお客さんも変わってくるので、それが面白かったですね。沢山の方たちとお話しができるので、いろいろな役を演じることが多く、何一つ無駄なことはなかったなと、いましみじみ感じています。

色んな仕事をして、色んな人に巡り合ったことが、間接的に役者としての仕事に役に立っているということだ。世の中には色んな人がいる。気の合う仲の良い人だけとつるんでいてはもったいない。私が証券会社の営業マンになったのは、様々な方に会いに行け、話ができることが魅力の一つだったからだ。「好きなことを仕事の中で見つけて行けたら楽しい」との言葉も、時には苦しい営業の現場の中でも、いつだって株の銘柄選びは楽しかったことが自分の今につながっている。

━━最後に、今も昔も若い世代の人たちの中で「夢がないからとりあえず就職」という状況が変わらずあるのですが、「こうやっていけばいいんだよ」というメッセージやアドバイスがあれば教えてください。
茅野:私は方向転換もありだと思っています。私自身がそうだったので。10代の時に「これだ!」と思っていても、20代になったらまた変わりますし、30代になったらまた変わると思うので、あまり自分に限界をつくらないでほしいなと思います。なので、やるだけやってみようという感じでやってみるのもアリだと思います。でも、1番近道なのは好きなことを見つけることだと思います。
━━どうやったら「好き」を見つけられますか?
茅野:まずやってみないと好きなことってわからないので、本当に興味あることは全部やってみたらいいと思います。私、昔どこかの大学でピンクの白衣を着て健康診断の受付を1日派遣でやったことがあります(笑)。最初はそんなところからでいいと思います。例えばクリスマスのケーキを売る仕事でもいいですし、1日やってみたら、そこで仲間や友達ができるかもしれない。そしてそこから広がってくることもたくさんあると思うので。また、もし外に出たくなく、家にいたいのであれば、その強い思いを用いて、家でできる仕事を探せばいいと思います。とりあえず、自分自身を柔軟にしてなんでも吸収できるスポンジみたいな気持ちで取り組めれば良いのではないでしょうか。

サントリーばりの「やってみなはれ」精神の一方で、「書を捨てよ町へ出よう」みたいな乱暴な言い回しもしないところが茅野愛衣さんの懐の深さを示している。テレビアニメから聞こえてくる声優さんの演技の裏には様々なチャレンジがあり、一歩一歩歩みを進めてきた人生がある。そうした積み重ね合っての演技だと思うと、何気ない台詞にも深みがあるように感じられよう。

声優 茅野愛衣インタビュー前編「”好き”をシゴトの中から見つけ、声優という枠を超えた可能性に挑んでいく」
声優 茅野愛衣インタビュー 後編「バイト漬けだった経験が、今の演技の糧に」

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