ボーカルの春奈るなと言うと、ソードアート・オンラインⅡのエンディングテーマの印象があったのだが、この曲は学園ドラマにぴったりの非常にポップでキュートな曲で、普段より声のトーンが高めになっているとのことだ。
明るいトーンが全般にある曲だが、サビ前のBメロでブレーキを効かせている点がなんとも絶品でもある。サビを盛り上げるためには一般的な手法なのだが、この曲の場合特に効果てきめんだ。歌詞で言えば「一人ぼっちだと思うときもある 涙止められない日もある」の部分で、滑らかなスラーの発声が実にくせになる。
映像もユニークだ。監督の亀井幹太氏はタイツに並々ならぬこだわりを持っていると言う。この度の劇場版の制作インタビューでは、「シリアス展開多くてフェチなアングル入れられねぇ。めんどくさい加藤恵をイラつかずに絵コンテを切る」とさえ述べていたほどだ。さすがの執着ぶりである。但し、一緒に鑑賞した妻によると、劇場版はややタイツの描写が物足りなかったとのことだ。
さて、1期OP「君色シグナル」の話に移ろう。「冴えない彼女の育てかた」の映像化で厄介な点は極端に登場人物が少ない点だ。場面のバリエーションもかなり少ない。かなり長い時間話が同じ部屋の中で進んでいく話も本編にはあるくらいだ。
そうした難点は映像化にあたり、かえって様々な工夫を生んだのかもしれない。亀井監督自らが絵コンテを切るOP映像は、着地するヒロインたちの足から始まり、作品の鍵となるシーンの象徴である坂道をバックにタイトルがバーンと映る。ここまでがイントロだ。
Aメロは都電荒川線の踏切を、主人公とヒロインたちが渡っていく様子が描かれる(雑司が谷のあたりだろうか?)。横顔が主体で顔はあまりまだ見えない。その後は、教室や視聴覚室など学校の風景で、ヒロインが代わる代わる映るようになる…のだが、ことごとくローアングルからで上に上がっていき顎のあたりまで来ると次のヒロインに行ってしまう!焦らしてくるのである。
サビ前で帽子が風に飛ばされ、ヒロインたちが上を見上げるカットが続々入るが、ここでも顔はちゃんと見えない。振り返る主人公安芸倫也(c.v.松岡禎丞)で顔ががっちり見える人物がやっと一人(笑)
サビでは、それぞれのヒロインがその技能を見せつけていく。澤村スペンサー英梨々がまたたく間に人物の顔を描けば、霞ヶ丘詩羽が高速タッチタイピング、氷堂美智留がギターの演奏といった具合だ。英梨々と倫也のタッグワーク、すなわち描き上げた原稿のスキャナ受け渡しで画面が左右に往復する一幕がなんとも愉快な一方、こっそり左側にはちゃんと恵が写っているのも面白い。
春奈るなのボーカルが素晴らしい一方、加藤恵を演じる安野希世乃版も注目に値する。ふわりとした清涼感のある歌声がなんとも耳に心地良く、春風が耳を撫でていくかのようだ。美しい曲は異なるバージョンで聞いても2度美味しいのである。
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