馬車郎の私邸

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【ブックレビュー】著名アニメ監督から学ぶ作品作りのエッセンス―「アニメ監督で…いいのかな? ダグラム、ボトムズから読み解くメカとの付き合い方」 高橋 良輔 サンライズ

故・三沢光晴さんの遺品のゲーム機には、長年愛好していたスーパーロボット対戦のソフトが入っていたという。3/20発売のスーパーロボット大戦Tには「装甲騎兵ボトムズ」「勇者王ガオガイガー」も参戦予定だ。そういうわけで、今日は 高橋 良輔さんの新著「アニメ監督で・・・いいのかな? ダグラム、ボトムズから読み解くメカとの付き合い方」を紹介したい。

本書はアニメ監督・高橋良輔さんが、45年間で携わってきた作品たちについて語り尽くすという、ファン垂涎の一品だ。 メカニックデザイナー・大河原邦男さん、出渕裕さんスペシャルインタビューも必読である。高橋良輔さんというと手塚治虫氏の虫プロダクションに入社後、演出を経て、アニメ監督、脚本家、演出家、プロデューサーなど多方面で活躍した人物だ。自分は、本書の作品のうち「装甲騎兵ボトムズ」「勇者王ガオガイガー」を見て気に入ってるので、この2作品に簡単に触れる形で本書を紹介してみたい。詳しくはご購入の上、お読みくださいませ。

「装甲騎兵ボトムズ」は硝煙の香りが漂う(むせる)ハードボイルドな世界観で知られる、いわゆるロボットアニメとしては異色作だ。私は近年、TVKテレビの再放送で鑑賞した。ロボットアニメが苦手で「健全ロボ・ダイミダラー」くらいにしか関心を向けなかった妻も楽しんでいた。

「ボトムズ」は、「ダグラム」を経て「美術世界が地味だった、次はなんとかしてくれ」「あとはアクションにスピード感がほしい」という2つの課題と向き合った作品だった。

高橋監督が作品の構想を練るにあたって記したノートには、「孤独、霧、雨、鉄、錆、炎、傭兵、銀河、終戦、硝煙、騎兵、オデッセイ、赤、支配、バトリング、寡黙、神、犯行、戦後、どさくさ、闇市、狂気…」。こうした抽象的なイメージは作中で様々なモチーフとなっており、「ボトムズ」の独特な世界観を構築している。スピーディなアクションということでは、ジープにヒントを得てロボットのサイズを4mにした。ロボットの顔には、目だけを残した。

「勇者王ガオガイガー」では、勇者シリーズの幕引きとしてプロデューサーを務めた。人たらしの氏は、「ずっとスタジオにいて徘徊し冗談を言って励ましてればいい」と言うが、さらに徹頭徹尾付き合ったのはシナリオ会議だ。ライターのみならず、興味や意欲のあるスタッフはフリーパス。ときには夜明けまでと非効率極まりないながら、マニアックなスタッフたちととことん議論を煮詰めた。

マニアックなスタッフを統御するため五武冬史氏を要石として配置。ただ、その重鎮から出てきた当初案は「主人公・獅子王凱が毎夜ラーメンの屋台を引き、大東京をパトロールしていて敵を発見するや、ラーメン屋台と合体してヒーローロボットに変身戦う」という仰天ものだった。

これはさすがに却下したそうだが、様々な紆余曲折を経て、過不足ないロボとキャラクターの配置に加えて、伏線が幾重にも散りばめられ洗練されたシナリオが示現したのは、周知のとおりだ。ヒーローロボットものとしての、スタンダードな演出と手抜きのない仕上がりは幅広いファン層に受け入れられた。

また、ガオガイガーといえば熱さが特徴だが、その熱さの工夫の一つは、台本にあった。台本には、漫画の書き文字のような、効果音を表す文字がいちいち印刷されていたという。index

ここに上げたエピソードはほんの一握りだ。当時の作品を楽しんだ人たちには秘話満載といった塩梅で、読む価値のある一冊だ。また、アニメ業界に関わる、あるいは関わりたい人たちにも、長年業界で辣腕を振るった高橋良輔監督の作品作りの考え方は、実に身になるであろう。

アニメ監督で・・・いいのかな? ダグラム、ボトムズから読み解くメカとの付き合い方
高橋 良輔 サンライズ
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