馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

種村有菜「桜姫華伝」第7話 -りぼん2009年7月号感想その2-

「りぼん」タグというのを新設しました。
「りぼん」関連の記事は↑のリンクか、右側のカテゴリの欄からクリックして下さい。

りぼん7月号感想 その1

~あらすじ~

桜姫の女房である淡海(おうみ)は、ある男に脅迫を受けていた。
「中納言が毒蛇を放ったことを話したら
今飲んだものが破裂して死にますよ。
桜姫を僕の所に連れて来たら助けてあげよう。
明日の日没までに果たせなかったら、やはり殺す。」

淡海は葛藤する。
姫は所詮妖古と同じ化け物、人間の側にいるほうがおかしい。
自分は死にたくない、死にたくないが…

桜姫は淡海が話しかけてくれたので、仲直りができたと喜び、
一緒に散歩しませんかとの誘いについていった。

一面にシロツメクサが茂り、夜露が降りて月明かりに光る光景、
そこは淡海の屋敷が昔あった場所だった。
淡海の父はこのあたりの受領であったのだが、ある時妖古によって屋敷の者は皆殺しになった。
淡海自身は辛くも逃れ、遠縁にあたる中納言に引き取られ、青葉の紹介で桜姫の女房になったと言う。

淡海は涙ながらにつづけて語る。
「もののけも妖古も 人外のものは私をあの日に戻します
憎くて怖くて恐ろしかった…
だから朝霧のことも拒絶してたし
姫様の事も受け入れることはできなかった。
姫様がおてんばで素直で優しい方だって
わかっていたはずなのに…」

拒絶してたのは朝霧や桜姫ではなく、
あの日何もできずに逃げ出した自分を思い出すこと。
淡海はそのことに思い至った。

桜姫は答えた。
淡海の両親たちを殺したその妖古も私が倒す。
次にここに来た時淡海がもう泣かなくていいように。
その言葉に淡海は「ずっとずっと姫様を信じています」と言葉を返した。
2009060317380000

死にたくない…
でも私だって本当には逃げたくなかった、
強くなりたかった。
今 剣をとる!
決意を込めて、淡海は蛇を放ったのは中納言と明かす。
中納言が青葉の腹心であると信じていた桜姫は、驚きを隠せない。

中納言と妖古らしき男の居場所を教えた淡海に戻るようにと言った桜姫。
だが、その答えは
「私にはもう無理です」

「朝霧 今までごめんね 姫様をお願いね」と言い残した淡海の顔は
ひびが入り、皮膚は剥がれ落ち、禍々しい瘴気を放つ。
次の瞬間、見るもおぞましい化け物―髪を振り乱した腕持つ大蛇のごとき妖古と化した!!!
2009060317330000

妖古はもはや豊かな髪以外に淡海の面影はなく、破壊衝動のもとに桜姫に襲い掛かる。
白き狼に姿を変えた青葉が加勢したが、
桜姫は戦うことができない。
淡海を斬ることはできない、だが元に戻せる方法はない。

ためらう桜姫に一撃を加えんとする妖古から、桜姫を守ったのはあの男―中納言を裏で操り、淡海を脅していたあの男だった!
自身も妖古、いや月の民と思しきその男は、かつて淡海であったそれを、崖から突き落として殺した。

愕然とする桜姫に向かい、男は悪びれずしれっと言い放つ。
「やはりもともと能力のない人間を
妖古にしても役に立ちませんね。
破壊衝動しかないうえに言葉も発せられないとは。
まぁ、時間稼ぎにはなりましたが。」

淡海を妖古にしたばかりか、手にかけた男を前に、
桜姫の怒りは頂点に!
「許さない!あなたを絶対に許さない!!」

次号、激戦必至!!!
2009060317340000



種村先生の素晴らしいところは、大胆なところだと思う。
現実に縛られない自由な発想で、果断に物語を展開する。
島左近が関ヶ原の戦いの際に、「今時の大名には明智光秀松永久秀のような果断にかけている」とぼやいたのは有名な話だが、同じように種村有菜に比肩しうる豪快な話を描く作家はいないものか。

とはいえ、ありなっちばかりの連載陣ではそれはそれで色々まずいと思うので(笑)、それぞれの立ち位置で多様な個性があったほうがいいけれどもねf^^;
ただ、春田先生あたりは、もっと登場人物を出して愉快な話を思い切って描いてほしいと思える。
人物の心情を丁寧に、というのはいいけれども、人の心の揺れ動きは、大きな話の展開があればこそと思います。

さて、本編ですが、2話以来の衝撃の展開ですね。
長年仕えて来た淡海の最期がこのような有様とは残酷な運命…
テーマが「運命」であると種村先生は語っていますがまさにそのとおりですね。

淡海には2話で青葉に通じていたり、桜姫を化け物と侮蔑するなど、目端の利く小物かと思っていました。
しかし、種村先生はそんな、通り一遍で浅はかな展開にはしませんでした。
キャラをしっかり使い尽くすわけです。
私にとって今回の話は、「神風怪盗ジャンヌ」でのフィンの裏切りや、第2話のラストに匹敵するインパクトでした。
ビジュアル的にも鮮烈でしたね。

「上げて落とす」というのは、
物語の手法として効果的です。
今回もちゃんと気持ちが通じ合って和解か―と思わせた後に、一気にドカーンと衝撃の展開へ!
と心憎いばかりの急転直下の展開です。
あたかも垂直落下式ブレーンバスターのようです。
参照↓


「上げて落とす」ということでは、もう一つ、
ここ数ヶ月にわたり見ていた大河ドラマ「太平記」を思い出しました。
第47話「将軍の敗北」の話です。 (あらすじと解説はこのリンクをクリック)
弟の足利直義に敗れた足利尊氏と執事・高師直。
その対話で、主従の関係が再確認され、師直は案外いいやつ―と思わせた後に待ち受ける、彼の無残な最期。
(といってもこれは実は自業自得なのだが…)
大河ドラマの場合は40分の話をたくさん見てきた後に、こういう展開が来るわけだから、たまらないですね。

最近は、桜姫、青葉、藤紫の三者三様の思いを中心に描いていたので、静から動への転換が実に見事でした。
種村先生はこのごろますます円熟味を増してきたように思えます。
来月号が待ち遠しい!

「太平記」第47話「将軍の敗北」

にほんブログ村 漫画ブログ 少女漫画へ
にほんブログ村にほんブログ村 漫画ブログへ
にほんブログ村
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村