馬車郎の私邸

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名曲紹介21:エンディングアニメーションとプロの仕事の極致!:ノーゲーム・ノーライフED「オラシオン」茅野愛衣as白

オラシオンフレイムといえば、新日本プロレスで活躍した井上亘選手の得意技だが、今日9月13日は茅野愛衣さんの誕生日を祝賀して、ノーゲーム・ノーライフED「オラシオン」を紹介しよう。結論を先取りすると、これはまさにエンディングアニメーションの極致とさえ言える名曲だ。
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オラシオン」はスペイン語で"祈り"の意だ。タイトルは主人公である空への想いと、原作小説と挿絵双方を手掛ける榎宮祐の出身地であるブラジルを引っ掛けて付けられた(厳密に言えばブラジルはポルトガル語だ、トルデシリャス条約を思い出そう)そうだ。作家と歌い手の目線から「オラシオン」について語る、ナスカ・茅野愛衣インタビュー!を読むと、歌詞もさることながら、あらゆる点を試行錯誤して、アニメ版のエンディングテーマににふさわしく仕上げたようである。インタビューを一部抜粋してみよう。No Game No Life ED _ Ending.mp4_000052833No Game No Life ED _ Ending.mp4_000056833No Game No Life ED _ Ending.mp4_000062625No Game No Life ED _ Ending.mp4_000065041
――白と疾走感というのが、意外な取り合わせな気がします。
だいし君 曲を作っているときはまだ白を茅野(愛衣)さんが演じるということは知らなくて、ぽつぽつしゃべるキャラクターくらいの印象でした。曲をコンペに提出したときは違うメロディでしたが、(コンペで)選んでいただいてから、テレビサイズを作るにあたり茅野さんの資料をいただいて、声を聴いて、シナリオや原作のもと詰めていき、Aメロを茅野さん用にチューニングしました。
山内 Aメロだけぽつぽつとしゃべるようなかたちになっています。


入念なすり合わせのもと、作品性とキャラクターに寄り添ったエンディングテーマになるよう調整されている。タイアップと、はかくあるべきだ。Aメロは独白のようにぽそぽそと呟く独特な歌い方になっており、後々の疾走感や盛り上がりにつながるような下準備になっている。
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だいし君 榎宮先生の描く空と白にどれだけ近づけるか、おこがましい言い方かもしれませんが、キャラクターは作者の思惑を離れて動き出すことがあるとよく伺うので、僕の考えた榎宮先生の描くふたりに寄り添って書けばいいと思っていて……相当アブナイですよね(笑)。先生に二度ほどお会いすることがあって、そのたびに想いをお伝えしたんですが、二度とも苦笑いされていまして(笑)。
山内 「僕と榎宮先生がひとつになれた気がします」って言ってたので、相当気持ち悪い人だと思われていると思います。

――音作りでイメージされたものはありますか。
山内 最初にどういうサウンドで作ろうかと考えたときに、4ピース(ドラム、ベース、ギター、ボーカル)にしようと話していて、ストリングスとかはいらないかなと思ったんですけど、なにか「希望」的な音が欲しかったので鐘の音を入れました。それぐらいで、基本的にあまり音は入れたくなかったんです。


原作者とひとつになれた気がします!発言が飛び出すほどの納得の出来栄えとは、実に頼もしい。突然担当マネージャーからアニメのタイアップが決まったので、3日で曲を書けと言われ、どんな作品かもまともに教えてもらえなかったため、曲のテーマは唯一メンバー全員が知っていたアニメ作品『キャンディ・キャンディ』になってしまったという某作品のOPとは対極だ(良い曲ではあるが)。

一方、茅野愛衣さんはインタビューで、以下のように語っている。
――「オラシオン」は白のキャラクター・ソングですが、歌われるにあたって気を付けられたところはありますか。
茅野 どうやって歌おうか本当に悩みました。声を大きく出すキャラクターではないのですが、あまり声を出さないと言葉や気持ちが伝わらないと思うので、そのバランスみたいなものはアドバイスをいただきながら歌いました。それと声を重ねています。Aメロは普通に歌っているところにささやき声を被せていますが、録音したあとの料理はお任せします、という感じでした。
――全体的にロックテイストですよね。
茅野 そうなんですよ。最初いただいたときに白でどう歌うか想像がつかなくて、出来上がりを聴かせていただいたら、ちゃんと白になっていました。つぶやきとかを上手く組み合わせていただいて、ありがたいと思いましたね。
――サビは結構声を張っていますよね。
茅野 本編のチェスの時に結構声を出していて、そのくらいの掛け感で歌いましょうというふうになりました。

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キャラクターの声で歌うというのはかくも難しい。キャラクターのイメージ、作品のイメージ、楽曲制作者や制作スタッフのイメージを統合し、1つの歌として練り上げるのだ。そうした芸術作品が商品として1200円程度のCDや、250円の単品ダウンロードで買うことが出来るなんて、あまりにも安すぎると思わないだろうか。

「オラシオン」は実に繊細な曲だ。ギターの伴奏も裏で絶妙な一方、曲の調子はじわりじわりと浮き上がるように、高まっていく。徐々に、徐々に盛り上がっていくように歌うのはなかなか至難の業だ、まさに"空"を感じさせる。アニメーションも出色の出来で、榎宮塗りの虹色を織り交ぜた独特の色合いで幻想的に描かれた光景のなか、二人の兄妹の関係性が示唆されている。大半は一枚絵なのだが(エンディングアニメーションはそれで良い)、時折堰を切ったように動き出すので、静と動のメリハリが効いていて素晴らしい。

まさに、これは制作スタッフと茅野さんのプロの仕事の結晶なのだ。同年代ということもあり、そんな茅野さんのプロの仕事を、私は様々な作品、歌、ラジオなどで楽しませてもらっている。昨日書いたように、茅野さんの技巧を聞くために、その出演予定を次見るアニメを決める際の重要な指針にさえしているくらいだ。「今をときめく声優・茅野愛衣さんに学ぶプロフェッショナルの心構え」で書いたように、茅野さんの仕事に対する姿勢を私は惜しみなく称賛する。また別の曲をこの名曲紹介エッセイのコラムで紹介することもあろう。とりあえず、明日の「このすば」劇場版の舞台挨拶が楽しみだ。
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