馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

「三銃士〈下〉」 (岩波文庫) アレクサンドル・デュマ

「三銃士〈上〉」 (岩波文庫) アレクサンドル・デュマ


上巻でのイギリス行で、ダルタニャンと、アトス、ポルトス、アラミスの三銃士たちの絆はますます深まる。
4人の従者たち、プランシェ、グリモー、ムースクトン、バザンの描写も心なしか増え、脇役としていい味を出している。

ミレディーに夢中になり、彼女の家に通いつめるダルタニャンだったが、彼に心寄せる女中のケティにダルタニャンを憎むミレディーの真意を教えられる。ミレディーの想い人であるワルド伯爵宛の恋文を利用し、復讐を計画する。

というわけなのですが…
ここでダルタニャンのとった行動が、読んでいて、
苦笑いせざるを得ないひどさf^^;
いや、そもそも君の思い人はボナシュウ夫人ではなかったか?
ミレディーもなかなか悪い奴だが、それにしても、と思う。

しかし、そのこともアトスの秘密がいよいよ明かされたことで、
ミレディ許すまじ!と、思わずなってしまうのだから、
デュマの筆運びには恐れ入る。

この巻ではアトス、ポルトス、アラミスの出陣準備のくだりが三者三様で面白い。とりわけ、無口なアトスがこの巻では特にキーパーソンであり、セリフが多くなりはじめ、上巻とはまた違った趣を帯びているようだ。

会話文がすらすらと流れるように続いていく独特の文体がデュマの持ち味だ。
流暢なセリフが、ダルタニャンと三銃士、そしてその従者たち4人の口から流れ出てくる様が、なんとも面白い。

この巻のハイライトである「サン・ジェルヴェの朝食」では、特にこの"会話体"が出色の出来だった。宰相リシュリューとの丁々発止のやりとりはなんとも心憎い。そして、ここでもやはりアトスである。彼の一計がミレディーの行動を食い止めた。

その後、ダルタニャンと三銃士たちは、バッキンガム暗殺にからむミレディーの陰謀を阻止すべき密談をするため、戦場の最前線で朝食をとるという奇想天外な賭けをして、宰相リシュリューの密偵の目を欺いたのみならず、フランス軍の英雄として帰還する。なんとも、愉快痛快な顛末である。

しかしながら、この巻の裏の主人公はミレディーである。後半部分は視点はミレディーに変わっており、彼女の恐るべき復讐への執念と豪胆な行動を見ることになる。敵が逆に一矢報いるという展開はあまりないのではないだろうか。

決着のシーンは、現代人からするといささか首を傾げたくなるが、当時のフランス人はむしろ読んで、せいせいしたという感じだったかもしれない。

岩波文庫の「三銃士」上下巻はここで終わりだ。だが、ダルタニャンも銃士となり四銃士になったあとの話は実はまだ続く。昔、早稲田の図書館の地下書庫で借りて、講談社から出ているハードカバー版で読んだことがある。ハードカバーも講談社文庫版も絶版なのだが、最近になって、3、4巻を入手したので、また読んでみようと思う。20代から40代へと、登場人物が年を取って再び登場する様に、出会ってみたいから。