馬車郎の私邸

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「魔法少女まどか☆マギカ」 アンソロジーコミック第1巻、第2巻 芳文社

あまりこの手の二次創作というのを今まで読んだことがないのだけど、この作品については本編の感想も以下のリンク先にいろいろと書いたし、MADも大量に作ったりしたくらいなので、さすがに気になって読んでみることにした。
『ほむらとマミさんの関係に見る「いかに善く生きるか」というテーマ-「魔法少女まどか☆マギカ」第1-3、10話感想』4/21
『さやかと杏子の関係に見る「利己主義と利他主義の相克」というテーマ-「魔法少女まどか☆マギカ」第4-9話感想』4/21
『まどかとほむらの関係に見る「善意と自己犠牲の相互作用」-魔法少女まどか☆マギカ10・11・12話感想』4/22
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この作品はループものだけあって、二次創作のやりようの幅が大きい。シリアス、コメディの両方において、いろんな可能性を描くことができる。まず1巻のハイライトを紹介しよう。一番1巻で心ひかれたのは右の2ページ漫画。なんとセリフはなく、皆がひたすら魔法少女のいでたちでひたすら焼き肉を食べているところがあまりにもシュールだ。
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たしか公式のドラマCDで「ロッソ・ファンタズマ」なる技名を佐倉杏子が叫ぶ羽目になったという話があったらしい。では、巴マミの「ティロ・フィナーレ」よろしく技名を叫んでみようというなら、ほむらやさやかではどうだろうか。
だが、ほむらはすべて現実の銃火器なのだから、武器の名前を言うしかない。あるいはDIO様のように、「タンクローリーだっ!!!!」。本編11話で誰もが思ってたところを絵にしてくれてうれしい。
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一方、さやかは「エターナルオメガスラッシュ(笑)」 オメガはギリシャ文字のアルファベットで最後なのでさしづめ「永遠の終わり」といったところか。「ヨハネの黙示録」にも「アルファからオメガまで」という言い回しがあったように記憶している。この種の剣を使った必殺技というと、「アバンストラッシュ」や「ブラッディースクライド」を思い出す。
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なんとこのネタは2巻のほうにも持ち越しとなり、こんどは前口上がf^^;必殺技はともかく、前口上は中二病と笑ってはいけない。これは日本の文化なのだ。
歌舞伎ではたとえば…
問われて名乗るもおこがましいが、産まれは遠州浜松在、十四の年から親に放れ、身の生業も白浪の沖を越えたる夜働き、盗みはすれど非道はせず、人に情を掛川から金谷をかけて宿々で、義賊と噂高札に廻る配附の盥越し、危ねえその身の境界も最早四十に、人間の定めはわずか五十年、六十余州に隠れのねえ賊徒の首領日本駄右衛門。 (「白波五人男」より)
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この方も、杏子とほむらのやりとりがクールで良かった。絵もうまい。作品性の点から、シリアス風味にしても意外と面白い。
ほむらの抱く感情が、時間によって相手によってそれぞれさまざまな変遷があったはずだろうと想定すると、実に多様な作品が作れそうだ。…きりがないだろうけども。

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体重を気にするマミさんが太ったと思い込んでいたところ、キュウべぇが肩に乗っかていただけだとわかるという何でもない話かと思いきや、最後にとてもブラックでえげつないオチが。
「もう心配する必要はないよ
その体は太ることもやせることもないからね。
よかったね、マミ」
あぁ、そうでした…
マミさんの多彩で豊かな表情と、キュウべぇの空々しい無表情さが対比になっていて、その点も良かったです。
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ループを繰り返し、悲惨な結果を見続ければ気がふれてもおかしくない。コーヒーをふと見やればそこには黒々とした自らの心の内が映り、蠱惑的な狂気の淵へと誘われる…そんな瞬間は、ほむらのみならず、自分にもあったような……そんな気がして。