馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

「紳士同盟+」第11巻特装版、種村有菜

良くも悪くも”とんでもない”作品だ。
すさまじいマンガだった。
ひとつのマンガとしてみるか、”りぼん”のマンガとしてみるかで評価が分かれると思う。

まずは、前者の見方から。
さすが技量の高さもうかがえるし、様々な仕掛けを満載した一大恋愛絵巻として、種村先生の円熟を感じさせるいい作品だったと思う。
さながら源氏物語のようでもあった。
何でもあり、のハチャメチャさと強烈な勢いは見ごたえがあった。
私見だが、マンガは楽しんだもん勝ちだと思うので、自分にとっては面白かった作品の部類に入る。

しかし…
"りぼん"の看板作品としてはいかがなものか。
もともとりぼんのタブーを破壊してきたが、この作品でさらに一線を越えた感がある。
11巻の柱にある、種村先生のコメントによれば、
キャラクターの誰と誰がくっつくかわからないフリースタイルな恋愛を描こう!と思いました。
(中略)
私は男×男とか女×女とか…そういうものが人より苦手なほうです。
しかし、それも描こうと決めた理由のひとつですね。」

フリースタイル大いに結構、BLに百合も結構………

いや待て、それでいいのか!?

なるほどフリースタイルでアブノーマルな恋愛満載で、エキセントリックな面白さがあったのは確かだ。
BL801百合も今や大いに日の目を見て市民権さえ得つつあるし、腐女子の友人がたくさんいる(笑)自分は、そういったものがある意味優れた表現様式であると認めることにやぶさかではない。

だからそういった面白みを取り入れている点について、特にいちゃもんをつけようとは思わない。
しかし、「りぼん」の主要購買層は小学生中高学年、中学生の女の子である。
そういった層が、「紳士同盟+」という作品を読んでいるのだ。
40万部以下まで部数が減った「りぼん」で「紳士同盟+」は看板作品を勤めてきた。
なかなか、恐ろしい事態ではないか?

アンサイクロペディアで以下の引用のように揶揄されているが、それも致し方ないとさえ思う。
種村有菜(たねむらありな)とは信者の腐女子兼アンチが崇める三大神のひとりで腐女神の長女。少女漫画雑誌「りぼん」で連載を請け負う漫画家。自称「有菜っち」。

彼女の書く作品は夢あふれる描写で有名で、多少現実的でない点を上手くカバーしている。「恋愛至上主義」を自称しており、りぼんではタブーであったセックス描写・BL要素など様々な恋愛形式を取りいれ、BLを知らないピュアな子どもから腐女子まで幅広い層に受け入れられた。作中に時々挿入される怪しい自作の詩も好評を得ている。結果少女漫画業界を汚染し、悪影響を広めた。


苦笑するほかないが、当たらずとも遠からずだろう。
ある意味腐女子量産システムとしても機能した側面も否定できない。
そして、それは「りぼん」の看板作品なのだ。
仮に中学生の娘がいるとして「紳士同盟+」を読んでいるとしよう。
親としてはどうだろうか?
少なくとも大いに推奨する親は、多くないだろう。
水沢めぐみや柊あおいなら子供に読ませても安心なのだが。
いいか悪いかは別にして、価値判断が分かれることだけは確かだ。

「紳士同盟+」を読んで、そのすさまじさに圧倒されたし面白いとも思った。
男×男も女×女をも(実験的ながらも)描いて、男女の恋愛描写にはえぐさ、どぎつさがなかったわけでもない。(主人公の父親が、恋した相手をその恋人から強引に奪い取り、さらに籠の鳥の状態にして、半ば手篭めにするように自分のものにしてしまうとは…)
全体を通して、すごいものを見せてもらった、というのが正直な感想だ。

だが、ここ数年の「りぼん」の現状を見ると、言葉が出なくなる。
芸術として、ひとつのマンガとしてならば、種村有菜の「紳士同盟+」は、私個人の思いとしては素晴らしい作品だと思う。
しかし、「りぼん」と絡めて考えると、何とも言えない哀惜の感が漂う…
種村有菜のこの作品に匹敵する存在が「りぼん」になかったことが問題だ。
双璧をなす作品がひとつでもあれば、それぞれが光り輝いたであろうに。

これ以上のことは、何と言ったらいいかわからない。

関連記事:
りぼん2008年7月号感想その1
りぼん2008年7月号感想その2
りぼん2008年8月号感想
りぼんっ子への100の質問
増刊号に、腐女子堂々推参!! ―801の日―
春田なな先生&酒井まゆ先生サイン会
りぼん2008年9月号感想
りぼん2008年10月号 感想
りぼん2008年11月号 感想
「ロッキン★ヘブン 」第8巻 酒井 まゆ
「チョコレートコスモス」第4巻 春田なな