20周年記事、「勇気の神様」、「笑顔の決心」と来た。今日紹介するのは、メインヒロイン陽ノ下光の親友水無月琴子のキャラクターソング「春のゆき」だ。徳永英明、石川さゆりの「春の雪」とはまた違った魅力がある。
水無月琴子という重層的なキャラクターについての概略は、嫁がどてらをプレゼントしてくれた件で書いたとおりだ。詳述を避けるため、メインヒロインの親友という立ち位置について、少し引用してみよう。
③メインヒロインの親友という属性は、三角関係という苦い味わいをこのゲームに添える。水無月さんは最初は主人公と陽ノ下光との仲をとりもとうとしており、品定めのような気持ちで近づいてきている。しかし次第に主人公と仲良くなり惹かれていくと、親友である光を応援したいという想いと、自らの気持ちとの間で板挟みとなり葛藤するようになる。水無月さんの存在はときメモ2をラブストーリーたらしめる大切な要素である。
そういうわけで、古くは「星の瞳のシルエット」、最近では「ニセコイ」など、友人の好きな人を好きになってしまう構図にはまり込むのは、少女漫画やラブコメにはつきものだ。「ときメモ」は展開がプレイのたびに当然ながら異なるため、ルートの一本道とは違って、関係の変化が幾重にも描けるのは面白い点だ。つまり、たとえば主人公にとって友達の友達なのか、かけがえのない人になるのかで、水無月琴子というキャラクターが見せる奥行きは全く変わるのである。
「ときメモ2」のキャラクターソングの優れた点は、主力キャラクターは概ね7つの歌が与えられているために、ゲーム内におけるストーリーがしっかり表現できている点である。つなぎ合わせれば一つのコンセプトアルバムが出来上がってしまう。こうして、キャラクターのイメージに重層性と深み、味わいが付与されるのである。
水無月琴子の7つのキャラクターソングはその好例なので、各曲の簡単な要約とともに見ていこう。
・「春のゆき」
親友と同じ人を好きになってしまった悲哀を、そっと降る春の雪になぞらえて。
・「見えない小石」
人間関係という池に、心に抱く見えない小石を投じて波紋を起こしてしまったら……。
・「風のてがみ」
ひとりごちたこの思いを、風の手紙に託す。
・「好きと云えなくて」
好きと云えない私の曇る笑顔があなたに見えていますか……？
・「たったひとつ」
たったひとつついた嘘に眠れなくなる夜。
・「夕顔憧歌」
星にかかる虹のように最初は見えなかった恋心を認め、
たおやかな夕顔の花の夏のまなざしにふと憧れる。
・「透明な心」
凛と佇むあやめのごとく今、曇りも迷いも消え、透明な心に！
こうした具合で、「春のゆき」（作詞・作曲：宮島律子、編曲：米光亮）は最初の起点ともいうべき、キャラクターソングである。
宮島律子さんは1、2、3、GS1などシリーズを通じて楽曲制作に関わっており、米光亮さんもまた熟練の人物だ。この切なげなバラードは、小菅真美さんの落ち着きと気品のある歌声にマッチしている。シンプルだがそこがよい。間奏のハーモニカの愁いを帯びた旋律も哀愁が漂っている。他の6曲も名曲ぞろいなので、いずれこの名曲紹介シリーズで紹介することになるだろう。
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