思えば、昨今人気のライトノベルの主人公は、家事ができる男だ。「とある魔術の禁書目録」の主人公上条当麻は親と離れ、寮暮らしであり、大食いニートシスターであるインデックスを養っている。「とらドラ!」の主人公、高須竜児は母子家庭に生まれ育ち家事が得意である。ラブレターを奪還せんと木刀をひっさげて闖入した逢坂大河にチャーハンをふるまって以来、彼は親に捨てられたも同然の境遇の大河と朝夕ちゃぶ台を囲み、学校にはおそろいの弁当を持っていく。いまや、物語の中のヒーローでさえも、特性として、美系であるとか、強いことよりも、現実的な生活力を持っていることが求められている(?)
本書は、日垣隆さんのエッセー集である。その観察眼を持って、社会の様々な事象を斬るのだが、とはいえそれはどれも、健全かつ現実的な提案である。冒頭で「目の前の不都合や理不尽は社会問題として人のせいに棚上げするのではなく、我が身に降りかかった今すぐに取り払うべき問題として一つずつ解決していこうではありませんか。」と直截に述べる。気取らず率直に語る言葉一つ一つが、日々マスメディアが騒ぎ立てる社会問題に関するニュースに目をくらまされている我々に様々な気づきを与えてくれる。
この1冊から得られる知見は、ランチ1食分を節約する以上の価値がある。危機感を抱いたり、憂鬱に沈む現代人は、今月真っ先に読むべき新書だ。
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手作り弁当を食べてる場合ですよ 格差社会を生き抜く処方箋 (角川oneテーマ21 A 119)
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日垣 隆
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格差を乗り越える