馬車郎の私邸

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1.29.日銀のマイナス金利付・量的質的3次元金融緩和の一日

1月29日、日経平均は日足MACDでゴールデンクロスとはいえ、昨年高値の20900円からなおも4000円近く下げたままの17000円台。明け方起きてブルームバーグのアプリをチェックしてみると、IMG_2344
昨年四半期決算のたびに暴騰し、いつも助けてくれたアマゾンは今回ばかりはマーケットの高すぎる期待をクリアできず、ザラ場で8.91%高(52ドル高)の後、時間外取引で10数%マイナス。この日暗澹たる気分で月末営業の会社に向かった。午前中できることといえば、割安な銘柄、高配当銘柄を粛々と推奨し、安く仕入れてもらうことだけだった。

日銀金融政策決定会合がこの日あるとはいえ、大方の見方は現状維持であり、これにより円高トレンドへの転換とそれに伴う輸出企業の利益見通しの下方修正を懸念する声さえあった。



日銀金融政策決定会合は通例、現状維持ならば12:30頃にその旨発表される。「12:30前にマイナス金利を議論か」という記事が出た時点では、「何だ議論しているだけかと思ってしまった。」しかし、12時30分に1ドル=118円後半で推移していたドル円は、12時40分には121円40銭台まで急激なドル高・円安が進行。円は10分足らずの間に、実に3円近く下落した。想定為替レートが117円ないし118円近辺の輸出企業が多いことを考えると、再び120円台定着は業績の下方修正リスクが減ることを意味するため、日経平均は急速に買い戻され、597円高の1万7638円まで上昇した。

こうして為替相場の動きから日銀の「マイナス金利の導入」を知ることとなった。輸出銘柄が強烈な動きを見せ、富士重工が9%高の急騰とあって、私はすかさず先週4400円台で仕込んでもらった大口顧客に連絡をとった。(この顧客は180万円の利益を得た。)IMG_2345


しかし、12時46分を過ぎると日経平均は前日比597円高から急降下し、13時20分にこの日の最安値となる前日比274円安の1万6767円まで高値から871円下落。まれに見る乱高下となった。14時52分には1万7598円をつけ、この日の最安値から831円上昇。結局、日経平均は476円高の1万7518円で取引を終了した。当初、株式市場マイナス金利導入の意味合いを図りかねたようだ。


その一方で、債券市場では新発10年国債利回りが1/19の最低利回り0.19%をあっという間にクリアし一時0.09%にまで急低下した。日本国債はドイツ国債のように8年債までが一時マイナス金利となった。ザラ場中はひたすら顧客に電話しながら、ニュース記事を片目で見て、日銀の施策の詳細の収拾に務めた。中には、銀行に預ける預金に金利をとられるのではないかという杞憂を示す方もいた。大幅な金利低下により、恩恵を受けると目される不動産・REITも大幅高する一方で、メガバンクは大幅に下落した。

この度の「マイナス金利の導入」とは、「金融機関が保有する日銀当座預金に▲0.1%のマイナス金利を導入する。必要な場合には、さらに金利を引き下げる」というものだった。これが全ての日銀当座預金に適用されるならば、ECB(欧州中銀)やスイス中銀の前例がある。

大引け後落ち着いて日銀の資料を見てみると、日銀のスキームは複雑で、日銀当座預金を3段階の階層構造に分割し、①基礎残高(2015年1月~12月の期間における平均残高)+0.1%、②マクロ加算残高0%、③政策金利残高▲0.1%に3分割するものだった。

①基礎残高(2015年1月~12月の期間における平均残高)+0.1%はわかりやすいが、②マクロ加算残高0%がどうにもわかりにくい。当座預金の所要準備額に加え、貸出支援基金や被災地金融機関支援オペで資金供給を受けた部分、基礎残高に掛け目を掛けて算出する②マクロ加算残高が0%であり、それ以外が③政策金利残高▲0.1%ということになる。▲0.1%金利が16日から適用となる当座預金は当初10兆-30兆円となる見通しだそうだ。以下の方のツイートがわかりやすい。

こうして 量・質・金利の3次元の金融緩和の導入と相成ったわけである。これにより日銀は新しい施策を導入したうえで、なおかつ追加緩和のカードを温存したわけだ。それぞれ振り返ると、以下のダーヤンさんのまとめのとおりだ。


とはいえ、マイナス金利が一様に歓迎され評価されたわけではない。金利が消失どころかマイナスという異様な世界へと足を踏み入れたのだから、この異常な政策からいつか正常化へと舵を切ることになる。先の話をして過度に心配することないが、いつかは向き合わないといけないことだ。FRBのイエレン議長のQE政策からの出口と同様の苦心が予想される。IMG_2347
とにもかくにも、マイナス金利政策の導入により、日本の長短金利が一段と低下し、今後も低下する可能性がある。ちなみにスイスは▲0.75%、スウェーデン▲1.1%、デンマークは▲0.65%と、マイナス金利の拡大余地がある。ECBがマイナス金利を導入した14年6月から15年12月まででユーロが実効レートで1割下落したことを思い起こすと、米国10年国債金利の動向によっては内外金利差拡大による円安ドル高もありうる。しかしその一方で予想インフレ率が低下するならば、実質金利はたして上がらないのかもしれない。ともあれ、ついに10年国債の金利が0.1%を切った世界がいよいよ示現してしまった。日銀のアナウンスメント効果は大きかったと言わざるをえない。確かに大きかったのだが、市場はその意味を測りかねているようにも見える。その意味ではすんなりと一方向の動きだけにはならないのかもしれない。なんにせよ新たな次元の局面へと移行した相場に私たちは突入することとなった。
そんなことをダーツ大会で手にしたアマゾンギフト券を手にしながら考えつつ帰路についたのだった。