馬車郎の私邸

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"頭部への蹴り"について

この2年くらいだろうか。NOAHの試合を見ていて気づいたことがある。それは明らかに頭部への蹴りが増えたことだ。

たとえば、2009年12月のGHCタッグ。森嶋・佐々木組が当然勝つだろうと思っていたら、突然ヨネが森嶋の後頭部を連続で蹴り始め勝ってしまった。チャンピオンチームが優勢だっただけに、場内はあっけに取られた感じになった。
力皇 猛&○モハメド ヨネ
(26分40秒 後頭部への廻し蹴り → 片エビ固め)
佐々木健介&×森嶋 猛

そういえばKENTAも、試合後半には「側頭部への蹴り3連発」を繰り出すことが多い。今更だが、もはや定番ムーブとして"見慣れてしまっている"ことが恐ろしい。

現在のGHCチャンピオン杉浦貴も、粘る潮崎や森嶋などに対して、顔面や後頭部にヒザ蹴りを何発か入れてから、フィニッシュにつなげていることがある。そもそも、杉浦や秋山(あと髙山もか)については、ゼロ距離、あるいは走りこんでヒザを顔面にぶち込むことが多い。したがって、昨年のグローバル・リーグ戦とGHCタイトルマッチでこの2人が直接対決したときは、当然通常の打撃戦に加えて、顔面への膝蹴りのぶち込み合いという壮絶な戦いになるのは必至であった。しかもこの2人はスープレックスも得意なため杉浦はオリンピック予選スラム、秋山はエクスプロイダー、双方共通の技としてジャーマン・スープレックスも尋常ではない数が乱れ飛ぶことになった。

ところで新日本プロレスでは中邑真輔が「ボマイェ」と名付けた顔面へのヒザ蹴りを、ランドスライドに代わる絶対的なフィニッシュホールドにしている。ボマイェはこの技が出たら終わりという一応の共通認識になっているが(執筆当時。その後は複数発繰り出すようになった)、それに対してNOAHでは渾身のヒザ蹴りが一発程度出たのでは、試合は終わらない。これは恐ろしいことではなかろうか。

さて、これまでに述べた"頭部への蹴り"は、実を言うと、基本的にはだが、フィニッシュには成り得ない。この種の攻撃で、群を抜いてフィニッシュ率が高いのは佐野の「顔面へのローリングソバット」だ。2010年1月のグローバルタッグ・リーグでは、この「顔面へのローリングソバット」が猛威をふるい、髙山・佐野組の全勝優勝につながった。その後、警戒されて避けられる頻度は高くなったように思われるものの、戦慄の顔面ソバットは今だ健在。先週のグローバル・タッグリーグ2011最終戦においても、佐野の顔面ソバット→髙山の顔面ニー→佐野の顔面ソバット→佐野のノーザンライト・ボムという"最凶コンボ"で、さしもの森嶋も轟沈した。

以上のように、顔面や側頭部、後頭部へ蹴りが横行しているのが最近のNOAHの潮流である。この点についてどう考えたら良いだろうか。第一感は、"エグい"とか"危険すぎる"といったものだろう。下記のアンサイクロペディアにおけるNOAHの記述は、本来は揶揄のはずなのだが、当たらずとも遠からずと言えはしまいか。
全日本プロレスのモットーは「明るく、激しく、楽しいプロレス」に対しプロレスリングNOAHは「危なく、激しく、厳しいプロレス」である。どうやら、激しくだけは外せないようだ。そこからノアだけはガチと呼ばれるようになってしまった。

そもそもNOAHでは、投げ技の類について、危険な角度、垂直落下式、リストクラッチで放つのは横行している。「危なく、激しく、厳しい」のは投げ技だけではなく、打撃技の類にも及ぶのは必然の流れだったのかもしれない。

この源流はどこから来たのかといえば、もちろん四天王プロレスと、そして三沢光晴その人であろう。首のみならず満身創痍だった三沢光晴が、晩年のフィニッシュホールドにしていたのは、"後頭部へのエルボーバット”であった。このなりふり構わないエゲツなさを、蹴りという形で受け継いだのが今のNOAHのヘビー級戦士のように思える。さて、この件についてプロレスファン諸兄はどのように思われるだろうか?