馬車郎の私邸

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藤井聡太六段と藤井システムをめぐる人間模様について

藤井聡太六段がプロになった2016年、藤井猛九段がかつて猛威を奮った藤井システムを連続採用し、9月に銀河戦優勝を果たしたのが、将棋を再び指し始めるきっかけになったのは以前書いたとおりだ。

藤井システムは将棋ファンなら誰もが知る戦法だが、藤井聡太六段ほどの知名度はなかろう。しかし、藤井システムを軸にして藤井聡太六段を観ると意外な人間模様が明らかになってくる。44

【羽生さんと藤井システム】
公式戦29連勝の偉業は世に知られているところだが、実は藤井聡太六段の非公式戦の初敗北は羽生さんの藤井システムであった(2017-03-26 羽生善治三冠 vs. 藤井聡太四段 第零期 獅子王戦 決勝戦)。

前述の藤井猛九段が銀河戦で勝ち進み、優勝に王手をかけた頃、羽生さんはタイトル戦で藤井システムを採用し(正確に言うならば、藤井システム模様の出だしから5五角型急戦か)、挑戦者の強豪・糸谷八段を返り討ちにした(2016-09-20 糸谷哲郎八段 vs. 羽生善治王座 第64期王座戦五番勝負 第2局)。

また、昨年末に藤井猛九段が新刊「四間飛車上達法」を出版するやいなや、今年の1月に四間飛車を2戦続けて採用するなど、藤井猛九段の動向には一目置いていると推察される。ちなみに、2人は誕生日は2日違い、結婚式は3日違いである。(2018-01-13 髙見泰地 五段 vs. 羽生善治 竜王 第11回朝日杯将棋オープン戦本戦2018-01-13 八代弥 六段 vs. 羽生善治 竜王 第11回朝日杯将棋オープン戦本戦

【師匠・杉本昌隆七段と藤井システム】
藤井システムの源流には当時の振り飛車党の工夫があり、藤井聡太六段の師匠である杉本昌隆七段も大いにわっている。居玉ではなかったが、美濃囲いは作った上で所定の位置(2八玉)までは王様を動かさず、居飛車の左美濃囲いや穴熊を攻撃する構想は振り飛車党に研究されていたのである。杉本昌隆七段は相対的に希少な相振り飛車の定跡本を数多く出版している点でも知られている。

【藤井システムデビュー戦の餌食となった井上九段の一門は藤井キラー(?)】
藤井システム誕生、一号局の犠牲となったのは井上慶太九段であった(1995-12-22 藤井猛 vs. 井上慶太 順位戦)が、実は藤井聡太六段は現在、その井上慶太九段門下生に連敗中である。
・vs.菅井竜也 七段(現:王位) 2017/8/4 第67期王将戦一次予選
・vs.稲葉陽 八段 2017/12/10放送 NHK杯
井上慶太九段自身もまた、3月に藤井聡太六段の連勝を16でストップさせた張本人である(2018-03-28 井上慶太 九段 vs. 藤井聡太 六段 第68期王将戦一次予選)。

以上で藤井システムを軸にして、藤井聡太六段を取り巻く人間模様を眺めてきた。藤井聡太六段はその圧倒的な強さと煌めく若さに加え、聡明かつ理知的な人柄で知られているが、いずれ"藤井"の名を関する新戦法、新手、新構想をも開発する日がきっと来るであろう。その日を楽しみにしている。


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