馬車郎の私邸

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高木三四郎ノア新社長・杉浦貴選手も受けたアブレーション・カテーテル治療から見る日本の優良精密機器企業

DDT創業者・社長にしてNOAH新社長の高木三四郎大社長の手術が無事に終わったようだ。一文で3回も社長と言ってしまったが、ひとまず快癒に向かいそうで何よりだ。



なお奇遇なことに丸藤正道副社長も同じタイミングで入院しており、膝の手術を行った。復帰予定が早すぎるように思えるが、ひとまずマネジメントの観点から二人の健康状態が改善に向かうのは非常に喜ばしいことだ。



さらに、この社長・副社長の入院中に、武田執行役員が2人のツイートを捉えて、2月24日(月=祝)のDDTプロレス、プロレスリング・ノアの名古屋大会にてコラボ企画を決定した。サイバーエージェント・グループ入りする前に大会が組まれていたためバッティングしてたまたま同日になっていたのだが、早速の息のあった連携を見せてくれた。うん、ノアでらスゴイ。



さて、高木大社長が受けた心房細動不整脈)のアブレーション手術は、杉浦貴選手も2017年に同様の手術を受けている。(記者会見で最初に不整脈と言われた時が2011年とあり、GHC王座の長期防衛時期と重なっていることにも驚いたが…)。その後の活躍ぶりたるや、ノアファンには説明不要だろう。
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そもそも、厚生労働省によると日本人の死因は1位のがんについで、2位3位はいずれも血管に関わる疾患である。(悪性新生物<腫瘍>218605人、心疾患 98027人、脳血管疾患 52385 人 、肺炎 52149人、老衰 28201 人)。医療機器大手のテルモは、心不全への対応は喫緊の社会的課題として警戒を強めている。心房細動(不整脈)、心筋梗塞、弁膜症、心筋症は最終的に心不全へと至り、患者は増悪を繰返す。患者増、 医療費増大、病床不足等で医療体制が疲弊する「心不全パンデミック」の恐れにもつながると指摘している(画像はクリックすると大きくなります)。SnapCrab_NoName_2020-2-5_21-37-5_No-00

アブレーション・カテーテル治療は心房細動不整脈)に対して定評がある。日本循環器学会のデータによると手術件数は右肩上がりで増加している。アブレーション(ablation)とは耳慣れない言葉だ国立循環器病研究センター不整脈ドットコムによると、「取り除くこと、切除すること」という意味だそうだ。医学的にはカテーテルの先から高周波電流を流して接している細胞を小さく焼き切ることを指す。

以前は手術で胸を開き、直接心臓を手術して異常な部分を除去していた。しかし、胸を開き、人工心肺を用いて心臓を一時的に止める大手術になるため、患者の受ける負担はとても大きい。そこで胸を切らなくてもよい、アブレーション治療というものが開発された。1982年にアメリカで初めて実際の治療に用いられ、日本でも1994年から保険適応となり、その後急速に普及が進んだ。
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カテーテル・アブレーション治療は、カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となる電気回路を遮断する治療法だ。薬物治療は不整脈の症状を抑えることを目的であるのに対し、カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す。主に足の付け根にある太い血管(大腿静脈ないし大腿動脈)から入れ、そのカテーテルの先をレントゲン撮影で透視しながら心臓まで到達。カテーテルの先には心電図を計測するための電極がついており、心臓の内壁に接触させながら心電図を計測し、心臓の異常な部分を示す”地図(マップ)”をつくる。その後、異常な部分にカテーテルの先の電極から高周波電流を流し、カテーテルの先に触れているわずかな領域の心臓組織だけが電気的に焼かれて、細胞は死滅する。1回の焼灼あたり、電流を流す時間は1分以内、焼灼範囲は直径、深さとも5mm程度とのことだ。
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焼き切るなんて熱くなりすぎるのでは?と思われるかもしれない。だが、カテーテルの先には温度センサーがついていて、高温になり過ぎる前に電流を遮断するので、必要のない部分まで焼いてしまうことはないのだそうだ。近年ではさらなる技術の進化により、心臓の電位情報(心内心電図)やカテーテルの位置情報をリアルタイムに表示する3D マッピング装置や、生理食塩水でカテーテルの先端を冷却しながら治療を行うイリゲーションカテーテル、カテーテル先端に冷却剤を注入して組織を凍結させる冷凍アブレーションカテーテル(ツイートからすると高木大社長はこの手術だ)などが登場し、治療の安全性と有効性の向上に貢献している。
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こうした医術の進化を支えているのは日本の精密機器メーカーである。精密機器といえば、かつてはキヤノン、ニコン、リコー、コニカミノルタといったカメラやコピー機などの企業を思い浮かべるが、実際には医療機器分野で活躍している元気な企業が多い。テルモ朝日インテック日本ライフラインなどがこうした手術で用いられるカテーテル、ガイドワイヤー、ステントなどを扱い、高いシェアを誇る。不透明な環境下においても安定した収益を確保している。テルモと朝日インテックの株価はこの5年間、右肩上がりの上昇だ。なお、日本ライフラインはかなり上下動が激しい。SnapCrab_NoName_2020-2-5_17-58-23_No-00

さて、丸藤副社長は「膝にオリハルコンを仕込んだw」と草を生やして不穏な冗談を飛ばしているが、実際にはこれは「虎王(二段式の飛び膝蹴り)」を警戒させるための牽制かもしれない。何か新技の構想




SnapCrab_NoName_2020-2-5_20-29-37_No-00このツイートで出てくる内視鏡も日本企業3社でほぼ独占している。すなわち、オリンパスHOYA富士フイルムの3社だ。

オリンパスは内視鏡で圧倒的な1位を占める。最近では、「物言う株主」米バリューアクト・キャピタルの関係者2人を社外取締役として迎え入れ、ガバナンス改善に対する期待が高まっている。23年3月期に連結売上高営業利益率20%という野心的な目標を掲げており、株式市場の関心は高い。

HOYAは東京・保谷(ほうや)で創業。当初はクリスタルガラス食器を手掛けていたが、その光学技術を生かして、多様な事業に進出。「小さな池で一番大きな魚(トップシェア)になる」戦略のもと、内視鏡のみならず、メガネレンズ、コンタクトレンズ(「アイシティ」)、半導体製造に用いられるマスクブランクス、HDD(ハードディスク)用ガラス基板など収益性の高い高シェアな製品を多数擁する。SnapCrab_NoName_2020-2-5_22-32-10_No-00
富士フイルムは、写真フィルムから大きく業態転換した企業だ。インスタントカメラ"チェキ”、複合機・プリンター、内視鏡に加え、医薬品・再生医療、化粧品・サプリメントなどヘルスケア領域、ディスプレイやタッチパネルの材料、半導体や材料、機能性フィルムなど産業領域にも業容を広げている。

なんにせよ、高木新社長と丸藤副社長の今後の快癒を心よりお祈りしたい。今回、医療分野の企業群を紹介したのは投資をお勧めする意図ではなく、高い技術力やブランド力を活かしつつ、多様な困難に直面しながらも機敏に対処し、成長している企業があるという事実をこの機に紹介したかったからだ。日本もまだ捨てたもんじゃない。サイバーエージェントの概況記者会見後の動きについてやや冷静に書いたが、NOAHとDDTはコンテンツとしてのプロレスを盛り上げ、経営面でのさらなるステップアップを果たすと期待している。