水沢めぐみ「3月の第2ボタン」集英社

え～と、通算で水沢先生のコミックスは55冊目くらいなのかな？
デビューが1979年なので、30周年ですね。
まさしく大御所です。

「キラキラ１００％」の8巻は来月4月15日のようで、
こちらは増刊号に描いた短編を集めたコミックスです。

・「1月のメリーゴーラウンド」：平成21年冬増刊

少女マンガ全体で、年下の男の子と主人公がくっつく話って
そういえばあまりない気がします。

「りぼん」限定で色々考えると、
「ママレード・ボーイ」で蛍くんが、
光希と遊の仲に横槍を入れてきたぐらいか。
年上の男とくっついた例となると、まずは
椎名あゆみ先生の「ベイビィLOVE」が思い浮かぶ。

基本的に同学年が多いわけですが、
実際のところ年下の彼氏ってどうなんでしょうね。
大学生なら、３男と１女はありがちだけど、
逆に１男と３女の組み合わせはなかなか聞かないですね。
自分としては、この辺気になるところです。

さて肝心の本編ですが、さすが水沢先生、手堅いです。
2つ年下の男の子との再会、そしてペットショップのバイトを通じて、再び二人は親しくなっていくが、その二人の関係が気になってしょうがない主人公の友人が乱入し、そして二人の仲は―

話の展開が、読みきりの枠に過不足なくまとめられていており、
それでいて読者のツボをおさえる熟練の技が光る。
水沢先生らしい、心地よさを味わえる小品でした。

終盤の「年齢を変えることはできないけど、
それ以外のことなら何でもかなえてあげたい」
というセリフは、全国の年下彼氏を代弁しているように思える。

・「3月の第2ボタン」：平成22年冬増刊

表題作で、最新の読みきり作品。
季節的にもタイムリーなタイトルです。
懐かしいですね、制服の第2ボタン。
中学時代は遠い昔になった気がします。

今でもこういう慣習はあるのかな？
学ランじゃなくて、制服がブレザーの場合はどうなんだろう？
公立はたいてい学ランだけど、私立だと学ランは男子校以外はなさそう。
いや、私立は中高一貫が多いからあんまり関係ないのか。
制服の第2ボタンの慣習は、中学卒業にはあるけど、
そういえば高校卒業のときにはあったっけ？
というか、そもそもいつごろからこんな慣習が成立したんだ？
20090301189

疑問がつきない制服の第2ボタンですが、このお話は、とある幼馴染二人と第2ボタンの話。二人の微妙な距離感が上手い具合に描けていて、見てるこっちがむずがゆくなるような気分は、ある意味で少女マンガの醍醐味といえる気がします。

ちなみに途中でドキッ！とするシーンがあるのですが、自分にはラリアットを突如放ったのかと最初思ってしまい、別の意味でドキッとしました（笑)
実際は、自転車が突然来たのでかばったところ、その勢いで茂みに…というキュンとするシーンです。
少女マンガでいきなり、ショートレンジ剛腕ラリアットを放つ展開はさすがにないだろｆ＾＾；超展開すぎるｗ

とはいえ、画像を比較するとやっぱり似ていませんか？小橋選手のラリアットとそっくりです。

せっかくのいいシーンだけではなく、さらには最後の告白シーンでもダメ押しのラリアット2発目が炸裂！！
コマからコマへ目をパッと移すと、ラリアットに見えてしまう不思議。

そんな話はさておき、主人公の不安や逡巡、心の揺れ動きを描き、落としどころをきっちり決めて、カタルシスを生み出す水沢先生の読みきりは、読んでいて安心感があります。
いい意味で、きれいな型に収まっていて、キャリアに見合ったいい仕事をなさっているなと思う次第です。

・「女の子はゲンキ!!」
　：平成12年冬増刊、
　　２,３話描き下ろし

平成…"１２年"……？
なんと１０年前の作品。
小学生同士の厄介な人間関係を描いた意欲作(?)だ。
衝突や不信、懐疑を乗り越えて、人の絆は強くなる。
「雨降って地固まる」を絵に描いたような作品です。(実際絵に描いてるけどね)

・「バスケットガール!!」平成17年5月号別冊付録

こちらは5年前。
この頃は本誌を買うのをやめてた頃なので未読でした。
今度は「好きこそものの上手なれ」を体現しています。
米長邦雄永世棋聖が言うとおり、「好きな者は飽きない。それほど好きでない者は飽きる。」のだ。だから、同じことをやっていても、量と質の両面で差が出る。
人間の伸びしろは、どれだけ好きかによって決まる部分もある。
「好きになること」もまた、才能の一種なのかもしれない。