馬車郎の私邸

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「モンテ・クリスト伯」第2巻、アレクサンドル・デュマ、岩波文庫

第1巻の冒頭で、マルセイユの船乗り、主人公エドモン・ダンテスは幸せの絶頂で逮捕される。そしてシャトー・ディフの牢獄に収容されたまま数年が過ぎ、1巻の終盤ではファリア司祭との運命的な出会いを果たす。これはそのまま読者にとっても、僥倖というものだ。絶望の中の小さな希望に出会えた気分になる。

司祭は常々「牢獄から出してくれたら自分の莫大な財産から多額の礼金を支払う」と言っていた。そのため、獄吏からは狂人と思われていた。ところがなんと、ファリア司祭は大賢人であり、エドモンから話を聞くといったい誰に陥れられたのか正確に推測するほど。しかも、万巻の書から得たあらゆる英知を、エドモンに伝える。さらには、例の財宝も本当だった!

エドモンはファリア司祭の死を乗り越え、彼の死体と入れ替わって脱獄に成功。実に投獄から14年の歳月が過ぎ去っていた。この脱出劇の下りは、これまでの監獄の描写の蓄積で、読むと得も言われぬ解放感がある。すっかり自分も脱獄した気分だ!

だが、この物語の真の始まりはここからである。満を持して、モンテ・クリスト島の財宝を手に入れたエドモン・ダンテス。さて、彼を陥れたやつらはどうなっているだろうか?エドモンならずとも、読者としても大いに気になるところだ。

1巻の冒頭で、エドモンを陥れたのは、経理係のダングラールと恋敵フェルナンの共謀、同僚のカドルッスの傍観、検事のヴィルフォールの保身であった。

エドモンは司祭の姿に変装して、エドモンの遺言と遺産を届ける名目で、小さな宿を営むカドルッスのもとを訪れて事件後のことを聞き出す。父親は、貧しさの中に餓死。釈放を嘆願してくれた雇い主(船主)のモレルさんは苦境に立たされている。

しかしその一方で、恋敵フェルナンは武功をあげ今や伯爵!そのうえエドモンと結婚するはずだった婚約者のメルセデスをも手に入れている。ダングラールは投機に成功して大富豪の男爵に。ヴィルフォールは検事総長に立身出世を遂げている。

なんてこった!自分を陥れた奴らは、ことごとく栄達しわが世の春を謳歌している。ここから、第7巻まで周到で慎重かつそれでいて壮大な復讐劇が続く。復讐といっても単に刺し殺すとかいうわけではないのだ。

そして最初にやったことも復讐ではなかった。エドモンはあの莫大な財宝を、倒産寸前のモレル一家を救うために使う。とても粋なやり方で救済する様はとても清々しい。モレル氏の息子マクシミリヤン・モレルはこの後も主要人物として随所に登場する。

ついに、表題のモンテ・クリスト伯爵の登場だ。フランツ・デピネーとその友人でフェルナンの息子アルベールに接近し、伯爵はアルベールの危機を救う。(といってもこれは意図的なものだが)こうしてアルベールと懇意になり、パリの社交界に進出するのは第3巻から。モンテ・クリスト伯こと、エドモン・ダンテスの復讐物語は、まだ始まったばかりである。にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
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