馬車郎の私邸

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【マーケット】3月15日に気をつけよ

上場企業の2017年3月期業績が2年ぶりに最高益を更新しそうです。(2/11日経)全体は減収ながらも、円高でも採算改善しているというわけです。中には東京エレクトロンや日本電産のように、上半期が終わった時点で、1ドル=100円ながらも純利益1000億円という実力派の企業すらありました。そこに世界の景気循環、トランプ大統領の大規模減税・インフラ投資・本国還流減税の期待・将来の財政悪化の予想が加わって、米国の長期金利が急上昇。強烈な円安ドル高が企業業績の見通しを後押ししました。
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足元の株価水準をまず確認すると、2/13の日経平均は19,459.15(+80.22)円。よく2万円はバブルだと内実を見ない方もいますが、PER(株価収益率)15.74倍まで買われているに過ぎず、まったくバブルとはいえません。本当のバブルは企業の利益が株価とかけ離れた水準まで買われていることを言うのです。ほぼ出揃った第3四半期の決算の上方修正の結果、一株利益(EPS)は1,236.29円にまで切り上がりました。今年の高値(1/5) 19,520.69円 PER16.60倍、一株利益(EPS)1,175.95円とくらべてみるだけでも変化のほどが伺えます。要するに、日本企業の(上場しているような大企業)にファンダメンタルズは総じて良好と言って良い状態です。

では死角が無いのかというと、そうではありません。市場が先んじて織り込んでいるトランプ大統領の施策、特にマーケットが期待している減税とインフラ投資については、まだどのくらいやるのかが決まっていないのです。大統領令はあくまで行政府に出すものであって、国の予算を使うのは議会が法律で決めるのです。期待されている金融規制緩和についても同様で、これも新しい法律を作る必要があるわけです。

したがって、何をやるかは分かってきたんだけど、どのくらいやるかがわからない状態です。これからもトランプ大統領の発言ないしツイッターで短期筋は一喜一憂、あるいは市場の一喜一憂をネタにしてトレードをするでしょう。日米首脳会談はまずはつかみはOK!と言ったところで、軍事・安全保障については日本は一安心というところです。しかし、懸念されていた為替や通商政策については、麻生財務大臣・ペンス副大統領とテクノクラートが協議していくということで"これから"の話になりました。とはいえ、一方的に攻撃される感じにもならなさそうで、閣僚(まだ承認されていない方も多いですが)にピーター・ナヴァロやライトハイザーなど対中強硬派が目立っていることから、為替や通商政策については、まずは中国を念頭に置いているようです。先日中国の外貨準備高が3兆ドルを割れましたが、足元のドル高を容認しているのは中国からお金を吸い上げているという可能性も示唆されます。

ここからの展開ですが、しばらく高値持ち合いが続くでしょう。28日のトランプ大統領議会演説の前で一度様子見に転じるのが無難かもしれません。また、3月中頃にリスクイベントが3つあります。。「3月15日に気をつけよ(Beware the ides of March. 」は、シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」における預言者の有名なセリフですが、不思議なことにすべて3月15日なのです。

1つ目は、FOMC(米・連邦公開市場委員会)です。現状では3月の利上げの可能性は交替していますが、6月以降の継続利上げを前提に円ドル為替は動いています。去年の円高の一因は年4回の利上げを軸に為替相場の予想が動いていたところに結果12月になるまでアメリカが利上げができない経済情勢になってしまったことがあげられます。したがって、6月以降の利上げについて、イエレン議長の示唆にマーケットは注目しています。ただし、利上げ実施後は出尽くし的に円高に振れる可能性はありそうです。

2つ目は、オランダ総選挙です。反EU・反イスラムを掲げるウィルダース党首率いる極右・自由党が連立与党入り、首相になるリスクがあります。おりしも、英国がEU離脱を通告する期限も3月中ということで、実際にどうなるかは別にして、この辺の政治リスクをネタにしたトレードはありうる話でしょう。

3つ目は、いわゆるアメリカの"財政の崖"です。連邦政府債務上限(国債発行枠)引き上げの適用期間最終日です。毎度恒例ですからこれもまた議会でちゃんと仕切るのでしょうが、事前の懸念は意識されるところです。トランプ政権の議会運営にも焦点が集まりそうです。

以上、実際にどうなるかはわからないんだけど、どうなるかはわからないからこそトレードのネタになるわけで売り仕掛けをしたい短期筋の動きの蠢動や、実需筋のヘッジ売りや買いの手控えが想定されます。だとすれば逆に安いところは仕込みどきなのかもしれません。イベントを無風通過後は1/25の19,057.50円(+269.51)、1/26の19,402.39円(+344.89)や先日2/10の19,378.93円(+471.26)の強烈なショートカバー(先物の売りポジションの買い戻し)の発生もありえるからです。。

シーザーが暗殺される直前、群集の中に預言者を見つけ、「3月15日は来たぞ」(The ides of March are come.)と勝ち誇ったように言うと、預言者は「来はしたが、まだ、去ってはいない」(Ay, Caesar, but not gone.)と返しました。まだ1ヶ月ありますが、私たちは来たる3月15日までにどういう備えをしようか考えておこうではありませんか。
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