馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

「手作り弁当を食べてる場合ですよ」日垣隆、角川oneテーマ21

手作り弁当を食べてる場合である。外食をするサラリーマンは、昼食代だけでなく、外に出て店で料理が出てくる時間さえも無駄にしている。手作りの弁当を持っていけば、お金ばかりか時間も節約できるのだ。このような日常にできることをやることが、どうにもならない世の中のあれこれを嘆くことよりも、真っ先にすべきことである。

思えば、昨今人気のライトノベルの主人公は、家事ができる男だ。「とある魔術の禁書目録」の主人公上条当麻は親と離れ、寮暮らしであり、大食いニートシスターであるインデックスを養っている。「とらドラ!」の主人公、高須竜児は母子家庭に生まれ育ち家事が得意である。ラブレターを奪還せんと木刀をひっさげて闖入した逢坂大河にチャーハンをふるまって以来、彼は親に捨てられたも同然の境遇の大河と朝夕ちゃぶ台を囲み、学校にはおそろいの弁当を持っていく。いまや、物語の中のヒーローでさえも、特性として、美系であるとか、強いことよりも、現実的な生活力を持っていることが求められている(?)

本書は、日垣隆さんのエッセー集である。その観察眼を持って、社会の様々な事象を斬るのだが、とはいえそれはどれも、健全かつ現実的な提案である。冒頭で「目の前の不都合や理不尽は社会問題として人のせいに棚上げするのではなく、我が身に降りかかった今すぐに取り払うべき問題として一つずつ解決していこうではありませんか。」と直截に述べる。気取らず率直に語る言葉一つ一つが、日々マスメディアが騒ぎ立てる社会問題に関するニュースに目をくらまされている我々に様々な気づきを与えてくれる。

この1冊から得られる知見は、ランチ1食分を節約する以上の価値がある。危機感を抱いたり、憂鬱に沈む現代人は、今月真っ先に読むべき新書だ。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村
手作り弁当を食べてる場合ですよ  格差社会を生き抜く処方箋 (角川oneテーマ21 A 119)
日垣 隆
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 449
おすすめ度の平均: 5.0
5 格差を乗り越える