馬車郎の私邸

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小説MOTHER2の話題から、ブランジスタのアコギな商売を思い出し、そしてケインズの美人投票へ

友人がTwitterでオススメゲームに「MOTHER2」を挙げていた。以前書いたようにこのゲームは小説も面白い。「MOTHER2は、ドラクエ4・5・6のノベライズも手がけた久美沙織さんが書いた新潮文庫の小説版も絶品にして絶版」であり、「惜しむらくは誰かに貸したままで手元にないこと……」とレスポンスした。

MOTHER2―ギーグの逆襲 (新潮文庫)の値段たるや、アマゾンの中古品の最安値でさえ5556円であり(8/25現在)、プレミアムがついている。また、学生時代に度々図書館で借りていたゲオルク・オストロゴルスキー「ビザンツ帝国史」にいたっては71280円である(8/25現在)。この2冊の本の値段については、供給がないところに需要があるから、アマゾン市場においてこうした値段になっているわけである。商品・サービスの価格決定はまさしく需給による。

さて、友人はこの2冊のプレミア本に対して、「純金のプレート付けて15万円のセットを買わせようとする逆転裁判に比べりゃ可愛いものだよ」とコメントした。愛するシリーズの商法に暗に苦言を呈することで、"けなし愛"を示したように思われる。
記事:「逆転裁判」シリーズ6作品がセットになった「逆転裁判1~6 LIMITED EDITION」がイーカプコン限定で登場。純金プレートがセットになった15万円の超豪華限定版も

私は、昨年の4-6月あたりにブランジスタという企業があこぎな商売の発表により虚しい一相場を演じたことを思い出した。200万人/月×5000円課金/月=月商100億円、年商1200億円という恐るべき算盤勘定を当初目論んでおり、株式相場は材料視下が結局は徒花となったのだった。そこで「実物をつけたあたり、ステージの空気を詰めたと称する缶を景品にしたガチャ課金で、ファンの忠誠心を試す浅ましさに比べたら可愛いものよ」と答えた。

三菱マテリアルによると8/25日現在、金価格は4946円だから、純金のプレートの金7gは大体3万5千円ということになる。もちろんゲーム6作品もあるし、純金のプレートのおかげでいざとなれば損切りも可能だ。限定であることから、あわよくば転売を目的に購入する投機的な思惑も台頭するかもしれない。

転売、すなわち買ったものがより他の人が高く買ってくれると期待して買うことは、株式投資で言えば、現在の株価のトレンドが継続することを想定したモメンタム投資に似ている。言い換えると、株を買うというよりも、株価の値動きを買うやり方である。(そうしたやり方では、割り切ったチャート・テクニカル分析で機械的なロスカットを行うことがトータルで勝つ秘訣である。)

ブランジスタ旋風が吹き荒れた昨年の4-6月というと、円高を特に恐れる必要がなく、β値が低く日経平均との連動性が低いニトリやセリアを私は支店の株式担当として主に推奨していた。日経平均は4月末の日銀金融政策決定会合に向けて日銀追加緩和への思惑をを囃し立てて16000円割れから1ヶ月間で17600円まで駆け上がった後16000円まで戻し、6月24日にはブレクジット騒動で15000円割れと思いきや、17000円まで急反騰という、なんとも忙しい相場だった。

そうした中、株式市場はブランジスタの上述の悪どい商売すら囃し立て、ブランジスタの株価は15倍になったが元に戻った。株価が3分の1になったところで一度リバウンドしているのも興味深い。近江商人の格言「半値八掛け二割引はあながち間違いではないが、この種のリバウンドをしっかり売り抜けないとその後は塩漬けになりやすい。
ブランジスタ

では、その後の業績はどうなったのかというと16/9期営業利益は5億円と前期比約2億円増益となったものの、今期17年9月期の営業利益計画は0、純利益は赤字という顛末となった。顧客の忠誠心を試しすぎたと言えよう。まさしく絵に描いた餅だったわけだが、絵に描いた餅には値がつくこともあるのが株の面白さでもある。絵に描いた餅がおいしいのだろうと自分自身で推測することも、絵に描いた餅を他の人達が美味しいと思うと推測することも自由である。

週末の疲れた頭ではこの話にオチを付けることはできないので、ここで筆を置く。かの有名なケインズの美人投票の例えを引用することで締めさせていただこう。

「玄人筋の行う投資は、投票者が100枚の写真の中から、もっとも美しい6人を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができよう。この場合、各投票者は彼自身がもっとも美しいと思う容貌を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う容貌を選択しなければならず、しかも投票者のすべてが問題を同じ観点から眺めているのである。ここで問題なのは、自分の最善の判断に照らして真にもっとも美しい容貌を選ぶことでもなければ、いわんや平均的な意見が最も美しいと本当に考える容貌を選ぶことでもないのである。」(ケインズ「雇用、利子および貨幣の一般理論」第4編12章)

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