馬車郎の私邸

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「鬼滅の刃」が面白い理由は、7つの名作漫画のエッセンスをちょうどよく配合しているから(大筋ネタバレなし感想)

「鬼滅の刃」が面白い理由は、名作漫画のエッセンスをちょうどよく配合している点だ。「鬼滅の刃」を読んでいて確信したことがある。吾峠 呼世晴(ごとうげ こよはる)先生とは、きっと漫画の趣味が合う!ということだ。ジャンプNEXTのインタビューでは好きな漫画について、「『ジョジョの奇妙な冒険』から『クレヨンしんちゃん』まで何でも好き」と答えているそうだ。1989年5月5日 生まれということで、私と2歳しか変わらない。もしかすると、読んできた漫画が大筋かぶってるのかもしれない。

もちろん、「鬼滅の刃」が面白い理由は、いくつでも上げることができる。キャラクター、ストーリー、描き方…読む・見る人によって様々な見方がある。しかし、自分が最も強調したいのは、「名作漫画のエッセンスをちょうどよく配合しているから」だという理由だ。先行する作品群の良いところを程よく取り入れた上で、自作品に生かしている点が魅力の一つだ。単なる真似はパクリだが、咀嚼した上でエッセンスをちょうどよい塩梅で自作品に落とし込んでいる点が「鬼滅の刃」のオリジナリティである。順に影響を与えていると推測できる漫画を順に見てみよう。

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①「ジョジョの奇妙な冒険」:荒木飛呂彦、集英社

作者が好きだと述べている以上、作品への影響は大きい。ホラー映画の技法を荒木飛呂彦先生は意識して漫画に取り入れているが、おどろおどろしい鬼たちとの戦い、恐怖や不安、ドキドキ感を煽るために効果的に作中に取り込んでいるように見える。遊戯王の高橋和希先生も大いにジョジョからは影響を受けているようで、偉大な漫画の「黄金の精神」に加え、その技法のエッセンスも後進作家に受け継がれているというわけだ。

「ジョジョの奇妙な冒険」といえば、もちろん"呼吸"もポイントだ。第3部以降の"スタンド"バトル以前は、波紋/呼吸法を用いたバトルであった。主人公たちの戦い方の源として"呼吸"にあらためて着目した意義は大きい。スポーツ/武道における呼吸の重要性は言うに及ばず、近年はマインドフルネスの観点からシリコンバレーで瞑想が流行するなど注目が集まっている。鬼舞辻無惨さんは、落ち着いて深呼吸する習慣を身に着けていれば、無用な粛清をせずにすんだだろう。

②「ボボボーボ・ボーボボ」澤井啓夫、集英社

ジャンプ史上屈指の不条理ギャグ漫画とシリアスな「鬼滅の刃」に何の関係が?と訝しがる人も多いだろう。しかし、私は確信している。太文字で必殺技の名称をコマ内に書き込みつつ、すぐさま登場人物は必殺技を放っている。何だか必殺技の出し方・描き方・スピード感が実にそっくりだ。「○の呼吸・××××」と「鼻毛真拳奥義・△△△△」と、テンポも似ている。

一部の人物や特定の場面を除き、作中においてその人物が事前に何の技を持っているかについて、十分に織り込ませていないのは「鬼滅の刃」の一つの特徴だ。冗長な事前説明やフラグの類はなるべく廃して、凄まじいライブ感とスピード感でバトルも話も進んでいく。「BLEACH」のように間や余韻、余白、小粋な会話やポエムを楽しむのとはまた違った魅力があると言えよう。

③「るろうに剣心」和月伸宏、集英社

刀を使ったアクション漫画の代表例といえば、何と言っても「るろうに剣心」である。具体的な類似性は見出しにくいが、吾峠少年は全国の少年・少女と同じように「るろうに剣心」の漫画・アニメに夢中になったことだろう。もう一つ、重要な成功要因として、時代背景も大きい。女性の支持を集められなければ、少年ジャンプでの成功は難しい。「刀剣乱舞」を通じて、日本刀に魅入られた女性たちが近年増大の一途をたどっており、そうした時代背景の中で「鬼滅の刃」が人気を博したのは頷ける話だ。

④「寄生獣」岩明均、講談社

人間を喰らう異形の鬼たちの原風景は、名作「寄生獣」にも通ずるものがある(あるいは「バイオハザード」なども)。ここで抱くイメージとは、作者と読者双方だ。鬼舞辻無惨さんのファイナルフォーム含め、恐るべき鬼たちの風体、立ち居振る舞い、相容れぬ異形の存在とどう向き合うか、そこはかとなく通じるものがあろう。

⑤「ベルセルク」三浦建太郎、白泉社

説明不要のダークファンタジーの大河巨編である。某・少女漫画研究会で「ベルセルク」は部室に常備され、必読書とされていた。「鬼滅の刃」で際立つのは、身体欠損を描くことも厭わない容赦なきグロテスクな描写だ。また、相手方の鬼含め登場人物の壮絶な過去の数々は「ベルセルク」並みにどぎついものが多い。スピード感を持って、刺激的な表現で読者の感情を動かす点も「鬼滅の刃」の長所の一つだ。

⑥「アクロトリップ」佐和田米、集英社

りぼん6月号は「鬼滅の刃」コラボ8ページ掲載だそうだ。「ジャンプ」の姉弟誌「りぼん」といえば、「HIGH SCORE」はじめ曲者ぞろいのシュールなギャグ漫画の伝統がウリ。「アクロトリップ」は近年ニューフェースとして存在感を高めている。「鬼滅の刃」とは、絵柄の雰囲気がどことなく似ており、学校で友達がノートに書いた漫画を見せてくれるときのような親しみやすさがある。そんな素朴さも魅力の一つかもしれない。他の6つの漫画と格が違うって?その通り。知られざる名作なのだ。だからこそ読んでほしい。

DRAGON QUEST ダイの大冒険稲田 浩司、三条 陸

これも私も大好きな漫画。ラスボスの目的が「太陽」という点が共通している点面白い。鬼舞辻無惨さんは「目的:太陽の克服(手段:青い彼岸花探す、など)」、大魔王バーン様は「目的:太陽の獲得(手段:地上を跡形もなく消し去る)」。

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反面、スケール感の違い、器の違いが全く異なる点もユニークだ。大魔王バーン様は、いつでもワインを片手に余裕含み、智謀に富み、心が広い御方だ。度々幹部の離反にもあっているのは事実だが、作品全体を通じてみると、総じて人材を能力に応じて種族を問わず登用している。敵・味方を問わず器の大きさ・風格を見せつけるシーンが多い。

一方で、鬼舞辻無惨さんといえば、12人の幹部のうち4人を自ら粛清、何か情報を得たときの反応は短慮が目立ち、目的も自分一人が生き延びたいだけという身勝手なもの。ラスボスにしては小物だと受け止められても仕方ない描かれ方だ。

しかし、「鬼滅の刃」は「巨悪の絶対的な力」よりも、「矮小なる悪のたちの悪さ、妄執の厄介さ」を描きたいのかもしれない。鬼舞辻無惨の人物造形はそのことを示唆しているようにさえ見える。

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