馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

証券アナリストたちや相場用語の古めかしくも印象的な表現について

リテール営業から転身した私の今の仕事はアナリストの見習いで、毎週締め切りを抱える生活だ。個人投資家向けの1枚ものの業界動向や個別銘柄レポートを執筆している。そうしたレポートを週次や月次のレポート集という形で編集して本(PDF)にし、全店・全部署に配信したりもする。また、営業店からの問い合わせに応じたり、個人投資家向けに株式セミナーを開き、場合によっては同行営業もするという業務もある。

したがって、精緻な分析をしてバリュエーションの観点からそろばんをはじいて、目標株価はいくらいくらだとか、買いだ売りだ中立だなんて書いたりはしないのである。では何をやっているかというと、機関投資家(プロの投資家)向けにガチな分析をするアナリスト集団は別にいて、彼ら彼女らの会議を聞いたり、レポートを読み解いて噛み砕き、営業店のお客様やセールスが飲み込めるようにしている。

そうした(ガチな)アナリストたちの表現で不思議ながらも味があるのは、
文語的な口語表現をどういうわけか使うところだ。
たとえば例を挙げると、「ここもとの(最近の)株価の動きは~」と言ってみたり、
反論を受け止めつつ「さはさりながら(それはそうなんですが)~」だとか、
状況について「芳しからずや(あんまりよくない)」と述べたり、
「ありやなしや(あるかどうか)といったところですね」等々。

これらの表現が一般的なものとは到底思えず、アナリスト個人の口癖ないし業界人特有の言い回しなのだろうとは思う。いったいなぜ今日びそう聞くことはない文語的な表現を、文章に書くならまだしも口語で使うのかはわからない。しかし、響きがやわらかい気がして意外なことに耳になじむ。

こうしたやや古風な表現は相場の動きを示す用語にも見られる。「底堅く推移」とか「~を好感した買い」「~を嫌気した売り」、「堅調な(or軟調な)業績見通し」「下げ渋る」「軒並み高」「三角持ち合い上っ放れ」「強含んだ」「餅つき相場」「鯨幕相場」などなど…

独特の味のある言葉遣いは業界用語ではあるものの、なんとなく素人でも意味が分かりやすい表現や大和言葉が多いのは、江戸時代に世界で最初に先物取引所が大阪にできたように、金融市場の歴史が意外と日本は長いからかもしれない。

外資系アナリストが本当に使っているファンダメンタル分析の手法と実例
松下 敏之 高田 裕
プチ・レトル (2017-07-04)
売り上げランキング: 131,497
超一流アナリストの技法
野﨑 浩成
日本実業出版社
売り上げランキング: 210,551