馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

「今の日経平均株価を冷静に検証するための7つのポイント」

今日の日経平均株価 は895円15銭(4.6%)安の1万8540円68銭で大引けを迎えた。中国、欧州、米国総崩れの様相を呈しており、多数のサポートラインをあっという間に突破したことを考えると、米国株・日本株ともに年初来高値から2割の調整を想定して慎重に対処すべきだ。たとえば、ドイツのDAX指数はすでに年初来高値から20%の下落であるためだ。

日経平均株価はすでに5日間で2080円安の急落であり、じり高基調の上半期とは異なり波乱の下半期と言えよう。年内の米国利上げ観測は遠のいてドル/円は一時116円台、原油は40ドル割れでリーマンショック後安値をまた更新、NYダウは23時現在16,020.40ドル(H:16,459.75L:15,370.33▼2.67%-439.35[23:05])、日経平均先物 CME(円建て)は 17,475.00(-1066円[22:56])で推移しているため、明日はもう一段安は覚悟せねばなるまい。
chart


このような逆境の中で、私達が今できることは、思考停止せずに今起きていることを直視することだ。チャーチルの言葉を引用するなら、「金を失うのは小さく、名誉を失うのは大きい。しかし、勇気を失うことはすべてを失う。」のだから、「恐怖は逃げれば倍になるが、立ち向かえば半分になる。」ことを思い起こして、「悲観主義者はあらゆる機会の中に問題を見いだす。楽観主義者はあらゆる問題の中に機会を見いだす。」態度で覚悟を持って荒れ相場に向き合うことだ。

名将野村監督が好きな言葉に、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉がある。
松浦静山の剣術書『剣談』からの引用だそうだ。この言葉意味するところは、「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に何か負ける要素がある。勝ったときでも、何か負けに繋がる要素があった場合がある。」というものだ。感情は一度脇によけておいて、虚心坦懐に今回の敗因分析と明日の勝利に向けた思考を巡らすことが生産的だ

そこで、以下の7つのポイントをもとに今日の日経平均株価の水準を検証する。相場が混乱に陥っている時こそ、冷静に判断材料に向きあおう。

1.騰落レシオ
騰落レシオとは、例えるなら、相場の過熱感を測る体温計だ。一般的に東証一部全銘柄を対象25日間の値上がり銘柄数合計を25日間の下がり銘柄数合計で割って求める。直近の騰落レシオを見てみると、17日(月)20,620.26円の騰落レシオ120.97で、24日(月)18,540.68円は74.99である。120%以上……過熱に警戒、100%  ……中立 70%以下 ……底値ゾーンと考える。つまり、今回の場合は定石通りに120%越えの月曜日の翌日に手仕舞い売りをするだけでも大怪我につながらずに済んだわけである。単純な指標かもしれない。しかし、基本に忠実に騰落レシオをしっかり見て日々の取引をするだけでも、十分有用だと言えよう。

2.ストキャスティクス
ST.Fast(9日)  0.91 (前日 0.15)
ST.Slow(9日)  4.09 (前日13.26)

詳しい解説はリンクを見ていただくとして、一般的には30%以下にラインがある状態を売られ過ぎ、70%以上にラインがある場合を買われ過ぎの水準と考える。スロー・ストキャスティクス4.09はなかなかお目にかかれない数値だ。売られすぎと単に考えても良いと思う。しかし、異常値が出るほどの下落局面であるともみなせる。急騰・急落時はふだん使っているテクニカル指標がそのまま機能すると期待してはいけない。

3.RSI

一般的にRSIが70%(80%)以上であれば相場は買われすぎ、逆にRSIが30%(20%)以下であれば相場は売られ過ぎであると判断する。本日8/24のRSIは18.71で売られすぎの圏内にある。
RSIは逆張り用のテクニカル指標として最も有効な指標の1つではある。ただし、比較的うまく機能するのは保ちあい、あるいは穏やかなトレンド相場だけであることに注意だ。

4.ボリンジャーバンド 
標準偏差とは、統計で使われる用語で、膨大なデータがあるときに、そのデータが平均からどのくらいばらついているのかを表すものです。バラツキが集まる確率を「σ(シグマ)」で表示します。ボリンジャーバンドは株価のばらつきの範囲を見るという目的があるので、移動平均と株価の標準偏差をチャートに表示します。したがって、チェックする移動平均線にあわせて計算するのが一般的。(25日移動平均線など)「σ(シグマ)」の考え方は、株価が急騰したときでも、99.7%の確率で移動平均線の±3σの範囲に収まるという意味で使われます。

日経平均のボリンジャーバンドは通例上下2σの範疇に収まっている事が多いように思える。日経平均の24日終値は18,540.68円、ザラ場安値18,498.80円であった。-4σが18429円であることを考えると、いかに異常な状況まで売り込まれているかお分かりいただけよう。

5.移動平均線と乖離率

まず、日足チャートでは、25日移動平均線20392円からの乖離率はすでにマイナス9.72%に達するほどに下落している。2014年2月4日にはマイナス10.59%乖離率拡大の経緯ありという点はひとつの参考になるだろう。

週足チャートを見ると、今年については13週と26週の移動平均線がサポートラインとして機能していたものの。13週と26週の移動平均線は下にブレークされてしまった。次は52週移動平均線で長期の趨勢を考える必要がある。どうやら、52週移動平均線は18100円前後に位置するようだ。52週移動平均線は、昨年10月にも割り込んでおり、財政の崖やエボラ出血熱で騒いでいた頃にあたる。今回についても52週移動平均線を割り込んで切り返せるかどうかが分水嶺になるであろう。逆に戻りのめどは200日移動平均線近辺の心理的節目19000円前後が想定される。
jp



6.酒田五法「三空叩き込みに買い向かえ」
三空とは、ローソク足とローソク足の間に空間ができる形。これを「空」または「窓」と呼びますが、これが3回連続で出現するパターンを酒田五法では三空といいます。三回も連続して空(窓)を明けながら、中間の価格帯を飛ばして取引が行われたわけですから相場の勢いが非常に強い事を示します。空(窓)が何日も埋まらない場合には、新たなトレンドの始まりとしてチャート上、重要なポイントとなる可能性が大となります。


CME日経平均先物の様子を見ると、明日は1000円安は覚悟する必要があろう。窓を開ける急落で寄り付く可能性が濃厚だ。「三空」示現となれば、格言通り「三空叩き込みに買い向かえ」も一興ではある。

7.株価収益率(PER)

2015-08-24終値 18,540.68円のPER14.63倍は確かに割安感がある。まして明日下がるならば、PER14倍割れも期待できよう。株価指数の位置を考えるとき、来期の予想EPS(1株利益)の何倍程度まで買われているか、売られているかを見るのは常套手段だ。上半期の日経平均PERは16~18倍台で推移することが多かったことを考えるとファンダメンタルズの点からは明らかに売られ過ぎと見ていいだろう。逆張り大好きの日本の個人投資家や、国内外の年金基金など長期志向の機関投資家など、バリュー株・割安株好みの投資家たちがよだれを垂らして、待ち構えている水準だ。彼らが冷静さを取り戻せば、空売り筋の買い戻しと合わせて即刻買い戻されるであろう。

しかし、16/3月期の予想EPS(1株利益)1,267.31円がどのように変化するかは注視する必要があろう。なぜなら中国の株式市場の指数はともかくとして、中国の実体経済の落ち込みが日本の企業の儲けにどの程度反映されるのか未知数であるため、コンセンサス予想EPSにブレが生じると思われるからだ。4~6月期決算の日系企業の決算は概ね良好であったものの、通期の見通しを上方修正しなかった銘柄が先導するカタチで、輸出銘柄の下落は6月初頭よりすでに始まっていた。9月の半期決算後の通期見通し上方修正に期待するのは避けて、安易な割安株買いは戒めながらも、強い利益成長が期待できる銘柄を狙うべきだ。

以上7点のポイントを踏まえた上であたらめて今の投資環境を考えよう。まず、中国の政策とその反応は未知数なので、まず目先は、27日の米国GDP4-6月期の改定値、27~29日のジャクソンホール講演(出席予定はイエレン議長ではなく、スタンレー・フィッシャー副総裁)に着目しよう。米国の利上げに対するFRBのスタンスが示唆されると予想される。今の株式市場の混乱を考えると、年内の米国利上げを強行すると一層の混乱を招くため、まず9月利上げはないとみていいだろう。米ドル高の圧力は減退するだろうし、為替市場の動きを観るとすでに織り込みつつある。たとえば12月ないし、来年からの米国の利上げが行われることが明快になれば、視界、見通しがクリアになり、かねてからの不透明要因がひとつ減るので買い戻しに向かう動きもでるはずだ。

その一方で、チャートの動きも注視しておこう。Market Hackでは、明日の米国株のローソク足が、相場の転換点を示唆する十字足のカタチになるかどうか着目しているようだ。広瀬隆雄氏の重要な指摘は以下のとおりだ。
ギャップダウン(窓開け)オープニングした後、寄り引け同時足(=十字架のようなカタチ)を至現したら、そこが目先のボトムです。なぜ日本じゃなくアメリカが頼みの綱なの? ということですが、これはチョッと考えれば、すぐわかることです。まずドル安は米国の輸出企業にとって朗報です。つぎに9月の利上げは、ほぼ確実に、100%、間違いなくキャンセルされたと言って良いので、またチョー低金利がつづいて呉れるわけです。これは米国企業や消費者にとってありがたい……。
つまり理詰めに今起こっているマーケットの現象というものを整理すれば
1)米国株にはそれらがプラスに働き
2)日本株にはそれらがマイナスに働く
ということです。
日本株の場合、これまでの相場の根幹を形成してきた円安とか米国の利上げという材料が吹き飛んでしまったので、そもそも「上がる根拠」が無くなりました。ましてやインバウンドとかの「つかの間の表層的な現象」に過ぎないテーマなんて、あっという間に玉砕です。


程度はさておいて、今の状況を簡略化して理解するには十分な説明だ。
以上を頭に入れた上で「モンテ・クリスト伯」第7巻、アレクサンドル・デュマ、岩波文庫からこの言葉を思い出し、覚悟を決めて明日の相場に向きあおう。

待て、しかして希望せよ!
                      あなたとの友なる、
                      エドモン・ダンテス
                      モンテ・クリスト伯爵