馬車郎の私邸

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「出会えて良かった」菅原祥子(as虹野沙希):きらめく恋の現在と、未来の家庭における夫婦の穏やかな愛情【名曲紹介67】

 プロとして歌うのは高度な技能が必要だが、キャラクターとして歌うのは更に高度な技能と特色ある個性を要する。歌を作るだけではなく、キャラクターのイメージソングを作る必要があるからだ。菅原祥子(敬称略、以下同)が虹野沙希として歌う一連のキャラソンは、まさにキャラクターが歌っている感が最も強い点で素晴らしい。

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虹野沙希といえば、「ときめきメモリアル」においてトップクラスの人気を誇り、王道ヒロインのキャラクターといえる。野球部もしくはサッカー部のマネージャーをしており、口癖は「根性よ!」。面倒見がよく、一生懸命な人を応援することが大好きな性格。趣味は料理で、家庭的な一面も持っている。まさに「運動部のアイドル」的な存在だ。全てのステータス・パラメータを鍛えまくらないと振り向いてくれない疎遠な幼馴染・藤崎詩織よりも、最初にプレイした際には、虹野沙希に惹かれる人は多かったのではないか(もちろん、振り向いてもらうには、運動・根性・容姿のパラメータが相応に必要だが)。爆弾が発生していない限りおおむね下校を断らない優しさと、マネージャーとしての健気な献身に加えて、"糸屋の娘は目で殺す"ウィンクに心を射止められたとしても何も不思議はない(まばたきがウィンクになったのは製作上の苦肉の策)。
今日紹介する「出会えて良かった」は、虹野沙希をフィーチャーした番外編『ときめきメモリアルドラマシリーズvol.1虹色の青春』のエンディング・テーマソングである。エンディングへの入り方が実に良く、余韻に浸れる名曲だ。
ちなみにこのドラマシリーズ、製作総指揮はなんと「メタルギアソリッド」の小島秀夫氏だ。シナリオもさることながら、「虹色の青春」本編におけるサッカーの自主練は、当時はやっていたテレビ番組を彷彿とさせるような、フリーキックのストラックアウトのミニゲームで、とても楽しい。

「出会えて良かった(良かった、は漢字だ。ひらがなだと鈴木雅之の曲になる)」は8cmシングルで、虹野沙希名義のもと、1997年7月24日に発売された。アルバム「over the rainbow」、菅原祥子ソロアルバム「Sati's-faction」にも再収録されており、まさしく"両人"を代表する楽曲であると言えよう。

菅原祥子さんといえば、陽性の賑やかな声に特色がある。勝田声優学院出身だが、高木渉が代表を務める劇団あかぺら倶楽部など舞台活動や、ラジオ方面にどちらかといえば軸足をおいていたようだ。初代のときメモのキャストは、アニメの声優を本職としている人は少ない。
「出会えて良かった」のイントロはキラキラした鐘/トライアングルのような音から始まり、さらにそこから盛り上がる2段構えとなっている。歌自体は比較的平板な調子であるにもかかわらず、メロディーと歌声は実に華やかできらめいている。Bメロの「キラキラ輝く空気の粒」という一節そのままだ。 ドラムスも堅実で脇を締めており、言葉が途切れる部分の伴奏で笛のような音も良い味を出している。

歌詞は、両思いになった高校生の等身大の歌詞で微笑ましくもあり、一方で虹野沙希という人物の等身大の歌詞でもある。ラストサビ「いつかときめきが形を変えてもね  出会えて良かった 今あなたに」の一節は、虹野さんの家庭的な側面をうまく表現していて、今現在聞き直してみると印象深い。そう、付き合っていた頃の燃えるような恋はいずれ、夫婦の穏やかなる愛情へと変わりゆく。若かりし日の交際中の思い出は、文字通りのときめきメモリアルと化すのだ。「出会えて良かった」ことを噛み締めながら歌うなかで、結婚して家庭を作る未来を予期しているところが、虹野さんらしく感じられる。まさにキャラソンであり、イメージソングの集大成である。

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