馬車郎の私邸

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政治は平成の悪夢から、令和の仕切り直しへ

安倍晋三首相が2月10日の自民党大会で「悪夢のような民主党政権」と述べたことを巡り、同12日の衆院予算委員会で立憲民主党会派の岡田克也氏は非難した。これは口げんかのレベルで、国会の場に持ち出すことすら馬鹿げている。国会は劇場ではなく、唯一の立法機関だったということを忘れている人は多いのではないか。

日経新聞のデータで読む国会(2)によると、17年、18年と続けて重要法案の審議は激減している。旧民主党系野党、社民党、共産党は、事の軽重や優先順位を考慮せずにモリそばカケそばについて延々と疑惑を投げかけ、国家戦略特区という政策手段を破壊したばかりか、より有益な議論をする機会もあったかもしれない国会を空転させてしまった。

もちろん、与党の対応も褒められたものではないが、野党といえども存在そのものがフィリバスターになってはいけない。国益の観点から、様々な法案について議論を交わすことが本来の仕事だ。
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しかし、旧民主党系野党はその支持基盤の有権者のためにすら、仕事をすることさえ放棄している。昨年の4~5月は、なんと空前の18連休をとってしまい、本邦屈指のクオリティペーパーである夕刊フジや朝日新聞までもあきれ果てる異例の事態に陥った。さらに、4/12付夕刊フジは立憲民主党などの左派野党が、衆院憲法審査会で欠席戦術をとっていることについて批判している。衆院憲法審査会は与野党の幹事間で懇談会を開き、憲法論議を深める前段で今後の段取りを話し合うはずだった。しかし、今国会では3月28日と4月3日にも懇談会の日程が組まれたが、4月10日も3回連続で欠席した。全く懲りていないようだ。

桜田義孝前五輪相の失言や塚田一郎前国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言など一連の政権の不祥事を受け、野党が衆参両院で要求していた予算委員会の集中審議について、与党は16日、開催に応じない考えを伝えた。野党側は「政府与党による審議拒否だ」と反発。21日に衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙の投開票を控え、野党による追及を避けた形と朝日新聞は解釈している

とはいえ、予算委員会の集中審議といっても、野党のやりたいことは実際には予算を吟味することではなく、首相の大臣の任命責任を問う政局パフォーマンスだろう。しかしながら、肝心の安倍首相は22~29日にかけて、スロバキアのほかフランス、イタリア、ベルギー、米国、カナダを訪問する予定がある。中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」の要所に楔を打ち込む狙いだ。すでにギリシャの歴史あるアテネの外港ピレウスは、中国の「一帯一路」に組み込まれているなど、中国の欧州への関与は深まっている。5Gインフラの覇権争いや、日本自身の中国との経済関係や国防などの観点の文脈からも重要性は高いと言えよう。

国会議員1人には、国民の血税から年間約1550万円の歳費と、年2回のボーナス(計約520万円)、文書通信交通滞在費が年1200万円、立法事務費(会派向け)が年780万円などが支出されている。欠席戦術はいかなる理由があろうと、下策だ。憲法は国家の内外の環境に合わせて変えるのが当然だが、必要に応じた議論さえままならないのが現状である。国防を含めた外交の日程や憲法議論よりも、長期安定政権の首相の首を取らんとすることが国益に適うとも思えない。

さて、過去に旧民主党が与党だった時代(2009年~2012年)は、それが悪夢だったかは政治的立場によると思われるが、ざっと振り返ってみても良好な成果をあげたとは言い難いというのは、控えめに考えても妥当な評価ではなかろうか。

普天間基地移設問題では基地の県外移設を断念すると共に、かねてより計画されていた辺野古移転に落ち着いて沖縄県民を落胆させたほか、この件では県外移設方針を掲げる社民党が反発と政権からの離反を招いた。尖閣諸島中国漁船衝突事件での弱腰外交、東日本大震災に見舞われた際の福島第一原子力発電所の事故を含めた対応のまずさ。衆院選のマニフェストで「四年間は民主党政権では税金は上げない」と明記していたにもかかわらず、消費増税を決めてしまったなど、枚挙にいとまがない。

何にせよ、「悪夢のような民主党政権」と言うより、経済面からみれば少なくとも「悪夢のような民主党時代」であったことはたしかだろう。下に示すのは日経平均株価の推移である。2008年9月の金融危機(いわゆるリーマンショック)の後、2009年3月は世界的に株式相場が二番底を付けた。しかし、その後は金融危機の震源地であった米国株式市場の持ち直しには追随できず、2011年3月に東日本大震災があったことを考慮しても10000円を挟んだ往来に終始している。
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本格的な株価反騰は、2012年の後半、11月からだった。2012年11月14日の党首討論において、野党であった自民党安倍晋三総裁と野田首相( 兼民主党代表 )との間で激論が交わされ、野田首相は12月16日に衆院解散を明言。これが、雄大な上昇相場の起点となった。(厳密にはその少しくらい前から円安ドル高に振れ始めていたりもしていた)企業業績の回復を先読みし始めたことや円安ドル高推移、大胆な金融・財政政策や構造改革への期待が背景にあった。

政治情勢の変化は売買代金の7割を占める外国人投資家のマインドや投資行動に影響を与える。初期のアベノミクス相場のみならず、近年でもそうした事象は見受けられる。日経平均株価は17年9月に衆院解散の観測報道から膠着状態を脱し、10月2日から24日にかけて過去最長となる16日連続上昇を記録する事態があった。18年9月20日 安倍晋三首相(総裁)が3選を決めた前後で大幅高を演じた(ただし、その後は世界的な株価下落に巻き込まれたのだが)。こうした傍証は、外国人投資家が大筋では安倍首相や自民党を支持している、あるいは少なくとも相場の好材料であるという認識を示している。
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とはいえ、だからといって安倍首相や自民党の政策やその進め方について全面的に賛成するつもりはさらさらない。そもそも、第2次政権についたタイミングが経済の循環的な回復に位置しただけという面も大きいと考える。

アベノミクス第1の矢である金融政策は、当初はエポックメイキングなインパクトを打ち出した政策だったが、今となっては持続性と副作用に疑問がある危険な政策に変わり果てた。その一端については、坂本真綾「逆光」の歌詞になぞらえたとおりである。

第2の矢である財政刺激策は十分な効果を得られていない。補正予算などの執行については一定の評価をするが、経済成長については物足りない成果だ。物価変動の影響を含む名目成長率は、第2次安倍政権の初期に改善したが、その後は実質的にゼロ成長に鈍化した。

第3の矢は、(これが最も期待されていたはず)成長戦略だが、めぼしい成果は挙げられていない。野党の執拗な議事進行の妨害、メディアや既得権益層の反発、連立政権で選挙面で依存を増している公明党への配慮など、この国の人口動態による世代間格差への対応など、強力に推し進める事ができないでいるのは確かだ。その点には情状酌量の余地はあろう。

しかし、「第1の矢」である大規模な金融緩和策と、「第2の矢」である機動的な財政出動によって「時間を稼ぐ」はずが、「第3の矢」は本格的に放たれてすらいないことについて、国民は国益と自身の生活の観点から厳しい目線で見る必要がある。最近の例では外国人技能実習制度働き方改革関連法はいずれも中途半端なものだ。人づくり革命を謳うにもかかわらず、幼児教育・高等教育の無償化を標榜するなどすでに生まれた子供への施策へ向かう頓珍漢さにも違和感を覚える。各国の難儀な相手ばかりと渡り合う外交はまずまず健闘している一方で、肝心の国内の規制緩和やビジネスの促進、社会構造の変化への対応といった内政には失望を隠せない。
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10月予定の消費増税については、ずいぶんとまどろっこしいやり方になりそうだ。たしかに、消費税は所得税や法人税よりも安定した収入であり、現状の税率は欧州やアジアの付加価値税率よりも低く、その逆進性を考慮しても、手段としては有用だ。しかしながら、そもそも現状の社会保障費の増加を考えれば20~30%の税率でさえ不十分であり、たかだか2%幅の増税では、一部で軽減税率を導入したりなど付帯する関連対策に対応するための社会的なコストと労力は見合わない。

2019年度予算は一般会計の総額が初めて100兆円を突破し、歳出の3分の1を占める社会保障費は34兆円と過去最高になった。ずいぶん前にこの国はいわば老人主権であって、衆愚の選択は常に増税を忌避してきたと嘆いた。その結果がこの有様だ。
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消費増税はどうせやるならいっそのこと一気に大きく引き上げて一回で終わらせよ、その前か同時に社会保障費削減にも手を付けよとも以前に述べた。WSJ紙は、中国を震源とする世界的な景気減速に見舞われた16年に消費増税の延期という適切な判断を下したと評価し、今一度、誤った増税を棚上げする余地があると、秋波を送っている。米国も中国も大規模減税に動いた。どうせなら、消費増税をやめてしまえばどうか。改元、新天皇即位を祝う名目ならば、非合理ながら(であるがゆえに?)、少なくともひとまず棚上げは可能だろう。国民、与野党、海外投資家の賛意は得やすい(IMFやOECD、国債投資家は激怒するかもしれない)。

7月予定の参院選を衆参同時選挙にする手もあり、選挙戦術としても有用だ。ただし、もしやるならば、社会保障費の削減か歯止めをかけることも抱き合わせでちゃんとやるべきだ。そのうえで、言葉尻の揚げ足取りをされるような迂闊な閣僚を任命せず、大勝の勢いで必要な政策を与党はしっかり立法化していくことだ。

野党は、政策をまっとうに提案する野党、という立ち位置ががら空きだ。また、現存の少数政党群は、まず国会や関連する審議会などに出席することから始めよう。こんなことを指摘するのは馬鹿らしいと笑われると思うが、できることからするしかなかろう。逆に考えるならば、意外と日本の政治の伸びしろはあまりに大きいのかもしれない。なにせ、国民の生活と国益のために当たり前にやるべきことを、今までたいしてやってこなかった、あるいは甘い見通しで不十分な政策対応しかできなかったのだから。令和元年を仕切り直しのタイミングにできるかが、試金石だ。

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