馬車郎の私邸

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【観戦記】プロレスリング・ノア 18/12/16 横浜文化体育館大会

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2018年12月16日(日) 試合開始:16:00  横浜文化体育館 2145人
GHC4大選手権開催の年内最後のビッグマッチとあれば駆けつけねばなるまい。妻はいちごの受領のため、単独での観戦。

第1試合
稲村・岡田× vs 渡瀬瑞基(DDT)、○林棟軒
8分38秒 逆エビ固め

新人レスラーが2人出ている第1試合を見られる幸せ。稲村、岡田が相手をよく見て動けており、デビュー間もないとは思えない。すでにヘビー級の肉弾でショルダータックルはなかなかの破壊力だ。かえってドロップキックを連発するなど技を複数出し過ぎなきらいはあったものの、頑張ってて良いんじゃないか。見守りたい。

第2試合
齋藤・○越中・ヨネ・ストーム VS 長井・SAKAMOTO・ホール・×井上雅央
5分22秒 パワーボム → エビ固め

早い展開で、越中がダイビング尻爆弾から、的確・豪快な侍パワーボムで決めた!斎藤さんともどもまだまだ元気な姿を見れて嬉しい。

第3試合
HAYATA・YO-HEY・○タダスケ VS 金本・諸橋・×宮脇
10分11秒 地団駄ラリアット → 片エビ固め

金本とYO-HEYのやり取りが緊張感がありながらもユーモラス。諸橋が元気で3人に投げ捨て高角度ジャーマンを決めてみせた。宮脇も動きのバリエーションが増えてきて、多種多様なアームドラッグを自然な流れで披露していて、具体的な成長が見えた。ロープ上の拝み渡りを交えての巻投げまでしていて流石に驚いたが…同じ会場で金本、田中稔、越中を同時に見れるというのもなんだか不思議な感じではある。

第4試合
○拳王・北宮・小峠 VS 樋口・梅田・×島崎(DDT)
11分06秒 ダイビングフットスタンプ → 片エビ固め

新世代の旗手3人が、中頃の試合でDDT勢を迎え撃つ。北宮は元気が有り余っているようで、小峠は革命マントスプラッシュに意外にもこだわりすぎず、拳王はきっちり島崎を料理してみせた。DDTと近年・長年、良好な関係にあることから、樋口のようなでかい選手はNOAHのヘビー級戦線にどんどん絡んできてほしいし、梅田、島崎も活きが良い。今後にも期待。

第5試合
×小川良成VS○ダグ・ウィリアムス
11分58秒 カオスセオリースープレックスホールド

懐かしのダグ・ウィリアムスが引退ロードのさなか、日本にも来てくれた。対するは、日本プロレス界でも指折りの業師、小川良成。ファン垂涎のマッチメイクだ。居住まいを正して、食い入るように見てしまった。が、それだけの世界が展開していた。

必然性と流れが生み出すグラウンドレスリングの攻防に酔いしれる。そんな、近年のプロレスの試合でじっくりと見ることはなかなかかなわない一戦だった。最後はカオスセオリースープレックスホールド(ロールスルー式のジャーマン)が決まった。

引退するダグの技は健在だったが、小川さんの何ら年齢を感じさせることのないコンディションの良さもまた際立っていた。第1、第2試合で実戦を通して若手にプロレスの呼吸や間合いといった無形資産を伝えていってほしいものだ。

第6試合 GHCジュニアタッグ
大原・○熊野 VS ×Hi69・田中稔 
17分41秒 アルゼンチンバックブリーカー
大原はじめ&熊野準組が第35代選手権者となる。

熟練のベテランタッグを相手に、背面砕者達(バックブリーカーズ)が初戴冠。この日は左目を負傷している熊野が徹底的に攻められながらも、粘り勝った。大原のサポートは随所で効いていて流石なのだが、それでも、Hi69・田中稔組の老獪な攻めが大原の援護を阻み、熊野が7割がたローンバトル状態。

ラリアットから、無双に酷似した豪快な技につなげ、わずか数分でシングルで原田を倒した腕・脚極め式バックブリーカーは崩れて、危うくバーニング・ハンマーのように落下してしまうところだった。しかし、熊野は機転を利かせてめげずに残る力を振り絞り、すぐさま正調のアルゼンチン・バックブリーカーで捕獲し、Hi69からギブアップ勝ち。

勝ち方はややあっさりだったので不満は残る面もあったが、逆にあれだけの左目の負傷で、やっとの勝利にならないほうがむしろリアリティがなかったかもしれない。西永レフェリーのツイートによると試合前の軽量でHi69の体重は99.5kgと、ギリギリジュニアヘビー級の水準。よくもしっかり担ぎ上げたものだ。

ともあれ、熊野の初戴冠はデビューから見続けた人にとっては、十分に感慨深かっただろう。デビューしたての頃はひょろひょろだったのに、今では分厚いガタイを誇り、ぱっと見ヘビー級にさえ見えるほどで、まさしく見違えている。小熊が大熊になっているとさえ言えるだろう。

また、首を痛めていた面もあってか、今年の大原はリーグ戦を中心に振るわなかったが、むしろもっと活躍してもおかしくない実力者だ。以前書いたように大原の取り組みは、マーケティングの面からも好ましい。すでに一部成果が出始めているようだが、川崎と横浜は近く、3月の横浜大会にも好影響をもたらすだろうし、いずれ日本武道館にも繋がる話だ。応援したい。腰攻めに定評のある個性派タッグチームの王者としての戦いに刮目すべし。

第7試合 GHCジュニアヘビー
×原田大輔 VS ○鈴木鼓太郎
16分41秒 片山ジャーマンスープレックスホールド
原田大輔が第38代選手権者となる。

これまでの戦いの積み上げを踏まえて高度な攻防が繰り広げられた。技術の引き出しで勝る鼓太郎に対し、原田はしっかりと鼓太郎を研究したうえで戦っている様子が見てとれた。丸め込み合戦は互角でしのいだし、ブルーデスティニーやジャベリンは自力でキックアウトし、レクイエム、マスドライバー、タイガードライバーといった食らってはいけない強力な技は、工夫をこらして切り返した。得意のニーアッパーから、2発目の片山ジャーマンでばっちりリベンジ。納得感のある試合で、満足だった。

試合後は鼓太郎のセコンドに付いていた小川がラーテルズとにらみ合い。まさか次は小川か?と思った次の瞬間、YO-HEYがなんと、タダスケ、HAYATAにトラースキック!さらに小川、鼓太郎が合体式タイガードライバーを原田に決め、さらにYO-HEYは原田に惜別の顔面Gを炸裂!!ジュニアの勢力図に大きな変化!小川、鼓太郎も今後の動きがありそうで、来年も楽しみな展開に。ノアのジュニアはどんなときでも面白いのは相変わらずだ。

第8試合 GHCタッグ
谷口・○火野 VS 中嶋・×潮崎
18分18秒 Fucking BOMB → 体固め
マイバッハ谷口&火野裕士組が第47代選手権者となる。

初防衛が鬼門のGHCタッグ。フーリガンズの総力戦、ダーティファイトに、潮崎、中嶋は為す術なしという様相だった。古典的な試合展開となったが、谷口のベルト殴打で潮崎が尋常でない流血に陥り、ほとんどいいところなく敗れ去った印象を残した。潮崎は終始ローンバトル。結局、潮崎はチョップやトラースキック、ここぞというところで見せるドロップキックで盛り返したのは一時のことで、大技でフィッシャーマンバスター一つだけ。

また、中嶋が試合の権利を持ったのは1回だけで、長井、SAKAMOTO、ホールの的確な援護が実を結んだ形になった。谷口もしっかり中嶋を封じ込め、火野はパワー殺法を発揮した。レフェリーのブラインドを突いたり、ダウン中の無法状態を利用しての反則・介入三昧は、プロレスの華の一つではある。だが、谷口・火野という実力者にたっぷりと必要とされるものだったかは疑わしい。なぜなら、大多数のファンは本格ヘビー級の二人が潮崎・中嶋とぶつかり合うのを望んでいたからだ。

これと同じ展開だとか、それについて抱く感情は、鈴木軍の侵攻と同様のものだ。私個人は、実を言うと鈴木軍のレスラーたちを高く評価している。しかし、そうした優れたレスラーたちの試合を普通に見たいのであって、反則や介入が決定打となっての試合決着というのはまさしく興ざめだ。それもプロレスの一つなのは重々承知しているが、あまりにも続くとなると考えものだ。

ただ、一つ救いがあるとすれば、フーリガンズは意外と憎めない人たちだということだ。谷口はなんだかんだいって愛されキャラだと思うし、長井さんはどう見たって良い人だ。キャラチェンジしてからというもの、まともにインタビューに答えない谷口が「中学生の時見ていたリングスに出てたおっさんだろ!」と言及していたが、そうした二人の結びつきは丸藤とのタッグ解消後の流れとして必然だ。それに、KAZMA SAKAMOTOやコーディ・ホールには愛嬌がある。

しかも、ここに火野選手が加わるのである。試合後に憤懣やる方なしの様相でやってきたストームに対して、「おう、ストーム、久しぶりやないかい。お、このあと飯、一緒に行くよな?」と、とぼけているのか素なのか(どちらにしても面白いのだが)しれっとマイクパフォーマンスで笑いをとってみせた、ガラッと会場の空気を変えたのは印象深い。悪辣ファイトも良い。だが、それは二人ができる肉弾ファイトをしたうえでのことだ。リマッチを楽しみにしたい。

第9試合 GHCヘビー
○清宮海斗 VS ×杉浦貴
33分00秒 タイガースープレックスホールド
清宮海斗が第32代選手権者となる。

凱旋帰国して拳王のGHC王座に挑戦したのは、年初の1/6のことだった。潮崎と一緒にGHCタッグリーグを優勝し、短期政権とはいえタッグ王座を戴冠、グローバル・リーグ戦を制してGHCヘビーのベルトさえ巻くことになるとは、冷静に考えてみるととんでもないことだ。センスがあるのは、試合を見ればだいたいわかる。しかし、まだデビュー3年目だ。にもかかわらず、「別にこういう事があってもおかしくない」と自然と思えてしまう。それ自体が不思議なことではある。

試合展開は前半は杉浦の容赦ない攻撃にさらされる状況が続いた。エプロンでのネックスクリュー、断崖式のサイドスープレックスといった恐ろしい技、力強いエルボーを何ダースもらったか、随所で戦慄が走る威力の張り手や左フック、ストレートも襲ってくる。キチンシンクやコーナーに追い詰めてのエルボーラッシュ、投げ捨てジャーマンやオリンピック予選スラムを食らっても自力でフォールを返した。リングの味方は自分自身の気持ちと観客の声援しかいない。

雪崩式のオリンピック予選スラムを雪崩式のリバースDDTで切り返したのが勝負の分かれ目になったようだ。あの強すぎる杉浦が、拙速に雪崩式で決めることを急いだ。追撃が2発目かあるいはこの日見かけなかったフロントネックロックやアンクルホールドだとしたら、また違う展開だった可能性が高い。

清宮は随所でひらめきのある切り返しや攻撃手段を繰り出していて、流れを引き寄せるような動きを多数見せたのが印象的だった。どことなく丸藤を感じさせるところがあるが、それはまだ萌芽にすぎない。一方で、この日はやはりがむしゃらな攻撃が目立ったが、キャリアを考えればそれで何の問題があろうか。

投げ捨て式ジャーマンを計5発放った。直下式の変形エメラルド・フロウジョンも繰り出した。杉浦はダメ押しのような攻撃を何度受けても、不死身のごとく立ち上がり続ける。最近フィニッシュとして定着し始めたタイガースープレックスは、ホールドできず投げ捨てになったのが1発、ホールド式2発目でようやく杉浦から3カウントを奪った。

デビュー3年、22歳のヘビー級王者がここに誕生した。新日本プロレスはオカダ・カズチカ、全日本プロレスはかつてNOAHで下積みを積んだ宮原健斗が牽引しているのは周知の事実だ。これが希望でなくて、何であろうか。今後、ベルトを狙ってジェラシーに燃える先輩レスラーたち、あるいは外敵さえも次々と襲い来るだろう。まぐれ勝ちで杉浦に勝ったわけでないのは、証明できた。王者としての試合ができるのか、そこに焦点が集まるのは当然のことだ。

試合後、期待通りに拳王が登場し、粗探しをする人たちの考えさえも先取りするかたちで、あえてマイクパフォーマンスを行った。「誰とでも心に響く試合をする杉浦と試合をしても、響かねえ試合だったな」「会社の描いたシナリオ、NOAHの顔にするという台本通りにすすめて、何の刺激があるんだ?」と、際どいというよりはもはやケーフェイを露骨に当てこすっており、論議を呼びそうな発言ではある。

だが、そうすることでこうした疑問を抱かせる前に、あるいは心の底でどことなく考えるのを先んじて代弁しておき、次の試合で清宮に実力を証明する機会を与えてみせた。この先回りが奏効するかどうかは、兎にも角にも19/1/6の試合内容次第だ。くしくもそれは一年前と同じ顔合わせである。ケーフェイはファンには確かめようがない一方で、ないことを証明できないのは「悪魔の証明」である。だが、全ベルト移動というポールシフト(地軸移動)が起きたことや、2019年のNOAHから目が離せないということは事実だ。リング上の戦いを真剣な目で見つめることがファンの努めである。楽しみ方にまつわる信念と解釈は自由だ。そして、自由と信念こそは、故・三沢光晴の掲げたNOAHの理念であり、NOAHのリングにはそれがある。

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