馬車郎の私邸

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最新調査結果・報道で見る恋愛・結婚マッチングアプリサービスの可能性

9/24付日経新聞デジタルは、「AI翻訳が人間超え」との声が聞こえるなか「AIが探し出す運命の人 恋愛のパターン化なるか」といった具合で、恋愛や結婚におけるマッチングへの期待感をさらに示している。AIは半ばバズワード化しており、話半分に聞いたほうがいいかもしれない。とはいえ、近年、リクルートがグローバル・マッチング・プラットフォーマーとして、人材サービスと販促支援サービス双方で評価されるなか、恋愛や結婚におけるマッチングアプリ・サービスの可能性は評価の余地がある。22697_ext_24_1

以前に日本人の意識変化とマッチングアプリの普及の現状を整理した通り、オンライン婚活サービスはまさに戦国時代を迎えている。「タップル誕生」「CROSS ME」を手掛けるサイバーエージェント傘下のマッチングエージェント社の予測によると、2019年のオンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場規模は前年比約4割増の530億円、2024年には約2倍の1037億円に拡大すると(やや楽観的に)予測されている。すでに様々な企業が切磋琢磨しており、サービス・アプリ間で淘汰の時代に入ったと見て良いだろう。
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婚活実態調査2019(リクルートブライダル総研調べ)」によると、2018年の婚姻者のうち、婚活サービスを通じて結婚した人は12.7%と過去最高になった。中でもネット系婚活サービスを通じて結婚する割合の増加が特徴的と指摘している。また、2018年の婚姻者のうち、婚活サービスを利用していた人は32.3%と過去最高になった。さらに、婚活サービス利用者に限ってみると、婚活サービスを通じて結婚した人の割合は39.4%と、引き続き高い水準を維持した模様だ。総括すると2016~18年は踊り場局面とシビアに見ることもできるし、かつて程の伸びではないがしっかり定着しているとの肯定的な評価もできよう。
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AIが探し出す運命の人 恋愛のパターン化なるか」の記事によると、マッチングアプリ「ペアーズ」を手掛ける「エウレカ」CEOの石橋準也氏は東京大学と組み、ペアーズでのAIの本格活用を視野に入れている。マッチングアプリは利用者が増えれば増えるほど出会いの「経験」を蓄積していく。趣味など共通項やライフスタイル、各種の属性など入り口について、ある程度整えてくれる点は良いかもしれない。

とはいえ、「恋愛はパターン化していけるはず」と石橋氏は息巻いているが、恋愛はその1回性に価値があると考える私にはとってその言葉はやや傲慢な物言いにさえ聞こえる。また、結婚とは羽生善治九段によれば「持久戦の構え」だ。テクノロジーはロマンティシズムに一見すると反するし、持久戦に最適な戦型を導き出せるのだろうか(銀冠か?穴熊か?)。しかし、AIやコンピュータ演算のメリットは、人間の先入観や感情を排した決定が可能な点だろう。
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米国もまさに戦国時代の様相だ。マッチングサービス世界大手、米マッチグループの最高経営責任者(CEO)のマンディー・ギンズバーグ氏は、ポジショントークかもしれないが、「欧米ではデートアプリを通じて結婚する人が3割を超えている」と指摘する。米フェイスブックは昨年から約20カ国で展開している「Facebook Dating」を米国にも投入した。マッチ・グループの「Tinder」や「OKキューピッド」、「マッチ・ドット・コム」のほか、「イーハーモニー」など米国で先行するデーティングアプリと競合する。しばらく乱戦模様が続きそうだ。

冒頭の日経の記事によれば、米スタンフォード大学などの研究チームが18歳以上の米国在住の男女のうち約4割が異性のパートナーとネットを経由して出会ったとの調査結果を発表しているそうだ。この他にも、WSJ紙の寄稿文でペギー・ドレクスラー博士は米国における様々な調査結果を紹介している。順に見ていこう。

2016年のピュー研究所の調査によると、オンラインデートをしている人や、オンラインデートで配偶者や恋人を見つけた人が知人にいる米国人は、全体の半分に上るそうである。更に驚くべきことには、シカゴ大学の研究者らによると、米国では2005~12年の結婚の約3割がオンラインで関係がスタートしたもので、そうした結婚生活の方が長く、幸せだったというのだ。2013年に学術誌に掲載された研究(1万9000人超が参加)によれば、オンラインで出会ったカップルの方がそうでないカップルより「関係の質」が高く、別居率や離婚率が低い可能性があるという指摘もある。この研究によると、結婚が破綻する率はオンラインで配偶者に知り合った回答者の方がそうでない人より25%低かったのだそうだ。その要因について、配偶者候補の層が厚いため、ユーザーは選択肢が増え、より好みに合った相手を選べるのではないかという仮説が上げられている。

相対的に匿名性が高いオンラインのやりとりは、対面でのやり取りに比べて自己開示の度合いが高く、相手への思いも強くなるため、より長続きしやすい関係の基礎ができるという指摘もある。2011年にコミュニケーション・リサーチ誌に掲載された研究論文は同様の結論に至っている。コーネル大学の研究者らが85人を対象に行ったこの研究では、異性同士のカップルが対面でのやり取りかオンラインでのやり取り(ウェブカメラ有りまたはテキストのみ)を割り当てられた。テキストのみのカップルは他のグループよりも愛情表現が多く、プライベートな情報の共有に対する抵抗が少なかった。

このような調査結果は一定程度参考になる一方、実際にマッチングアプリを活用して良きパートナー、良き伴侶にめぐりあい、その関係が持続するかどうかは、結局のところはわからない。ただ一つ言えるのは、従来より手段が一つ増えたということである。ただし、あくまで手段でしかない以上は、使う人次第だ。人を見る目も、振る舞いも自分自身次第であり、マッチングアプリは手助けをしてくれるに過ぎない。包丁に例えれば、美味しい料理も作れるし、指を切ってしまうこともあるということだ。包丁を褒めそやしても、恨み言を言ってもしょうがない。盲信は禁物だが、少なくとも使いようによっては可能性を広げてくれるのは確かだろう。

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