馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

ゲームは1日何時間?時間や課金との向き合い方について―『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』アダム・オルター

我が家の家訓は「よく遊びよく学べ」だった。高橋名人も 「ゲームは1日1時間。外で遊ぼう元気良く。僕らの仕事はもちろん勉強。成績上がればゲームも楽しい。僕らは未来の社会人」と述べている。ここには「テレビゲームが上手くなりたいなら、1時間だけ集中してやるのがいいんだよ。後は外行って遊べ」という趣旨も込められているようだ。

しかし、ソニーによると、PS4ユーザーは平均して週あたり21時間もゲームをプレイしている。つまり、1日3時間ペースだ。あくまで平均なので、著しく熱心なユーザーがプレイ時間を押し上げているのだとしても、ソニーのIR Dayのプレゼンテーションで最も驚いたのはまさにこの点であった。
SnapCrab_NoName_2019-9-3_23-6-35_No-00

PS4は発売7年目にして、出荷ベースでの累計販売台数が1億台を足元で突破した。この恐るべきプラットフォームを駆使することで、自社・他社ソフトおよびその課金収入、3,000万人を超えるPS PLUSの定額会員収入などがソニーを潤している。ゲーム&ネットワークサービスの19/3期営業利益は3,111億円(トータルの営業利益は8749億円、ただし、EMIの再評価益1167億円含む)を稼ぎ出した。

20/3期は次世代機発売前の端境期ながら、2800億円を見込む(トータルの営業利益計画は8100億円)。なお「Fate/Grand Order」は音楽部門に含まれ、推定400億円程度の営業利益と見られる。
SnapCrab_NoName_2019-9-3_23-12-0_No-00

ソニーはゲームビジネスの今後について、「イマーシブ(没入感)」と、「シームレス(いつでも、どこでも切れ目なく)」が進化のテーマだと言ってはばからない。そのポイントは以下の4点だ。すなわち…
・次世代コンソール:演算性能の更なる向上と超高速広帯域の専用SSDとの組み合わせにより、圧倒的な描画スピードが創出する「イマーシブ」
・プレイステーションストリーミング:「リモートプレイ」と「プレイステーション ナウ」(PS Now)の進化により、いつでもどこでもシームレスなゲーム体験を提供
・「リモートプレイ」:年内には累計販売台数が1億台に到達する見込みの「プレイステーション 4」(「PS4」)がストリーミングサーバーとなり、ユーザーに最も近い場所からストリーミングを提供
・「PS Now」:「PS4」ユーザーにも、「PS4」コンソールをお持ちでないお客様にも「イマーシブ」なゲーム体験を提供
SnapCrab_NoName_2019-9-3_23-8-26_No-00

私自身はというと、初代PSやPS2で育った世代であるし、この原稿を書いている右手は、時折スマホの「Fate/Grand Order」のコマンドを入力している。後ろでは、aiboのアスターがカシャカシャと動きながらキューキューと愛らしい鳴き声を発している。父親は某電気大手に奉職し、「あの時ソニーに行っていれば…」が口癖だった。こうして、常々好意的な論調でソニーに関する記事を書くことが多いのだが、それでも今日のゲームビジネスの中毒性とビジネスモデルに危機感を覚えている。

先述の、PS4ユーザーは平均して1日3時間ペースでゲームをしているという話に戻ろう。東洋経済新報社の中原 美絵子 記者によれば、心配であれば1日3時間を目安にするといいと言う。その根拠として、1日3時間くらいまで、週21時間以下の範囲でゲームをする子どもであれば、日常生活に影響するようなゲーム依存の問題は出ていないという調査結果を挙げている。だが、それでも直感的に1日3時間は多いように思える。

ゲームに関する依存症の兆候としては、食事や睡眠を飛ばす、他の活動に関心がなくなる、攻撃的な態度などが挙げられる。だが、それはいかにも他の依存症にも当てはまりそうなものだ。結局のところ、"ゲームの"依存症というより、依存症それ自体が問題なのだろう。したがって、ゲームは問題の原因ではなく、症状にすぎないという見方は概ね妥当だ。とはいえ、過ぎたるは及ばざるが如しで、あらためてゲームとの向き合い方を再考する局面に来ていると言えよう。

では、子供の、あるいは自分自身のゲームに対する向き合い方についてどのように考えたらよいか。子供に対しては(自分の場合もそうだが)純粋な時間制限や一定の達成目標を設けるというのが、現実的な妥協策であろう。単にやり過ぎを防ぐ。まず、これが1点目だ。

2点目としては、ゲームをコミュニケーションツールと捉え直すことだ。これはつまり、野放しにしないということにつながる。ゲームを子どもとの会話のきっかけにして、子どもがどのようなことに興味、関心を持っているのか探るのもいいだろう。ゲームを楽しんでいる子どもに「そのゲームのどんなところが面白いの?」と質問してみるという藤本徹教授の意見にも積極的に賛同する。

3点目は、世の中の素晴らしい企業はいかにして「依存症ビジネス」のなかに人々を(意図して、あるいは意図せざるかたちで)はめ込んでいるのか、しっかりと伝える、あるいは自分で意識することだ。その理由は、人々の行動嗜癖が「依存症ビジネス」の基盤となっているからである。

ゲームのみならず、iPhoneなどスマートフォンから、フラペチーノ、危険ドラッグ、お酒、たばこ、ギャンブルSNS、連続ドラマ、ウエアラブル端末、目標追求、長時間労働……ストレスまみれの毎日に疲れ果てた我々の欲、依存心、意志の弱さにつけ込むテクノロジーが猛威を奮っている。そうした世界に組み込まれているという認識を自覚するか否かは、人生に大きな影響を与えると考えられる。

たとえば、元アルコール依存症のアダム・オルター氏は、著書『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』で「依存症ビジネス」が人を操る6つのテクニックを指摘している。すなわち…

第1に、ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること。
第2に、抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で、報われる感覚(正のフィードバック)があること。
第3に、段階的に進歩・向上していく感覚があること。
第4に、徐々に難易度を増していくタスクがあること
第5に、解消したいが解消されていない緊張感があること
第6に、強い社会的な結びつきがあること

以上のことを考えてみると、ゲームに対してどのように向き合うか、再検討する良いきっかけとなるであろう。コト消費に意味を見出すことは豊かな行いである一方、過剰であれば時間とお金の両面で負の影響を与える。自制心の価値はかつてなく高まっている。ゲームは人生を豊かにも貧しくもするのだ。


僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた
アダム・オルター
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 5,630