馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

藤井猛九段 銀河天帝即位を祝して-私と四間飛車-

去る9月28日に「2016年8月20日 銀河戦 広瀬章人八段 vs. 藤井猛九段」の一戦が銀河チャンネルにて公開され、我ら振り飛車党のアイドル藤井猛九段が全棋士参加のトーナメントを制した。かつて将棋界に旋風を巻き起こした藤井システムを後手番で連続採用した末の優勝とあってファン感涙の優勝と相成った。藤井猛九段は私に将棋を指す楽しみを教えてくれた棋士だ。特に身になった定跡書はほとんど藤井猛九段の本である。

幼稚園の頃、友達のお父さんから私は将棋を教わった。小学生の時は公民館の大会で将棋を指したり、学校でのクラブ活動で将棋を指していた。使っていた戦法は原始的な棒銀や中飛車、見よう見まね矢倉だったように思う。小学4年生のときに羽生善治7冠誕生とあって将棋ブームがあったような気がするが、小5になると地元の野球チームで入り将棋を指す機会がなくなった。中学は聖学院という中高一貫校に通い、中2の2学期まで通った。後の渡辺明竜王が2000年4月に15歳で四段昇段(プロデビュー)したころ、中2の春だったはずだが、渡辺明竜王と同じ学校に通っていたことについぞ気づかず、このことを知ったのは今年のことだ。

その後浪人時代に大宮の河合塾に通っていたときに、ある日ブックオフで大内延介九段の穴熊戦法 (現代将棋講座)という本を偶然見つけた。収録されている対局はいずれも熱戦で再び将棋を指してみたいなと思った。折しも将棋倶楽部24でいつでもインターネットで対局できる時代となっていた。その時に指しやすい戦法は何かないかと探してみると四間飛車が良さそうだと思い至って藤井猛九段の「四間飛車を指しこなす本」で学んだ。この本の良いところは盤にコマを並べずとも次の一手形式で考えながら定跡を身につけることができる点だ。かの大山康晴名人もこの四間飛車を得意としていた。現存最古の棋譜は四間飛車であり、とても歴史のある戦法だ。相手に左右されず右側では美濃囲いの堅陣に組み、左側ではカウンターを狙うこの作戦は初心者にとても向いていると思う。

好きな戦法はノーマル四間飛車とゴキゲン中飛車、石田流の三間飛車(普通の三間飛車は指せない)の私にとって、相手も振り飛車となると困ってしまう。ある意味居飛車穴熊より厄介かもしれない。この悩みを解決してくれたのも藤井猛九段の「相振り飛車を指しこなす本」シリーズだ。あまり定跡が体系化されていなかった相振り飛車について「相振り飛車を指しこなす本」シリーズでまとめた意義は実に大きい。また「角交換四間飛車を指しこなす本」は新鮮な感覚と新たな楽しみを与えてくれた。かつて竜王位を3連覇し将棋界を席巻した藤井システムは私が大学生のときはすでに研究が進み廃れつつあり、プロの間で四間飛車の採用率は落ちていた。しかし、この頃矢倉の将棋に参戦した藤井九段は藤井流早囲い(藤井矢倉)という新戦術を生み出した。さらには定跡を覆す角交換四間飛車という新戦法を大成させた。この戦法は先手・後手どちらでも用いる事ができ、、角交換を行うため角頭を狙われる心配が無い。しかも角交換の際に居飛車側に馬を同銀と取らせるのだから、居飛車側は手損無しに穴熊囲いには組めなくなる。仮に穴熊囲いに組んだとしても角を持ちあっているため駒が片寄る穴熊囲いに角打ちの隙ができやすく、美濃囲いでも互角以上の堅さで戦いになりやすい利点がある。藤井猛九段によって、四間飛車は藤井システムに加えて新たな武器を手に入れたのだ。

そういえば大学の入学式の日は将棋部のブースで将棋を指していたのを覚えている。そのまま将棋部に入っていたら妻と出会うことはなく結婚していなかっただろう。この度藤井猛九段が銀河戦決勝で対局した広瀬章人八段 は実は同学年だ。去年 羽生さんが精神崩壊させた若手棋士としてまとめブログを介して有名になってしまったのだが、20代でタイトルを取った若手棋士はこの10年間で渡辺明竜王、佐藤天彦新名人、広瀬章人八段の3人だけであり、れっきとした強豪棋士である。広瀬章人八段は四間飛車穴熊の使い手であり、穴熊の第一人者と言っても過言ではない。本局においても先手番で居飛車穴熊を採用し、藤井システムを受けて立つ構えだ。さすが当代一の穴熊の使い手広瀬八段は5五角から歩を取り美濃囲いの銀を吊り上げて形を乱すも、藤井九段は伝家の宝刀8五桂からの金銀一枚ずつの穴熊を半壊させ、二枚の馬を作り互いの駒をさばいた後、最後は持ち駒を打ち込み続けて鮮やかに広瀬玉を詰ませた。広瀬八段の攻めを躱した時藤井九段の玉は居玉の形になっていた。互いに鮮やかな差し回しの熱戦でありとても見ごたえのある一戦だった。。

先生から転じて「てんてー」とも「天帝(?)」ともネット界隈で呼ばれるようになるほど藤井九段は人気だ。さて、宇宙はビッグバン以来膨張し続けているのだそうだ。”銀河”というあまりにも広大すぎる称号は、将棋の新しい可能性を生み出し続ける藤井猛九段にこそまさにふさわしい。"銀河天帝”藤井猛九段と振り飛車の未来に乾杯!

棋譜:2016年8月20日 銀河戦 広瀬章人八段 vs. 藤井猛九段

四間飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋塾)
藤井 猛
河出書房新社
売り上げランキング: 10,424
四間飛車を指しこなす本〈2〉 (最強将棋塾)
藤井 猛
河出書房新社
売り上げランキング: 40,153

角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)
藤井 猛
浅川書房
売り上げランキング: 12,248

相振り飛車を指しこなす本〈2〉 (最強将棋21)
藤井 猛
浅川書房
売り上げランキング: 148,502