馬車郎の私邸

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名曲紹介19:優美な旋律とアイデンティティ・クライシス:MOTHER3「こうもりさんツイスト」

「MOTHER3 」より「こうもりさんツイスト」を今日はご紹介しよう。ゲーム音楽からボス戦BGMの名曲と定評があるFF5「バトル2」ドラクエ5「不死身の敵に挑む」を紹介したあとで、定番でもない通常戦闘曲とはどういう了見か?と思われるかもしれない。しかし、隠れた名曲なのだ。
KOMORI
「MOTHER3」はそのシュールかつダークなシナリオゆえに、賛否両論ある異色作だ。戦闘BGMに刻まれたモンスターの鼓動に応じてリズムよくボタンを押す、サウンドバトルシステムを搭載している。それゆえ、戦闘曲は多数用意されており、サウンドプレーヤー機能で聴けるものだけでも250曲を酒井 省吾氏は作曲した。ちなみに酒井氏はどうやらゲーム下手らしく、岩田聡からは、「音楽家として優秀であると同時に、初心者モニターの代表として、ずいぶん貢献してきてくれたんです」と評されているそうだ。

「こうもりさんツイスト」はなんと、こうもりさん用の専用曲だ。「ジャジャジャジャ ジャジャジャジャ…」と始まるイントロは、ザ・ベンチャーズ「バットマン」を彷彿とさせる。影山ヒロノブ「鳥人戦隊ジェットマン」のイントロが、ポール・マッカートニー&ウイングス「ジェット」になんだか似ているのと同様だ。

メインパートは、「ジャジャジャジャ…」がバックで続く一方、優美な旋律が前面に出てくる。緩急も効いていて、何ループでも聴いていられる中毒性がある。怪しげな気分にもなってくる。「こうもりさんツイスト」の旋律のアレンジは、最終盤にメカポーキー戦のBGMである「ポーキーのポーキー」にも使われている。ファミコンの音源のような感じで随分とおどけた感じの曲なのに、どことなく哀愁が漂う不思議な曲だ。この曲に「こうもりさんツイスト」のアレンジがあえて使われているのは何かを示唆しているようにも感じる。

それにしても、「こうもりさん」という敵はなかなか妙だ。前作「MOTHER2」にも登場し、戦闘中に「立場を考える」という行動をとり、勝手に「混乱」状態になってしまう。スピードを生かして手痛い攻撃をしてくる一方で、「愛想よくなついて」くるときもあり、なんとも憎めないやつだ。上位種には「1」では「バイオこうもり」、「2」「3」では「こうもりさま」なんてのもいる。

こうもりといえば、イソップ童話の「卑怯なこうもり」を思い出す人も多いだろう。獣の一族が有利になると「私は全身に毛が生えているから、獣の仲間です。」と言い、鳥の一族が有利になると「私は羽があるから、鳥の仲間です。」と言った。幾度もの寝返りを繰り返し、結局こうもりは、鳥からも獣からも嫌われ仲間はずれにされてしまう、というものだ。

現実にも、「こうもり」と揶揄される人はいるだろう。良い意味では使われないが、日和見主義で社内政治の波を泳ぎ渡るような人のことだ。はしっこく立ち回り、機を見るに敏な人物はどうにも羨ましく見えるが、そうした人々は、立場を考えて、なんだか"ヘン"な気分になってしまう「こうもりさん」たちなのかもしれない。

家庭や友達と一緒のときの私人の顔と、社会・会社における公人の顔を使い分けるのは、たしかに大人としての振る舞いだろう。だが、古代ローマのヤヌス神のような、前後2つの顔のごとくになってはいけない。誰にでも良い顔をしながら生きていると、自分を見失い、アイデンティティ・クライシスに陥ることもありうる。何を譲り、譲らないかは個人の価値観だが、それをしっかり持った上で、しなやかに生きるのが良いだろう。


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