馬車郎の私邸

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【石田流】社会人のための棋書5冊だけで将棋ウォーズ2級に昇級する上達戦略【四間飛車】

将棋ウォーズ2級に昇級したので、戦略的に上達する方法を自分なりに整理して伝えたく思います。近頃の将棋の盤上は、パソコンのディスプレイからスマートフォンの画面上も使えるようになり、気軽に対局相手を探して手軽に楽しめる時代になりました。とはいえいきなり指そうにもどんなふうに指したらいいかわからないし、学ぼうにも選択肢は多すぎます。そこで目的としては忙しい社会人が楽しんで将棋のアプリで対局できるようになるための方法論とアクションプランを示したく思います。image
ちょっぴり近況を混ぜると、難波と秋葉原の支店で証券のリテール営業を4年半した後、社内公募制度で11月から日本株投資戦略のストラテジスト(見習い)として憧れのF戸投資情報部長のもとで働くことになりました。そこで体験を元に"戦略”的な将棋の上達を考えて記してみようと思います。したがって、「やることを絞る」「「敷居を下げる」ことを第一にします。忙しい社会人が将棋を趣味にするためには情熱に加えて、勉強を習慣に落とし込む必要があります。

―ピーター・ドラッカー―「私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく自らの時間を奪おうとする非生産的な要素を退ける。」「成果をあげる人に共通しているのは、自らの能力や存在を成果に結びつける上で、必要とされている習慣的な力である。企業や政府機関で働いていようと、病院の理事長や大学の学長であろうと、まったく同じである。私の知る限り、知能や勤勉さ、想像力や知識がいかに優れようと、そのような習慣的な力に欠ける人は成果をあげることができなかった。成果をあげることは一つの習慣である。習慣的な能力の蓄積である。習慣的な能力は、常に習得に努めることが必要である。習慣になるまで、いやになるほど反復しなければならない。」

と、かのドラッカーさんも言ってますので、まず覚える戦法は、「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」だけ。とことん敷居を下げるために、戦法と終盤を学ぶ棋書は以下の通り、「指しこなす本」「次の一手」形式の5冊だけに絞ります。盤に並べるとか、頭のなかで指し手を考えていくよりも、次の一手、つまり一問一答形式のほうが遥かに敷居が低いため、取り組みやすいのです。もちろん集中して盤駒を使って取り組むに越したことはないですし、基本を身に着けたら高度な定跡書で学ぶことは重要でしょう。しかし、現実論としてスキマ時間や通勤電車、夜寝る前の10分、撮りためたテレビ番組を週末に見ながらでも続けることは累積としては大きいです。高度な定跡書を1冊読み通すのはなかなか大変ですが、ちゃんと読み通したとしても、むしろ気軽に取り組める(が、それでいて振り飛車のエッセンスが詰まった)本を3回通読したほうがが頭への定着度合いが良いと感じます。
石田流を指しこなす本 急戦編 戸辺誠七段
石田流を指しこなす本 相振り飛車編 戸辺誠七段
四間飛車を指しこなす本〈1〉藤井猛九段
「3手詰ハンドブック」浦野真彦八段
寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)

「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」だけにする理由は相居飛車の序盤よりも振り飛車の序盤のほうがわかりやすい、つまり何を最初にしたらいいか方針が分かりやすいからです。広く盤面を見渡す感覚が必要な相居飛車よりも、右辺はすばやく築城できて堅固な美濃囲いにして、左辺では飛車角銀桂をまとめて攻めの形を作る振り飛車のほうが初心者には向いていると思います。

先手番で石田流・後手番でゴキゲン中飛車というのも現代振り飛車党としては定番で私自身も好きですが、ゴキゲン中飛車は相手の動きを見ながら柔軟に指す戦法でもあるので、どちらかというと初級者よりも中級者向きでしょう。居飛車も振り飛車も相手にできる右四間飛車は便利で攻めの手筋として強力で応用も可能ですが、定跡書の充実という点では相対的に少し物足りない面もあります。石田流と四間飛車を覚えたうえで取り組んでおきましょう。何しろ右四間飛車は、石田流と四間飛車の有力な対戦相手でもあるのですから……

「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」は感覚の面で将棋の楽しみとも直結しています。石田流の駒を連携して攻める爽快感、四間飛車の囲いを作るのを妨害されない安心感とカウンターのさばきはどちらも病みつきになります。攻めと受けの感覚が身につくのです。何よりも最初に目指すべき形があって、指針に迷わないところが最初に習得する戦法として安心感があります。
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先手番の戦法、相手も振り飛車の時の戦法として、石田流三間飛車はとりわけ有効です。ただし、最初に覚えておくべきは相手が初手から二手連続で飛車先を伸ばしてきたら石田流にはできないということです。相手が飛車先を最初に伸ばしてきたなら四間飛車にしましょう。ゴキゲン中飛車もありですが、まずは序盤指しやすい四間飛車をしっかり身につけましょう。

「石田流を指しこなす本 急戦編」の著者である戸辺誠七段はアマチュアへの普及に熱心な振り飛車党の棋士です。それゆえ我々アマチュアのためになる形で戦法の本をまとめてくれている印象が伝わってきます。急戦編は石田流を指す上でやっちゃいけない形と反撃手段、多彩な攻め方をわかりやすく解説している名著です。ネット上で指すと居飛車の対抗策は、7筋に飛車を振り、石田流のトレードマークである7六飛と7五の位を目標にして攻撃してくる"袖飛車"が多く感じます。袖飛車を中心に、この本の戸辺流バッティングセンターで戸辺先生の投げる球を打ち返しまくり、急戦対策をバッチリ学びましょう。攻めの手筋も満載で戸辺攻めのエキスがたっぷり詰まっています。

石田流のカタチを身につけると、四間飛車や中飛車から持久戦模様のときに石田流に組み替えることもあるので、他の振り飛車でもとても役に立ちます。持久戦にあっても石田流本組にできれば、その破壊力ゆえに特に穴熊が怖いとは感じません。まずは急戦編を学んで、「持久戦と新しい動き」を読むのは後回しで大丈夫だと思います。石田流はカタチさえできれば、角を突撃させて相手の銀や金と交換して、左の桂馬をさばければだいたい勝勢です。とにかく石田流で大暴れすればなんとかなります(笑)この信頼感が、石田流依存症の原動力であり、攻めに自信をつけるポイントです。
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2冊めは「石田流を指しこなす本 相振り飛車編」です。この本を強くお勧めするのは、ネット将棋では特に相手も振り飛車を指したい方が多いからです。先手番でも後手番でも相手が振り飛車なら石田流三間飛車だけで幅広く対応できます。藤井猛九段の相振り飛車を指しこなす本シリーズ4冊ももちろん名著ですが、この本は1冊で相振り飛車すべての対策を薄く広く学ぶことができるというメリットがあります。最初の駒組みをどうしたら良いか迷わなくてすむ安心感は心強いです。

相振り飛車の囲いのバリエーションはある意味じゃんけんに似ていて何通りもあり、もちろん飛車を振る場所も2、3、4、5筋とあるので、相振り飛車の世界は実に広大です。つまり、方針を決めるのがなかなか大変なのです。このことは振り飛車を覚えたばかりの人にとっては心理的に困るポイントです。その理由は指したい振り飛車に対して相手も振り飛車だったらせっかく覚えた振り飛車の将棋とは別の戦いになってしまうからです。だから、この本をしっかり学ぶことで、どうしたら良いかわからないということはあまりなくなることは、とても重要です。たとえば、端歩を突かない美濃囲いにする、飛車を振るのは3筋で石田流を目指す、角交換した場合は左金は7八金で左に持っていくとおぼえておくだけでも、最初のうちは十分でしょう。

そういうわけで、相手も振り飛車の時無理して居飛車を持って戦うよりも、この本で相振り飛車を得意にしたほうがやりやすくなります。全振り飛車に対応でき、相振り飛車上等!になることで心理面で優位に立つことができる点は大きいです。副次的な効果としては採用率が高いゴキゲン中飛車対策になることもメリットです。居飛車ではなかなか勝てなかったゴキゲン中飛車に勝つことができるようになり今やお得意さんです。

さらに相振り飛車の三間飛車に磨きをかけたいなら「戸辺流相振りなんでも三間飛車 (マイコミ将棋BOOKS)」、石田流の破壊力に魅入られて石田流中毒になり後手番でも石田流を指したいという欲望に取り憑かれたら「振り飛車4→3戦法 (マイナビ将棋BOOKS)」、角交換の振り飛車にもう1歩進みたいと思ったら藤井猛九段の「角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)に応用編として進むと良いでしょう。

3冊目は藤井猛九段の「四間飛車を指しこなす本 第1巻」です。前述の通り石田流にできない出だしのときは四間飛車にしましょう。先手後手両方で使えます。四間飛車はかの大山康晴大名人の得意戦法で、日本最古の棋譜も四間飛車VS右四間飛車の対抗型という伝統ある戦法です。プロ間では角筋を閉じるノーマル四間飛車は少なくなっても、アマチュアの世界には特に関係ありません。ネット将棋では相手も四間飛車ということも多いので、その場合は先程の石田流三間飛車で迎え撃ちましょう。石田流の9七角の端角が敵の四間飛車を射程に捉えており指しやすいです。
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右辺は美濃囲いの堅陣にして、左ではカウンターを目指すカタチにしてさばく四間飛車は振り飛車の基本です。古い本だとしても基本は不変普及です。何よりまえがきの「四間飛車のコツは?」と聞かれて「相手の力を利用して投げる―でしょうか?」と答える藤井猛九段はいかにも達人という感じでかっこよすぎます。「藤井猛九段 銀河天帝即位を祝して-私と四間飛車-」で書いたように「四間飛車を指しこなす本 第1巻」は私の将棋の原点であり、藤井猛九段の銀河戦優勝は再び将棋を指すきっかけになりました。

まずは第1巻で急戦への対抗策をしっかり身につけましょう。それに四間飛車と急戦の戦いは将棋の定跡の歴史をたどる旅でもあります。ネット上の将棋では急戦は棒銀が一番多いと感じるので、特に棒銀の章だけ繰り返しやるのが良いです。舟囲いすら作らずにまっすぐに攻めてくる原始棒銀が驚くほど多いので、棒銀のに強烈に攻め倒されないためにも対策を練る必要があります。7七角の下に飛車を振り直して三間飛車の状態にし、棒銀をさばかせないように9四歩に対し9六歩をついておく。7五歩が来たらその歩を取って相手の棒銀を進ませてはいけません。6八角あるいは8八角と引くとおぼえておけばおおざっくりにはOKです。速攻棒銀への受け方のページがとても参考になります。

穴熊や左美濃囲いについては将棋ウォーズでは遭遇することは少なく感じるので、まずは第1巻だけでまずは十分です。もし穴熊や左美濃囲いに悩まされるようになった時に、モチベーションとして藤井システムでかっこよく対抗したいという気持ちは心に秘めて、第2巻の攻め手筋を身につけましょう。6四歩で飛車角を一気に躍動させたり、銀を相手の角頭を襲撃する刺客として送り込むも良し。あるいは4筋に飛車を振って戦う方法だけでも十分に戦えます。藤井システムは四間飛車の基本と、終盤の詰将棋、寄せの手筋や端攻めを身につけるまで我慢しておきましょう。

上記3冊で序盤から中盤を優勢に乗り切り、石田流の猛攻と四間飛車のさばきの後は、敵の囲いを破壊して相手玉を打ち取る、終盤の攻城戦です。終盤の2冊としては浦野真彦八段の3手詰ハンドブック、金子タカシさんの寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)は必携で、ビジネスマンは必ずカバンに入れて通勤電車で少しずつ解きましょう。特に寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)
将棋界の大御所たちが揃って太鼓判を押すほどの名著で、自分もこの本に出会い、行き帰りの電車で15分ずつ毎日解くだけでも12月に飛躍的に勝率が上がりました。というわけでこの2冊は必ず何度も繰り返しましょう。

攻めの手筋にスパイスを加えたい場合としては、「将棋・ひと目の端攻め (マイコミ将棋文庫SP)」がおすすめです。盤面が飽和状態の時に端から手を作る事ができると戦いの幅が広がりますし、穴熊を上から圧殺することができるようになります。藤井システムの成功率も上がり、良いことずくめです。また、将棋ウォーズのような時間が少ない戦いへの心構えとして、前に感想を書きましたが、「ネット将棋攻略!早指しの極意」(大平 武洋)を読んでおくといいでしょう。心の迷いがなくなります。

以上、5冊をしっかり身につけて将棋ライフをエンジョイしましょう!基本を身に着けたら、その先にはさらなる振り飛車の世界が広がっています。戸辺誠七段の言葉を借りると「どの筋に飛車がいても、振り飛車は皆友達です」。三間飛車、四間飛車、中飛車、向かい飛車、(右四間飛車?←こいつも味方にしよう)をマスターしたく私も精進するつもりです。(証券アナリスト試験も頑張ります……)
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