馬車郎の私邸

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「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に~」川口雅代(as片桐彩子):愉快なオノマトペで、若き日の恋を振り返る名曲【名曲紹介61】

名曲紹介60『「SMILE:シンガーソングライターとキャラクターの高度な融合!』で、片桐さんはカラオケでは最初は恥ずかしがりつつも、特殊イベントで「恋はほどほどに」という曲を歌ってくれるのだと書いた。そういうわけで、川口雅代さんのボーカルが堪能できる「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に~」を今日は紹介したい。

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「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に」劇中歌唱シーンより

「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に~」は、劇中で歌唱シーンがあるということで、片桐さんのキャラソンのなかでも特に印象的な曲だろう。ゲームのなかで歌がまるごと1曲流れることは当時は珍しい時代だったのだ。なにせ、95年12月発売の「テイルズ・オブ・ファンタジア」で、OP主題歌が搭載されて注目を浴びたくらいだ。
「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に~」は、「ときめきメモリアル ボーカル・ベスト・コレクション アンコールスペシャル」にも再録されるなど、粒ぞろいの片桐さんのキャラクターソングのなかでもやはり人気が高い。2005年12月31日に行われた「ときめきメモリアルスーパーライブ"forever",COUNTDOWN2006」における"紅白歌合戦"で、「2」佐倉楓子役・前田ちあきさん、「3」相沢ちとせ役・川口宰曜子さんが歌うのを生で聞けたのは良い思い出だ。
作曲はシタール妹尾氏、編曲は古川もとあき氏と、安定のコナミ矩形波倶楽部のメンバーだ。ゲーム内のイベントのため、劇中のサウンドにフィットした質感でまとまっていて、安定感がある。弾むようにリズミカルな調子なので、聴いていて楽しくなる一曲と言えるだろう。作詞は大内正徳氏。勘の良い方はおわかりいただけただろう。以前ご紹介した「名曲「フィフネルの宇宙服」の作曲者である。もちろん、歌詞はユニークなものだ。ざっと見ていこう。

「あきらめた…」あなたにはお似合いの
つき合ってる人がいることわかってる
私より可愛いと思えない
あんな娘選ぶセンスだから釣り合わないのよ
落ち込んでた時 不意に優しい言葉かけられ
芝居じみててわざとらしいけど惹かれた私

たまたまそばにいたら だんだん目が慣れて  じわじわ好きになる  もともとタイプじゃない 全然理想じゃない  さんざんわかってる

「あきらめない!」あなたにはお似合いの
私という人がいることわからせる
髪型も音楽もファッションも
あんな娘といちゃなおらないわ私に任せて

口ではきつい私もただの女の子だから
迷惑なのは百も承知 でも押さえられない

こつこつ電話をして ときどき食事して  着々と近付く もじもじしてたり ぐずぐずしてちゃダメ 好き好き愛してる

情熱は相手の立場 考えなくなる気持ち
謙虚な愛が この世で一番 大きな力

ananを真似てみて さらさらな髪して そろそろ振り向いて なかなか思うように アツアツになれない まだまだ頑張るぞ

ふらふらした態度を だらだら続けられ  いらいらしてきたわ  しぶしぶ会ってたのね うすうす感じてた ばかばか大嫌い


おわかりいただけただろうか、サビを中心に23種類ものオノマトペ(状態や感情、あるいは動物の鳴き声や物音を、模倣したものであり、その中には「擬音語」と「擬態語」がある)や繰り返すタイプの言葉が使われている。研究にもあるように「平家物語」の音調の良さはオノマトペに負うところも大きいが、「恋はほどほどに」も日本語の語呂の愉快さを楽しめる。オノマトペを活用したリズミカルな歌詞が、弾むような曲調と川口雅代さんの歌声をつなぐ役目を果たしているからだ。
「恋はほどほどに」は片桐さんのキャラソンというよりは、ときメモ世界中におけるヒットソングなのだろう。積極的な女の子が横恋慕からアプローチの末に結局は失敗するという筋立てのわかりやすい歌で、ある意味でしょうもない内容だ。しかし、どうだろう。それでも恋の中で感じる気持ちをたくさん盛り込んでおり、歌詞のそこかしこで、何かが聞く人に引っかるようになっている。色々あるがたとえば、この部分が面白い。
「情熱は相手の立場 考えなくなる気持ち
   謙虚な愛が この世で一番 大きな力」

全般にはしゃいだ感じのこの曲で、大サビ前で突然悟ったようにゆったり語りだすので意外感があり、「おい、急にどうした」となってしまうところが、なんだか面白い。だが、真実だ。恋愛は情熱が過ぎても、効果的なアプローチになるとは限らない。謙虚な愛とは真摯さや誠実さを伴ったものだ。愛という字は真ん中に心と書く。自身のエゴを離れて、相手のためを思う無私の気持ちとは、すなわち真心である。「恋はほどほどに~過ちを2度繰り返さない為に~」は、若き日の恋について、夢中な気持ちや情熱への傾斜、失敗の思い出と反省を包括的に織り込んだ名曲なのだ。「ときめきメモリアル」という"郷愁"を象徴するタイトルに、まさにふさわしいと言えよう。
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