馬車郎の私邸

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、将棋、プロレス観戦記など「趣味に係るエッセイ・感想・レビュー記事」をお届けします!ある市場関係者のWeb上の私邸

【ブログ11周年記念記事】人生を変えた7冊の本について

本日で32歳、このブログも11周年を迎えました。いつもご愛読ありがとうございます。更新頻度の濃淡はあれど、このブログは人生の3分の1において生活の一部をなしています。当初はブックレビュー、「りぼん」の漫画やニコニコ動画の面白そうな動画の紹介、NOAH観戦記が主でしたが、最近では歴史、社会、経済からサブカルチャー全般まで幅広くエッセイで扱うほか、「名曲紹介」と題して様々な楽曲を取り上げる取り組みも始めました。

過去の記念記事:
18年:友人の結婚を祝して夫婦円満の秘訣を考えた
17年:私のラノベ遍歴と珠玉の13選―中学生になったらラノベを読むべし
16年:【観戦記】プロレスリング・ノア 2016年3月19日(土)後楽園ホール大会
12年:「自分の誕生日"3月20日"について」
11年:今の「りぼん」の発行部数と、私の「りぼん」購読史【ブログ3周年】

今後もご愛顧お引き立てのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。そこで今日は、11周年記念記事と題して、私が人生で大きく好影響を受けた本について、7冊ご紹介することで御礼に代えさせていただきます。これらはいずれも高校~大学時代、青春の悩める時期に読んだものですが、単に読んで楽しむことも、功利的に人生に役立てることもできる優れた本たちです。

①サミュエル・スマイルズ「自助論」 知的生きかた文庫

これは高校生の時に読みました。原題を”Self Help”。「天は自ら助くる者を助く」という有名な言葉から始まるこの本は、1859年に出版され、明治時代の日本でも大ベストセラー『西国立志編』として現代まで読みつがれています。決して恵まれない環境から刻苦勉励、たゆまぬ努力によってのし上がった欧米近代の偉人達の成功伝が収められており、これでもか!というぐらい多彩な具体例が勇気づけてくれます。

「人生の最高の目的は、人格を鍛えあげ、可能な限り心身を発展向上させていくことである。これこそ唯一の目標であり、それ以外のものはこのための手段にすぎない。最高の快楽や富、権力、地位、栄誉や名声を得たとしても、それは人生における最大の成功ではない。むしろ、最高の人間性を獲得し、他人に役に立つ仕事に打ちこみ、人間として義務を果たしていくことこそ、いちばん立派な生き方なのだ

やや高邁な部分を引用してしまいましたが、自分自身を励ますにはこれほど力強い言葉もないでしょう。自助=自分を助けるということですが、自分を成功させる、自分を成長させ自分の人生を豊かなものにするには、自分(自身の内面)から変えていく事が大事です。他人と過去は変えられないけれども、自分と未来は変えることができます、今目の前にあることに感謝をし、自分から行動し、何事も他人のせいにせず、熱意を持って一生懸命がんばることで、成功に向かうことができると信じることから、まず始まるのだと思います。

ルキウス・アンナエウス・セネカ怒りについて 他二篇 」岩波文庫

ネロ帝に仕えたローマの哲学者・政治家・実業家(悲劇の著者でもある)という端的な説明だけで、何とも大変な人生を歩んだ人であることが伺い知れます。あらゆる哲学者は人間であり、悪徳とは無縁ではないですが、自分人身の悪徳と向き合い、どう克服するか、手紙の体裁をとりながら切実に書かれています。

人間の悪徳の一つは、怒りの感情ですが、今風に言えば本書は「セネカが教えるアンガーマネジメント術」です。私は10代の頃はあらゆる世の理不尽に起こっていたような気がしますが、この本を読んで怒らないことを決めました。

端的に言って、怒ることはど無駄なことはありません。「何ゆえにわれわれは、まるで永遠の世界にでも生まれたかのように、いつも好んで怒りをぶちまけ、きわめて短い一生を駄目にするのか。何ゆえにわれわれは、高貴な楽しみのために費やすべき日々を、好んで他人の悩み苦しみのために向けるか。そのような財産の浪費は認められないし、また時間の損失も許されない」のだから。

うん、それはわかってる、でも怒らずにはいられない。そういう人たち、すなわち私達読者には、おせっかいなくらいに多様な説明を試みながら言葉を連ねます。「われわれの見解では、怒りは決してそれ自身で発するものではない。心が賛同してからである。なぜなら、不正をこうむった、という表象を受け取ること、それに対する復讐を熱望すること、さらに、二つのこと、自分は害されてはならなかったということ、報復が果たされなければならないということ、と結びつけるのは、われわれの意志なしに惹起される類の衝動に属してはいないからである。そして衝動は単純である。これに対して、われわれの場合は複雑であり、多くの要素を含んでいる。何かを理解した。憤慨した。断罪した。復讐する。これらは、次々に接触してくる事柄に対して心が同意したという事態なくしては生じえない。」「怒りの原因は、不正を受けたという思い込みであるが、容易にそれを信じてはならない。明々白々な場合ですら、ただちに受け入れてはならない。偽りの中には、真実の姿を装うものがあるからだ。」

人の振り見て我が振り直せ、に近い言及も見られます。「たいていの人間は、犯された罪にではなく、罪を犯した者のほうに怒る。われわれはみずからを振り返って自分自身に考察を向ければ、ずっと穏便になれるだろう。」現代のニュースメディアやSNSの情勢を考えると、かなり重要な指摘に思えます。

では、怒りにどう対処するか。まずは深呼吸しよう。現実的な対処はこうです。「怒りに対する最良の対処法は、遅延である。怒りは最初にこのことを、許すためではなく、判断するために求めて来る。怒りには、はじめは、激しい突進がある。待っているうちに熄むだろう。全部取り去ろうとしてはならない。一部ずつ摘み取っていけば、怒り全体を征服できるだろう。」

マルクス・アウレリウス・アントニヌス自省録 」岩波文庫or講談社学術文庫

ローマ皇帝ほどの激務をこなしている人はそうは世の中にいないでしょう。歴史の教科書では単に長い名前で覚えにくいという印象しかないかもしれないけれど、この哲人皇帝の自分自身に向けて書いたメモを読み解くと親近感が湧きます。なにせ、朝起きるのが辛い、ということも2回も書いているから(笑)

現代人にとても役立つことがたくさん書かれていて、この本はいわばマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝の「セルフ・ライフハック集」でもあります。たとえば、「会話に際しては人のいうことに注意していなくてはならない。またあらゆる行動に際しては、その結果生じてくることに注意していなくてはならない。後者においてはそれがどんな目的に関連しているかを最初から見抜くこと、前者においては、その意味がなんであるかを注意すること。」なるほど、自戒したいものです。

他にも自分自身を励ます言葉がたくさん。「想像力を抹殺せよ」「人形のように糸にあやつられるな」「時を現在にかぎれ。「君、または他人に起ってくる事柄を認識せよ。」「君の眼前にあるものを原因と素材とに区別し分析せよ。」「最期の時を考えよ」「人が過ちを犯したら、その過ちは、これを犯した人のもとに留めておくがよい」


よし君が怒って破裂したところで、彼らは少しも遠慮せずに同じことをやりつづけるであろう。なによりもまず、いらいらするな。なぜならすべては宇宙の自然に従っているのだ。そしてまもなく君は何ものでもなくなり、どこにもいなくなる。ちょうどハドリアヌスもアウグストゥスもいなくなってしまったように 。つぎに自分の任務にじっと目を注ぎ、とくとながめるがよい。そして君は善き人間であらねばならぬことを思い起し、人間の(内なる)自然の要求するところをわき目もふらずにやれ。また君にもっとも正しく思われるように語れ。ただし善意をもって、つつましく、うわべを取りつくろうことなしに。」

さらには自分自身に言い聞かせている様子が一見すると滑稽でもある一方、こうした苦悩にもめげずに理性で立ち向かう様子に敬意を払いたいものです。「君がなにか外的な理由で苦しむとすれば、君を悩ますのはそのこと自体ではなくて、それに関する君の判断なのだ。(略)もし君が健全と思われる行動をとらないために苦しんでいるとすれば、そんなに苦しむ代りになぜいっそその行動を取らないのだ。「しかし打ち勝ち難い障害物が横たわっている。」それなら苦しむな、その行動を取らないのは君のせいではないのだから。「けれどもそれをしないでは生きている甲斐がない。」それならば人生から去って行け。自分のしたいことをやりとげて死ぬ者のように善意にみちた心をもって、また同時に障害物にたいしてもおだやかな気持をいだいて去って行け。」

④「一瞬で心をつかむ話し方」学研M文庫知の法則シリーズ 、野口敏

74のテクニックで話しベタ脱出。気持ちが伝わるこの会話術で仕事もプライベートもうまくいく。5万人を話し上手にしたトップコーチが明かす「会話の極意」…などと本書の概要を聞いてしまうといかにもタイトルと相まって軽薄な印象を受けます。しかし、実際にはとても役に立った本でした。なにせ、私はこの本のおかげで初めて彼女ができたからです。その顛末はサマセット・モームに絡めて述べたとおりです。

その効果の程は、妙に手慣れているが本当に初めて付き合うのか?と訝しがられたくらいで、「人一倍少女漫画を読んでいたので女の子の気持ちに共感しやすい」「ときメモをプレイしていたので3択の選択肢が浮かび上がる」(なお、お互い、プレイスタイルはかなり異なっていた)とか適当な冗談で返していました。しかし、実際のところはただただ必死だっただけで、中高時代無口キャラを演じていた後遺症(あるいは父の遺伝の要素も多少あるのかもしれない)でEQが常人に比べ極めて低いことを自覚していたため、どうにかして大きなマイナスをせめてゼロに近づけたかったというのが真相でした。

本書の内容は決して突飛なものではありません。むしろ、会話における良識をわかりやすく提示しています。たとえば、「言葉は媒介にすぎない。そこにどのような気持ちがあるのかが重要だ。人は素直に気持ちを聞かせてくれる人が好きである。そして、自分の気持ちをわかってくれる人がもっと好きだ。」「顧客満足度を高めたければ、まず話を聞くことだ。聞く力を持てば、自分の周りに存在する人々の経験、アイデア、ひらめき、知恵に触れることができる。」「人はみな、他人が自分に興味を持ってくれるとうれしく感じる。会話が苦手な人は自分が聞きたい質問よりも、相手に興味を持ち、相手が話したいことを自由に語ってもらう質問を使えば話が弾む。コツは「……でしょうね」と、漠然とした問いかけを行うことだ」等々…相手に話してもらったときのほうが商談は上手くいくというのは、経験上も実感があります。そもそも、相手にするのは富裕層や経営者なので、単純にそうした人たちの話を聞くのは面白いです。

能動的に会話を進めるには、「木戸に立てかけし衣食住」という便利な話題の作り方があります。季節、道楽、ニュース、旅、天気、家族、健康、仕事、衣料、食、住居の頭文字をとったもので、これは会話の糸口としてとても重宝します。本書は応用編としてアドバイスを付加しています。「ポイントは二点ある。一点は、自己開示によって話題を提供すること。もう一点は心をオープンにして「話しましょう」という意思表示をすることだ。特に自分の気持ちやプライベートな部分を公開すると、互いの心の扉が開かれ気持ちが行き交う。」

元々の性質からして「素で出来ちゃう」人たちには到底敵いませんが、会話において人一倍考える努力はできるようになった事自体は確実です。まさか営業マンや大勢の人の前で話す仕事を将来選ぶことになるとは、この本を手にとったときには想像もしていませんでした。後に野口敏さんのセミナーにも参加しましたが、「人生が変わった本なんです」と報告したとき、とても喜んでもらえたことも思い出深いです。

⑤「マーフィー 値千金の1分間―J.マーフィー名言集489 」知的生きかた文庫、 しまず こういち

世の中の宗教のなかから功利的に役立つ点を、実際の宗教やその経典、コミュニティに関わることなく、できるだけ宗教的な脚色や具体性を削ぎ落として、万人向けの抽象的なエッセンスに変換した本です。J.マーフィーの成功哲学は、渡部昇一氏が大島淳一のペンネームで紹介したことでも有名だ。類書は様々な形で出ているが、これが要約されたもので、まさに決定版だと思う。

心の内面に前向きな思念を埋め込んでおくことは、精神衛生上も良好な状態を保つのに陰ながら役立つ。祈りや願いは宗教的な信念からではなく、素朴かつ単純で健全な形で胸に秘めることで、現実の行動と結果はより良い方向に変わっていく効果が実際にあるように経験上は感じる。

⑥「ゴール―最速で成果が上がる21ステップ」ブライアン・トレーシー 、PHP研究所

最初の職業として証券会社の営業マンを選んだのは、この本を読んで営業マンというものに漠然とした憧れがあったからでした。成功の秘訣を簡潔に言うと「目標を書き出しなさい。それを達成するための計画を立て、毎日それを実行しなさい。」というもので、あまりに単純すぎて呆気にとられるかもしれないです。しかし、案外バカにならないで、意外と実現していることが多いことにあらためて気づくきました。実践する価値があると考えます。

もちろん、仕事と人生において他にも多数の有用なアドバイスが散りばめられているので、ぜひ読んでもらいたい1冊です。「フォーカル・ポイント
」のほうが有名かもしれないが、本書のほうがより濃密であるため強く推奨したいと考えています。より簡潔なバージョンをお求めの方は、「カエルを食べてしまえ! 」をお勧めしたく思います。

⑦バートランド・ラッセル「幸福論 」岩波文庫

以前結婚報告に絡めて紹介したとおり、座右の書です。その要諦は「幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ。」というものです。

また、「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。」ともラッセルは述べています。これを推し進めて、自分は意識的に「相手の好きなものを好きになる」ことで興味関心の幅を広げてきました。

本書は、著者の意思には反しますが、その構成を逆用して後ろの章から逆向きに読んでいくのも一興かだと思います。というのも、不幸についてざっくり→不幸の思考パターンを8つ列挙・考察→幸福の思考パターンを7つ列挙・考察→幸福についての結論・まとめ、という構成なので、前から読むと若干気が滅入ってしまうリスクがあるかもしれません。どう読むか、活かすかは自由ですが、読む価値のある名著であることは確実です。

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