馬車郎の私邸

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春から高校生になる君へ 5冊の読書案内

お小遣いで買えるよう文庫・新書のみから選びました。中学を卒業して高校を進学するとなると将来を意識したり、今やっていることってなんだろう、意味あんのかな~とか思う時期ですよね。そこで今回は勉強の意義や人生の処世術など含蓄に飛んだ5冊を紹介します。

悪魔の勉強術 年収一千万稼ぐ大人になるために (文春文庫)佐藤 優

同志社大学神学部の後輩へ向けての20時間におよぶ集中講義を完全収録。学生たちに問いかけるスタイルななので読みやすいでしょう。本書の概要は、以下の通り。
「やや刺激的かつ俗物的にいえば、年収1000万円を稼げる大人になるための知力を身につけるための授業です。したがってこの講義では、そうしたことを念頭に置きながら、就活、資格試験や外国語の勉強の仕方など、社会の実践の場で役立つ。そして稼げる知識と教養のあり方を、一緒に考えながら進めて生きたいと思います。」

外交官、作家として豊富な体験を持つ佐藤優氏の語り口はそれだけでも面白いですが、高校生の君たちにとって直接的に役立つのは、数学や国語、歴史、英語を学ぶ意義が示されている点でしょう。なんでこんなことやらなきゃいけないのかなぁと思える勉強が、どういう理由で役に立つのか、なぜ今やっておくと良いのかが学べるので、勉強するモチベーションになる1冊です。

知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能 (朝日新書)
野口悠紀雄
今高校生の君たちは、生まれたときからケータイ電話があって、スマートフォンをきっと使いこなしていることと思います。本書は知と情報の人類史をコンパクトに整理した1冊です。いかに今の時代が、便利でいろんなことが当たり前のことのようにできるようになったのか、その歴史を知るだけでも意義深いことです。加えて、何これから本格的なAI・人工知能の時代を迎えるわけですが、私達自身の脳の使い方について思いを巡らせてみることも将来に向けて有用なことでしょう。

知的幸福の技術―自由な人生のための40の物語 (幻冬舎文庫)橘 玲 (著)
日経新聞に連載されたエッセイの書籍化『雨の降る日曜は幸福について考えよう』の文庫版です。この資本主義の世の中で私たちが生きていく上で、経済の視点からものを考えることは欠かせません。それなりに難しいことも書いてるかもしれませんが、1章あたりはとても短いエッセイなので読解の良い練習にもなるでしょう。また、知識がつくので、小論文を書く時のネタにもなってくれる点もメリットです。

ラッセル幸福論 (岩波文庫)
B. ラッセル (著), 安藤 貞雄 (翻訳)
近況報告もかねて、これからの"幸福"について考える-モンテーニュ・ラッセル・デュマを手掛かりに-」や「今をときめく声優・茅野愛衣さんに学ぶプロフェッショナルの心構え」でも引用したように、幸福という抽象的な概念について示唆に富む名言がたくさん書かれている名著。人生において、悩みの大部分は本書を読むだけで6割位は解決できると思います。

とりわけ私のお気に入りのラッセルの言葉は以下の2つです。
「幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ。」
「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。」

さて、ラッセルの「幸福論」は知的な文章の代表例として上位大学の入試問題にも出題されることもあります。英文標準問題精講に抜粋が収められており、英語の文章解釈の力を骨太にしたい方はぜひこちらも読み解いて実力をつけると良いでしょう。


若きウェルテルの悩み (新潮文庫)
ゲーテ (著), 高橋 義孝 (翻訳)
小説といえば、高校生のみなさんにとってライトノベルは親しみやすくて楽しい小説でしょう。私のラノベ遍歴と珠玉の13選―中学生になったらラノベを読むべしで書いたように優れた作品は大いに読むべきですが、食事と同じようにバランスよく食べるのが、読書の楽しみをより増してくれるものと思います。世界史・日本史に出てくるような文学作品は敷居が高いように見えますが、案外実際に読んでみると面白いものです。

本書はゲーテの実体験と伝聞で聴いた友人の自殺、その二つが結合して紡ぎだされた物語です。発刊当時からヨーロッパ中で大ベストセラーとなった名作で、「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」とさえゲーテさん本人が太鼓判を押すほどです。

先述の佐藤優氏が言うように、極端な状況や人物が描かれているという点で小説は漫画と同じです。「社会の縮図」「人間と人間の関係の縮図」として類比的に読むことで、社会や人間理解の幅と奥行きを広げることができます。また、人間は個人で経験できることは限りがありますが、小説は「代理経験」としても読める効用があります。

優れた文学は人生を豊かにしてくれる一方で、「初恋とゲーテ」でも書きましたように初恋は人生の貴重な瞬間です。必ずしも報われるものでもありませんが、サッカレーが「愛してその人を得ることは最上である・・・ 愛してその人を失うことはその次によい。」というように、素敵な恋愛をすると人生が豊かに、楽しくなります。
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