馬車郎の私邸

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衆愚の選択は常に増税を忌避し、財政の悪化は雪だるまのごとく膨らんできたこと

 議会政治の本場、英国議会の権力伸長は、国王が議会による承認なしに新たな課税はできないとするマグナ・カルタの承認に端を発する。国家予算策定には財源が必要であり、財源とは税収である。課税の方法は議会政治の重要なテーマである。

 現代の日本において、増税は不可避との認識が広まり、いよいよ増税の機運が高まっている。2010年の公的債務は862兆円であり、特に戦争もしていないのに、ここまで巨額の債務を膨らませた国は、史上存在しないといっても過言ではない。日本は最も高齢化が進んでいる国でもあり、まさしく未知の領域に突入している。

 では、なぜ日本は財源を確保せず、国債発行によってここまで巨額の債務を積み上げたのか。結論から言うと、社会保障費に対して適切な比率の税負担を国民がしてこなかったからだ。今もなお、日本の税金・社会保険料の国民負担率は、極めて低い。OECD29カ国中で、下から4番目であり、下には韓国、トルコ、メキシコの3国しかない。また、消費税・付加価値税の税率は5%であり、この数値はカナダと並んで最低である。つまり、社会保障費に見合った負担を国民はしていない。

 もちろん、増える社会保障費に対応した財源確保の仕組みを構築できず、国債発行に頼った政治家や官僚にも責任はあろう。しかし、増税を幾度も拒否し、社会保障費に対する負担を回避してきたのは国民である。このことは新税導入や税率引き上げを行う、あるいは行おうとした政権がつねに反発を買ってきたことからわかる。オイルショック後の赤字国債発行を受けて、大平正芳内閣が消費税導入を唱えたとき、国民の猛反発を買い、1979年の衆院選で自民党は過半数割れとなった。1986年には、中曽根康弘内閣が売上税法案を国会に提出するが、やはり野党や世論の猛反発を受けて廃案となった。次の竹下登内閣は、3%の消費税導入にこぎつけたが、リクルート事件の影響もあり、内閣支持率は歴代最低の4.4%となった。細川護熙内閣は、1994年に7%の国民福祉税構想を発表したが、世論の反発によって撤回した。橋本龍太郎内閣は1997年に、財政再建を目指し、消費税を5%に引き上げたため、その後の参院選で惨敗し内閣は総辞職した。
 
 以上から明らかなように、足りない予算の財源を増税によって確保することを、国民は忌避し続けてきた。次の選挙でも、増税は大きな争点となるだろう。菅直人首相は、財務大臣の頃から、増税による経済成長という奇怪な主張を掲げている。だがこれは、増税は悪いことではないという印象操作である。消費税率引き上げによって仮に税収が増えたとしても、その税収を介護分野に投入して雇用が創出されるだろうか。疑問点も多いが、増税は不可避との見方が国民に共有されつつあり、一つの方向性となっている。しかし、その一方で何を捨てるかの議論がされていない。手厚い社会保障が望ましいのは当然だ。だが、手厚い社会保障をあきらめるべきという意見も少しはあってもいいのではないか。

…増税はいやだし、老後も不安だけどさ。

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